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開発者インタビュー

“日本のソフトパワーがつまった世界標準”を手軽に導入できる
東芝の輸送計画システムソリューション「TrueLine®」とは?

第5回:クラウドサービスが生み出す「TrueLine®」の更なる魅力

[写真] 久保 英樹
東芝デジタルソリューションズ株式会社
ソリューションセンター 交通ソリューション部
久保 英樹

クラウドサービスとして提供することにより、導入の初期費用を大幅に削減

前回までにも紹介しているように、東芝の輸送計画ICTソリューション「TrueLine®」の大きな特徴のひとつとして、従来のようなオンプレミスのシステムではなく、クラウドサービスとして提供していることが挙げられる。久保氏によると、社会インフラのシステムがクラウドで運用されている例は、現時点ではまだまだ少ないという。

「開発に着手した時点では、社会インフラでクラウドを採用するという発想がまずなかったですね。しかし時代はやはりクラウドですから、これからはクラウドサービスによるサブスクリプションモデルになるはずという確信が我々にはありました」。

クラウドサービスのメリットは多岐にわたるが、なかでも導入時に大きな利点となるのが、初期投資を大きく減らせることだ。「統一の仕様で提供するクラウドでは、個別の要求を受けて仕様を改善することがないぶん、コストを抑えることができます。また専用のハードウェアも不要ですので、購入する必要がありません。従来の価格体系とはまったく変わってしまうわけです」。

この価格体系は、クラウド化したことによって半ば必然的に生み出されたものだが、思わぬ副産物も生み出している。それは海外での価格競争力だ。

「海外では物価が日本の十分の一であることも当たり前で、運賃の水準も非常に低く、それゆえシステムも日本の価格のままでは土俵に上がることすらできません。海外への展開を見据えた際、日本でとことん安い水準に設定することで、ようやく世界への挑戦権を得られるわけです」。クラウド化によるコスト低減が、海外での価格競争力を得ることにつながり、同時に国内でもコスト面での圧倒的なアドバンテージを得ることに成功したというわけだ。何百万円、何千万円といった初期費用が不要で、いきなり月額費用だけで使えてしまうのは、これまで専用のシステムをなかなか導入できなかった中小の事業者にとってはうれしい仕組みだろう。効果が未知数のシステムに多額の予算を投資しにくいのは、どの企業でも同様だ。しかしクラウドサービス化したTrueLine®では高額な初期費用なしで導入ができ、またサービス内容についても必要なものだけを選択できるので、まずは運転曲線作成サービスと基本ダイヤ作成サービスだけを導入し、効果が見込めると判断してから車両割当管理サービスなどを導入する、といった具合にステップを踏むことも可能だ。万一自社のニーズに合わなかった場合も、無駄を抑えられるというわけだ。

場所を問わずに利用できデータの消失もなし。BCP対策として最適

[写真] インタビュー時の様子

またクラウド上のサービスを利用することは、災害などに対するBCP(事業継続計画)対策としても有効だ。これには、TrueLine®の開発がスタートする直前に発生した東日本大震災での教訓も、大いに生かされているという。

「東日本大震災では、現地の鉄道はそのほとんどが寸断され、復旧までに多大な時間を要しましたが、事業者様の中には、システムがサーバ、端末ごと津波で流されたことで、復旧が遅れた例があります」。津波を免れた車両をつなぎ、線路を復旧して走行が可能になっても、新しいダイヤを作成するシステムが過去のデータともどもなくなってしまっており、それが復旧にあたっての大きな障害になったというのだ。

しかし、クラウドサービスであれば、クラウド上で動作することから、専用の端末は必要なく、インターネット環境と手頃なパソコンがあれば、すぐに運用を再開できる。「システムを操作するために現地に足を運ばなくてもいいというのが、地震や津波などの災害において、どれだけ役に立つかですよね」と語る久保氏は、TrueLine®の要件を決めるにあたって、全国の鉄道会社からのヒアリングを重ねるうち、東日本大震災の当時にこのようなシステムがあればよかったのに、という声も耳にしたという。

「パソコンが津波で流されたことで、社会インフラが使えなくなるなどということは、決してあってはいけないことです。こうした災害をひとたび経験してしまうと、従来型のシステムというのはもうあり得ません。大切な資産を災害から守らなくてはいけないことに、さまざまな会社様が気づくきっかけになったのが、東日本大震災だったと思います」。

特定のハードウェアに依存している従来のオンプレミスのシステムでは、決してこうはいかない。クラウド化により、仮に災害が発生しても過去データをどこからでも呼び出せ、新規計画の立案が場所を問わずに使えるTrueLine®は、鉄道会社のBCP対策としては、最適と言っても過言ではないだろう。

サーバ側で処理するためクライアントに負荷がかかりにくい

最後にもうひとつ、クラウドサービスの隠れたメリットを紹介しておこう。クラウドはサーバ側でプログラムを実行し、その結果をクライアントに返す仕組みだが、それゆえ従来のシステムにはなかった利点がある。それは端末に負荷がかかりにくいことだ。

「クラウドサービスでは、サーバに計算を丸投げして結果だけを受け取ります。それゆえ、クライアント端末の性能があまり高くなくても、問題なく動作するのが特徴です。描画性能だけはグラフィックボードのパワーに依存しますが、どれだけ複雑な計算を行わせても計算自体はサーバ側で実行されますので、端末への負荷がかかりません。これもクラウドのひとつのメリットですね」。

さまざまな数理により自動化が徹底されているTrueLine®では、運転見合わせなどによってひとつ条件が変わるたびに、以降のダイヤが自動的に再計算される。まさに東芝の技術の賜物といったところだが、それらをクライアント端末側で実行していては、どれだけ潤沢なスペックがあっても高速な演算は望めない。
しかしTrueLine®では、サーバ側で処理が行われるため、クライアント端末側に負荷がかかることなく、それゆえ端末のスペックをあまり気にせず利用できる。クラウドの利点が端々にまで及んでいる、ひとつの例と言えそうだ。

次回は最終回、TrueLine®の今後を紹介していきたい。

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