本文へジャンプ

開発者インタビュー

“日本のソフトパワーがつまった世界標準”を手軽に導入できる
東芝の輸送計画システムソリューション「TrueLine®」とは?

第3回:「TrueLine®」の両輪、自動化とデザイン

[写真] 久保 英樹
東芝デジタルソリューションズ株式会社
ソリューションセンター 交通ソリューション部
久保 英樹

いかに少ない労力で最適化されたダイヤを生成するか

運転曲線作成サービスをはじめとする6つのサービスにより、計画性を持った鉄道の運行を強力に支援する「TrueLine®」。ブラウザ上でマウスを使って操作できるなど、その優れたユーザインターフェースは他業界から多くの引き合いにもつながっている。(開発者インタビュー 第1回へ

しかしTrueLine®の注目すべき点は、東芝の技術の粋を結集した「自動化」にある。日本ではシステムが自動的に組んだダイヤよりも、職人技で組んだダイヤこそがクオリティが高いものと見なす風潮があるが、そのクオリティをいかに少ない労力で、最適化されたダイヤを生成することに挑戦したのがTrueLine®であり、そしてそれが結果的に、海外でも戦える製品となっているのだ。

今回はユーザインターフェースと並んでTrueLine®の両輪とされるこの「自動化」について、久保氏に詳しく語ってもらおう。

東芝の誇る数理によって卓越した自動化を実現

[画像] 乗務員仕業横棒編集機能
ダイヤと車両の最適な組み合わせも
数秒で算出できる

表面的には同じに見える2つのシステムも、いざ使い比べてみると、その質については大きな差があることがしばしばだ。「例えば、車両運用作成サービスでダイヤ(スジ)と車両の組み合わせは無限にありますが、必要な車両の台数を最少化する、トラブル後の通常運行に復帰する日数を最短にするといった条件を与えた場合、従来のシステムでは総当たりで計算を行うことが多いため、解を出すまでに数時間はかかることもざらです。しかしTrueLine®では、同様の計算をたった数秒で終えることができます」(久保氏)。

[画像] 乗務員仕業横棒編集機能
ダイヤと車両の最適な組み合わせも
数秒で算出できる

数時間がわずか数秒にまで短縮されるのは、もちろんサーバの処理速度などの問題ではなく、それだけの優れた数理がTrueLine®に組み込まれているからにほかならない。これらを支えるのが、東芝にとっての知恵袋である研究開発センターだ。そこにはさまざまな数理などの知識を持った、日本でも最高レベルと言われる頭脳が結集しており、問題を解決するための方法の“最適化”にあたっている。そこで生み出された、久保氏もしばしば驚かされるという自動化のための数理が、TrueLine®に次々と投入されているのだという。

久保氏はその一例として、線路の形状の数理化を挙げる。「電車の線路の形は路線によってすべて異なるわけですが、これまでは個別に条件を入力してシステムを設計していたことから、特定の鉄道事業者の特定の路線にしか対応できませんでした。しかしTrueLine®はどんな線路の形でどのように交わっているか、すべて数理で解いているのです」。これにより、国内はもとより海外のあらゆる路線でも、日本基準による正確な基本ダイヤを、短時間で簡単に作成できるわけである。

TrueLine®は優れたユーザインターフェースと自動化、この2つこそが両輪であると久保氏は力説する。「人間が解を探し出すことも可能ですが、それでは日が暮れてしまいます。しかしコンピュータを使えば、かなりの部分の自動化が可能になるわけです。そしてそれをさらに高速に、かつ正確に行うために、東芝の誇る技術を投入しています」。単に機械的にダイヤが組めるだけでなく、スピード、そして正確性にも徹底してこだわる。これにより、表面的には同じに見えるシステムが登場しても、TrueLine®の優位性は揺るがないというわけだ。

ちなみにTrueLine®では、OSのロケール情報を参照することで対応言語を31言語から切り替える仕組みも実装されている。「隣にフランス語のWindows、隣にドイツ語のLinuxがある場合も、同じデータが表示される」ため、ひとつの鉄道路線が国をまたがっているような場合にでも対応できる。海外での利用に限定した機能ではあるが、これも自動化の成果のひとつにほかならない。

機能とデザインの協調により一歩先のシステムを実現

[画像] 車両割当管理サービス
形状と色の工夫で、分かりやすい
インターフェースの『車両割当管理』

優れたユーザインターフェースが取り上げられることの多いTrueLine®だが、アクセシビリティへの配慮も徹底している。「例えば画面上で線を選択した際の挙動は、色覚特性が異なる方や加齢による視覚特性の変化を考慮し、ただ色を変えるだけではなく、縁取りの色や線の太さなどにも変化をつけ、容易に判別できるよう設計しています」。これらのユニークなアイデアを創出しているのが、東芝デザインセンターだ。

これに加えて、随所に見られるデザイン面でのこだわりもポイントのひとつだ。久保氏は具体例として「車両割当管理サービス」におけるデザインを挙げる。この車両割当管理サービスでは、駅と車両の組み合わせに切符の切り欠きに似た凹凸のデザインを採用しており、物理的に不可能な組み合わせを無理に確定させようとすると、凹凸が組み合わず切り欠きが赤く変化する仕様になっている。

「車庫から出た電車は、必ずその日のうちに元の車庫に戻るわけではなく、他社の駅の車庫で翌朝を迎えることもあります。にもかかわらず、翌朝に元の車庫から発車する前提で運行計画を立ててしまうと、夜中に回送しなければならなくなります。そこでこうした組み合わせが発生すると、切符の切り欠きを模したパーツの凹凸が組み合わずに赤くなるようにしました。無理にはめ込もうとしても入らない、負荷がかかるというイメージを形状と色で表現しているわけです」。

[画像] 車両割当管理サービス
形状と色の工夫で、分かりやすい
インターフェースの『車両割当管理』

鉄道に携わる人に分かりやすいビジュアルを突き詰めた結果、鉄道が好きな人であれば誰もが知っている、切符の切り欠きをモチーフとして採用することを思いついたというわけだ。「これはデザインセンターのデザイナーが出したアイデアですが、こうした工夫があることでお客様に親近感を持っていただくことができ、なおかつ問題解決にもつながります。しかもこの駅と車両の組み合わせは、ドラッグアンドドロップで簡単に動かすことができます。今まで大変だったことがマウス操作だけでできてしまうわけです」。

これらは一見さりげなく解決されているが、こうした「ノウハウ」は、その業務に携わる人にとってはたとえ常識でも、一機能としてシステムに組み込まれることは少なく、特定のスタッフにしか対応できないというケースも珍しくない。しかしTrueLine®では、こうした属人的なノウハウひとつひとつに重み付けを与えた上で機能としてシステムに組み込み、自動化の一翼を担わせている。

従来までは属人的な運用にとどまっていたノウハウの標準化に成功し、かつデザインを工夫して無理なく組み込んだTrueLine®。こうした積み重ねが、国内はもちろん海外での高い評価にも結果としてつながったというわけである。こうした機能とデザインの高いレベルでの協調に、TrueLine®の先見性を垣間見ることができるはずだ。
次回はこれらの先見性を実現できた理由について紹介していきたい。

輸送計画 ICTソリューション
TrueLine® に関するご質問、ご相談、資料請求は
こちらから

導入前のトライアル利用も可能です。お気軽にお問い合わせください。導入前のトライアル利用も可能です。お気軽にお問い合わせください。