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開発者インタビュー

“日本のソフトパワーがつまった世界標準”を手軽に導入できる
東芝の輸送計画システムソリューション「TrueLine®」とは?

第4回:ユーザとの“共創”で成長を続ける「TrueLine®

[写真] 久保 英樹
東芝デジタルソリューションズ株式会社
ソリューションセンター 交通ソリューション部
久保 英樹

クラウドサービスとして提供されるTrueLine®に新しい機能が追加されるとユーザはその恩恵を受けることができる。それら機能は、現場で輸送計画に携わる人達にとって“かゆいところに手が届く”機能が多く、驚かされることもしばしばだという。それら機能がどのようなプロセスを経て実装に至ったのか。今回はそれらを紹介しよう。

現場のユーザとの“共創”でシステムを開発

TrueLine®は各事業者専用に設計されたシステムではなく、標準化された共通機能をクラウドサービスで提供している──こう聞くと、機能追加や改善など個別の要望は受け入れてもらえないのではと誤解するかもしれない。しかしもちろんそのような事実はなく、むしろ現場のユーザの声は積極的に取り入れられている。

久保氏によると、実は東芝が設計した部分でユーザにそのまま受け入れられたのは「3割ぐらいのヒット率」しかなく、残りはユーザのリクエストを反映したものだという。「やはり僕らが考えた機能は、お客様から見るとマッチしていないんですよ。スジが動くなどといった技術面は僕らでもうまく設計できます。しかし実際の機能に関してはまったく駄目だったんです」。

では、どのようにして機能を追加してきたのか。久保氏は“共創”がキーワードであると語る。
「何年も一緒にやっているなかで、いろいろなヒントを教えてもらえるんです。例えば『運転士は法規制の関係で、決まった時間ごとに休憩を入れなくてはいけないが、それを確認できる機能が(それまでのシステムに)なかなかないんだよね』と。詳しく調べてみると、アメリカでも欧州でも、世界中で同じような法規制があることがわかりました。であればそういう機能を実装しましょうと。そういったお客様からのいろいろな示唆が、TrueLine®には反映されています」。

列車の走行距離を測る機能も、同様のやりとりを経て追加されたものだ。「第3セクターでは、走行距離を自治体に報告しています。そのため、どの区間を何キロ、何本の列車が走っているかの情報が必要になるのです。また車両の相互乗り入れをしている路線では、自社の車両が他社線を走ったり、その逆だと、事業者間で金銭のやり取りが発生します。その精算に走行キロが必要でした。そうしたことを調べていくと、すべての会社で様々な目的で走行キロ程を測っているわけです。だったら機能として必要だろうということで、こちらも実装することにしました。様々な角度から見た距離を測ることができれば、色々な用途に使えますので、応用範囲は無限大です」。

ヒアリングと実装を繰り返して成長する開発サイクル

ここまで現場の声をヒントにTrueLine®に実装された2つの機能を紹介したが、真に注目すべきなのは機能そのものではなく、その機能がどのような経緯で実装に至ったのか、そのプロセスだろう。それこそが、TrueLine®の“らしさ”を象徴したものと言えるからだ。

「機能追加のために費用が発生するとなると、お客様は遠慮して言わなくなってしまうのが常です。つまりシステムを納品した時点で進化が止まってしまう。しかしTrueLine®では「我々がシステムの改修費を負担できるわけではないが、こんな機能を実装してくれるととても嬉しい」といった意見を私達が吸い上げて、他のお客様に確認します。そこで「我々もその機能は欲しい」といったフィードバックが多ければ、そこで実装に至ります。一社だけをターゲットにした今までのシステム開発ではできなかったことが、このソーシャルな作り方であれば、やすやすと突破できるというわけです」。

久保氏が“共創”と呼ぶこの開発サイクルは、海外向けの機能実装でも威力を発揮している。「国内で得られた知見を実装して海外でデモを行うと、アメリカだとここはこうしたほうがいい、台湾だとこうあるべき、という話が同じように出てきます。例えば車両の編成は、日本では8両もしくは6両固定での運用が多いですが、アメリカのLRTでは2両で来たり、あるいは増結して16両で来たりとダイナミックに変動します。だから、アメリカだと編成の切り貼りができる機能があると便利なんだ、と教えてくれる。であれば我々のほうで作って実装しましょう、となるわけです」。そうしてできあがった機能をさらに国内にフィードバックし、ブラッシュアップを重ねるというわけだ。

このようにTrueLine®では、さまざまな国や民族、人の考え方を取り込みつつ、ヒアリングと実装を繰り返して成長する開発サイクルが確立されており、そのことが、費用面などの問題からアイデアが機能として実装されずに終わることの多い従来型のシステムに対するアドバンテージになっている。今後さらにTrueLine®の導入先が増えるにつれ、世界中の輸送計画システムが求めるあらゆるニーズを取り込んでしまうのも、決してあり得ない話ではない。

[写真] インタビュー時の様子

もっとオープンに、もっと自由に使うための機能も搭載

もう一つ、TrueLine®“らしさ”が感じられるのが、帳票の出力機能だ。輸送計画の作成から修正までトータルで行えるよう設計されているTrueLine®だが、なかにはあえてTrueLine®で最後のプロセスまで作業を完結させるのではなく、システムの外で加工できる機能も用意されている。時刻表や勤務時間表、行路表などをExcelで読み取り可能な形式で出力できる機能が、その最たる例だ。これはなぜなのだろうか。

久保氏は従来のシステムの問題点として、システム改修時の費用負担をあげる。「帳票類のフォーマットが変更になったからといって毎回メーカーにシステムの改修を依頼していると、何千万円もの費用がかかってしまいます。帳票一枚のフォーマットを変えるためだけにそれだけの費用をかけるというのは、予算がある会社ならいざ知らず、普通の会社にとっては非常に厳しいことです。では現場ではどうしているかというと、以前のフォーマットの帳票を見て新たに書き起こして対応しているわけです。それではシステムのありがたみがまったくありません」。

そこでTrueLine®では、さまざまな帳票類をExcelで読み取り可能な形式で出力する機能を搭載することで、事業者側が手元で再加工を行うことを可能にしている。「実際のところ、通常、事業者はシステムを維持するために、お客様に改修費を負担していただいていたわけですが、TrueLine®はそうした考え方は一切なく、もっとオープンに、自分で作ってくれればいいという発想で設計しています」。

もちろん、あまりにも自由度を高めてしまうと、今度はシステムの存在そのものを否定することにもつながりかねない。しかしTrueLine®の場合、優れた数理を用いて極限まで自動化しつつ、一方でこうした柔軟な使い方をもサポートすることで、システムの価値を落とすことなく、運用の柔軟さを生み出しているというわけだ。これにより、最後のプロセスだけはどうしても手書きにこだわりたいといったニーズへの対応も可能にしている。

機能紹介では「Excelで読み取り可能な形式で出力が可能」とほんの一言だけの記述にとどまってしまい、注目されることはあまりないが、こうした部分にも、TrueLine®が現場で評価される理由を見て取ることができるのだ。
次回はクラウドを採用した利点に関して紹介しよう。

輸送計画 ICTソリューション
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