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導入効果
最大の効果は「透明かつ公正な会計処理」と
「アカウンタビリティ」の確立
新しいシステムが動き出して、最も大きく変わったのは、職員全員がシステムを活用することになった点である。出納事務局出納管理課総合財務担当課長補佐の棚瀬正樹氏は稼働開始時を振り返って語る。
出納事務局出納管理課
総合財務担当課長補佐
棚瀬正樹 様
「今までは限られた職員だけが使っていたシステムを、これからは全職員が使っていくということで、一般の職員の間に不安があったのは確かです。出張一つをとっても、これからは職員一人一人が入力する必要がありましたので。しかし、これが時代の流れであるという認識は、全員が持っていたと思います」(棚瀬氏)
総合企画部情報企画課システム担当課長補佐(当時は出納管理課)の大野鉱三氏は「どんなシステムでも、導入直後は賛否さまざまな意見が出てくるものです。岐阜県の場合も、事前に自由操作研修期間を設けたり、マニュアルも配布したりしていましたが、徐々に業務を効率化するさまざまな利点に職員も気づいてくれたと感じています」と語る。
「県の決裁では、経費の性質や額によってどこまで承認をとらなければならないかが決まっています。経費の性質上の仕分けの一つを『節』と呼ぶのですが、従来は、その承認フローを記した表を見て確認する必要がありました。『この節でこの金額だと、部長までの承認が必要』といった判断をするのです。しかし、新システムではこの処理が完全に自動化されています。ユーザが意識しなくても、最終的に承認すべき人が自動的に判定されるのです。これは非常に便利だと思います」(大野氏)
また、データの分析・加工という点でも新システムのメリットは大きいと言う。
「厳しい財政状況の中で事業を絞る必要に迫られ、『建設関連で金額の大きい事業を調べなければならない』となった場合、従来は、紙の資料を調べたり、データベースからデータを抽出するプログラムを業者に発注したりする必要がありました。
しかし、新しいシステムでは、データをExcelに読み込んで簡単に分析できるので、従来『1日待ってください』あるいは『できません』となっていたものが、わずかな時間でできるようになりました」(棚橋氏)
さらに、業務が自動化・標準化されたことにより、決算統計業務の引き継ぎもスムーズになった。
「決算統計は、年度が終わって5〜6月に処理するのですが、従来はすべて手作業で行っていました。このため、4月に異動してきたばかりの職員が、5〜6月に処理することもあるため、判断に迷い、作業が遅れるケースも少なくありませんでした。しかし、新システム導入後は業務が自動化・標準化されましたので、それほど悩むことなく処理できるようになりました」(棚橋氏)
総合企画部 情報企画課
システム担当 課長補佐
大野鉱三 様
このように、新システムの導入によって、各課の業務はさまざまな点で効率化された。ただし、予算執行にあたっては、予算で決めた最も細かいレベルまで厳密に入力する必要があるため、職員の手間が増えているのも事実である。しかし、それによって得られるものこそが、新システムの最大の成果であると強調する。
「予算は『款』『項』『目』『節』……といった単位でどんどん細かくなっていきます。議会の議決は『項』となっていますが、県民へのアカウンタビリティという点では、最も細かいレベルまで厳密に管理され、説明できる状態になっていることが重要です。今回のシステムでは、それが実現できました。それによってアカウンタビリティを確立できたことが、最大の成果です」と大野氏は語る。
将来展望
完成した最高のシステム
ほかの都道府県への導入も積極的に支援
冒頭に国の動きである「新地方公会計制度」について紹介した。全国の自治体への大号令となる「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針」が、総務省より発表されたのが平成18年8月である。そのわずか2カ月後の同年10月には、岐阜県の新しい財務会計システムが稼働を開始しているのである。岐阜県の取り組みが、いかに先進的であったか、このことからだけでも十分に実感できる。
「岐阜県が財務会計の全面的な見直しを開始した当初、地方自治体の会計制度をめぐる国の動きは特に活発ではありませんでした。プロジェクトがある程度進んでから、そういう話が出てきましたので、われわれとしても、どう対応すべきかを考える必要がありました。
ただ、最小単位で情報を管理しておけば、どのような区分ででも仕分けることは可能なので、国のどのような動きにも対応できるという自信はありました。現在、総務省の指針では、各自治体は『基準モデル』と『総務省方式改訂モデル』という2つのモデルが選択できることになっていますが、われわれのシステムを利用すれば、より厳密な『基準モデル』にも十分対応することが可能です」(日比氏)
現在、「新地方公会計制度」に対応するため、多くの自治体が調査・検討を行っているという。ちょうど、平成13〜14年あたりの岐阜県の状況にあると考えればよいだろう。岐阜県の場合、そこから約5年をかけて、現在のシステムを作り上げた。同じことをほかの都道府県がやろうとしても、現実問題として時間的、費用的に難しい。最も合理的なのは、岐阜県が作り上げたシステム、および蓄積されたノウハウを利用することだろう。
こうした需要を見越して、平成20年12月、開発を担当した東芝ソリューションと岐阜県は、総合財務会計システムに関する著作権利用に関する覚書を取り交わした(この記事に関連するニュースリリースはこちら(別ウインドウで開きます)をご覧ください)。これにより、東芝ソリューションは、今回のシステム開発で得られたノウハウを利用して、他団体の総合財務会計システムを開発することができ、岐阜県はロイヤルティを得られることになる。その意義について、日比氏は次のように強調する。
「都道府県は、いずれも地方自治法に従って会計処理を行っています。都道府県によって、それぞれの財務規則・会計規則などが若干異なるため、ある程度の調整は必要になると思いますが、基本的な会計処理は共通ですから、われわれのシステムを活用することで、総務省の指針にある『基準モデル』をクリアできるのはもちろん、透明で公正な財務会計の仕組みを短期間で構築できるはずです」(日比氏)
システムの今後と、開発を担当した東芝ソリューションへの評価を聞くと、次のような答えが返ってきた。
「システムとしては十分満足のゆくものができましたので、制度改正などに対応するため毎年の微調整は必要になりますが、それ以外はまったく問題のない完璧なシステムになっていると思います。ですから今後の大きな変更予定などはありません。これもシステムのあるべき姿を一貫して追求した『あるべき論』で開発したからだと思います。開発にあたっては、われわれの要求によく応えてもらったと感謝しています」(日比氏)
今後、岐阜県のシステムとノウハウが、東芝ソリューションの手によって全国の都道府県へと移植されることは間違いないだろう。その成果が続々と報告されるようになったとき、今回のプロジェクトの真の価値が明らかになるのではないだろうか。
総合財務会計システム®
全庁的な視野で予算編成、執行、決算の一連の流れを総合的に管理し、透明かつ公正で、アカウンタビリティの確立された会計の仕組みを実現できる。各職員が従来どおりの会計事務を行っていれば、複式簿記を意識しなくても、総務省が推進する「新公会計制度」の基準モデルに準じた財務書類が作成可能。岐阜県は約5年間をかけてシステムを検討・構築。岐阜県のシステムに基づき構築を行うと、最短1.5年で導入することができる。
COMPANY PROFILE
自治体名 | 岐阜県庁 | |
---|---|---|
所在地 | 岐阜県岐阜市薮田南2-1-1 | |
県人口 | 200万8,709人(平成21年7月) | |
予算規模 | 7,597億円(平成21年度当初) | |
事業数 | 約3,700事業(一般会計歳出予算) | |
端末数 | 約8,000台 | |
システム利用職員数 | 約29,000名 | |
システム利用所属数 | 約350部署 | |
URL | http://www.pref.gifu.lg.jp (別ウィンドウで開きます) |
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この記事内容は2009年10月に取材した内容を元に構成しています。記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。