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開発ポイント
会計業務の“あるべき姿”を
ゼロベースから積み上げる
開発に先だって、まずは会計事務のあるべき姿をゼロから考えて「こうあるべき」という姿と現状の問題点の両面から議論を重ねていった。そこで上がってきたのが、次の10個の検討課題である。
- 1.現行事務フローの作成
- 2.決算統計処理の見直し
- 3.公金セキュリティの検討
- 4.会計ナレッジマネジメントの検討
- 5.事務処理簡素化の検討
- 6.発生主義・複式簿記の導入検討
- 7.事業執行管理
- 8.EUC※機能の充実
- 9.データ連携の充実
- 10.電子決裁/ワークフローの検討
- ※End User Computing
出納事務局出納管理課
総合財務企画監
日比哲也 様
さらに、これらの検討課題を7つのワーキンググループで整理・分析し、その結果を踏まえて制度の見直し、業務プロセスの改善などのいわゆるB P R(Business Process Re-engineering)を実施した。具体的には、「組織・制度の見直しBPR」「プロセス改善のBPR」「簡素化・効率化BPR」の3つを実施し、「岐阜モデル」という新しい事務の流れを作り出した。その上で、このモデルをシステムの基本設計へと落とし込んでいき、機能設計、構成設計……という開発工程へと進んでいったのである。
少し聞いただけでも気が遠くなりそうな膨大な作業量だが、その過程では、さまざまな議論・苦労があったことは容易に想像できる。ワーキンググループで専門知識を持つ職員に多数参加してもらい、意見を集約したという。
例えば公金セキュリティのワーキンググループでは、「透明性のある会計事務をシステムによってどこまで担保できるかを、会計士の意見を取り入れながら議論を進めました。そこで、第三者によるチェックの必要性が確認できれば、それを機能要件として盛り込んでいくといった作業を繰り返しました」と日比氏は明かす。
岐阜県の花「れんげ草」
また、事務のやり方そのものが変わるため、5,000ほどあった事業の単位を3割程度減らす作業も必要だった。総合企画部情報企画課システム担当(当時は財政課)主査の棚橋博司氏は言う。
「従来、最も小さい単位の事業に対して予算が付いても、執行段階ではより大きい単位で処理されていました。しかし新しいシステムでは、予算の最も小さい単位に対して執行していくことになりますので、処理の手間が大幅に増えてしまいます。それをできるだけ減らすため、5,000ほどはあった小さな事業を、ある一定のルールに基づいて統合する作業を行いました」(棚橋氏)
総合企画部 情報企画課
システム担当 主査
棚橋博司 様
また「財政課においては、開発の最終段階の約1年、統合後の新しい事業について二重入力を行った」という。予算の場合、必ず「対前年比何パーセント」といった対比を行う必要があるため、細々事業を組み替えた状態での前年度データを作っておく必要があったからである。もちろん、新システムの最終チェックと操作に慣れるという意味もあったが、予算を担当する職員全員が、約1年にわたってその作業を継続したという事実は、驚くべきことだろう。
開発にあたっても、岐阜県の各担当者の熱意が開発側を圧倒する場面が多かったようだ。例えば、ベンダーが開発したプログラムを確認するため、夜中の3時、4時まで残って作業することも少なくなかったという。
なぜ、そこまで“熱い”のか。日比氏は次のように語る。
「われわれには、完成したシステムのイメージが明確にありました。完成したシステムが、前のシステムより『間違いなく絶対に良い』という思いを全員が共有していたのです。特に今回のシステムで意識したのは、より透明かつ公正な会計事務です。それを県民の方に、ご理解いただけるシステムでなければならないという信念がありました」(日比氏)
岐阜県の魚「あゆ」
プロジェクトのスタートが平成14年の7月。そこから約5年を経て、19年度予算から新しいシステムが本格稼働を開始。予算編成が平成18年の10月から、執行関係が平成19年の3月から、物品などの財産管理が平成19年の6月から稼働を開始している。
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