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イベントレポート

イベント

「地方自治情報化推進フェア2018」レポート

2018年10月23日(火)~ 24日(水)

2018年10月23日、24日の2日間にわたり、“デジタル社会を見据えた自治体改革”をテーマに東京ビッグサイトで開催された「地方自治情報化推進フェア2018」。東芝デジタルソリューションズでは、「デジタル・ガバメント実行計画」の実現に向け、「デジタルワークスタイル」「ペーパーレス×定型業務自動化(OCR・RPA)」「地域包括ケア事業支援」など5つのテーマでブースを設置。課題を持った多くの自治体関係者が熱心に説明を受けていました。そんな地方自治情報化推進フェアの模様を紹介します。

  • 展示会場写真

政府が推し進めるデジタル・ガバメントとは?

2018年1月に政府が発表し、2018年7月20日に改定が行われた「デジタル・ガバメント実行計画」。電子行政分野における取組みとして2017年5月に策定された「デジタル・ガバメント推進方針」を具体化するこの計画は、行政サービスの100%デジタル化を目指す「利用者中心の行政サービス改革」、行政保有データ100%オープン化を図る「プラットフォーム改革」、そしてデジタル・ガバメントの推進を行う「価値を生み出すITガバナンス」という3つの柱で構成されています。同時に、「地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進」として、官民データ活用推進計画の策定やAI・RPAなどによる業務効率化といった8つの施策も定義されています。これらデジタル・ガバメント実行計画における基本方針となるのが、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」であり、2018年6月15日に閣議決定されています。

デジタル・ガバメントについては、すでにG20デジタル経済大臣会合の主要議題となっていることからも、利用者利便や業務継続性、データ標準化などの具体的な効果を含む情報の発信を行いながら、日本が行政サービスデジタル化の先進的な国となっていくことが期待されています。今では、行政サービスのデジタル改革を実現すべく、地方公共団体や民間部門を通じた「ITを活用した社会システムの抜本改革」を行い、セキュリティを確保しながら国民が安全で安心して暮らせる、豊かさを実感できる社会を実現することを目指しているのです。

デジタル・ガバメントを支える東芝のアプローチ

今回のイベントでは、ベンダープレゼンテーションの場が設けられており、東芝デジタルソリューションズでは「デジタル・ガバメントを支える東芝の取り組み」「介護ビッグデータを利活用して、地域包括ケア「地域マネジメント」の効率と質の向上」という2回のプレゼンテーションを実施しています。

■デジタル・ガバメントを支える東芝の取り組み

23日に行われた「デジタル・ガバメントを支える東芝の取り組み」では、官公ソリューション事業部 事業推進部 参事 樽井伸司が登壇し、デジタル・ガバメント実行計画の構造や概念図を冒頭に説明したのち、デジタル化した行政運営の姿を示しました。「デジタル・ガバメントの真髄は、デジタルの力を使って行政サービスを最大化すること」であり、デジタル化すべき領域は住民との接点だけでなく内部業務におけるデジタル化も必要不可欠だと樽井は語ります。また、デジタル化推進における最大のネックは紙の扱いにあると考えており、紙のデジタル化・自動化にまずは取り組むべきだと力説。さらにそこで生まれたデジタルデータをいかに利活用するのかというデジタルワークスタイルにも注力することで、行政サービスの最大化が実現できると説いています。

官公ソリューション事業部 事業推進部 参事 樽井伸司

紙のデジタル化・自動化については、行政において紙で行われている業務を洗い出し、デジタル化を推進するためのOCRソリューションについて詳しく紹介。またデジタルワークスタイルについては、新しい会議スタイルや在宅勤務の姿、出先機関との連携、アイデア共有の形などを提案し、それに資するソリューションを紹介しました。最後に、東芝が手掛けるAI技術として、コミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」やアナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」について触れながら、デジタル・ガバメントを支える東芝の取り組みについて詳細を語りました。

  • 東芝の取り組みについて詳細を語りました
■ビッグデータの利活用による地域包括ケア「地域マネジメント」支援 事例紹介

24日に行われた「ビッグデータの利活用による地域包括ケア「地域マネジメント」支援 事例紹介」では、最初に官公ソリューション事業部事業推進部 参与 近藤正史が登壇し、「地域包括ケアにおける地域マネジメント」「事例紹介」「ソリューション全体像」という3つのアジェンダが示されまました。最初に国の動向として、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案、いわゆる地域包括ケア強化法案が今年度から施行されたことを紹介し、「大きなキーワードとして挙げられるのが、自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化」だと近藤は説明します。つまりは、データに基づいた地域マネジメントのPDCAを行うことであり、その象徴的な事例として財政的インセンティブという保険者インセンティブの制度が今年度から用意されたことが大きな変化だと語ります。

地域包括ケア「地域マネジメント」支援 事例紹介

そして、東芝デジタルソリューションズが手掛けるソリューションにおける3つのコンセプト「高齢者の各ライフステージの地域マネジメント支援」「高齢者の統合データベースの整備による約10年間の心身状態の変化、サービス利用状況の把握と分析」「保険者機能の強化」について、それぞれ詳しく紹介しました。また、実際の事例としては川崎市や品川区の取り組みを紹介し、東芝健康保険組合における重症化予防に関する事例では、官公ソリューション技術第二部 主任 石川史朗が登壇し、実際に得られた効果やハイリスク者の抽出と施策立案が可能なソリューションの概要について紹介しました。

  • 地域包括ケア「地域マネジメント」支援 事例紹介

5つのテーマで提案するデジタル・ガバメントソリューション

東芝デジタルソリューションズのブースでは、デジタル・ガバメント実行計画に基づき、仮想デスクトップやUSBシンクライアントのデジタルワークスタイルソリューションをはじめ、ペーパーレスやRPAを使った定型業務自動化ソリューション、地域包括ケア事業支援ソリューション、防災情報ソリューションなどを展示。職員の生産性向上と意思決定を支援しながら、住民サービス向上に貢献するICTソリューションが数多く紹介されていました。

 

■デジタルワークスタイルソリューション

デジタルワークスタイルソリューションのエリアでは、テレワーク推進に寄与するICTソリューションを組み合わせることで、職員の方の働き方改革に大きく貢献できるソリューションを紹介。具体的には、PCを持ち寄ることで会議に関する準備や紙そのものを削減することや無線LANなどの整備によってフリーアドレスを実現する、出先機関や外出先、自宅などからセキュアにテレワーク可能な環境を整備するなど、自治体の実態に合わせた柔軟な提案が可能な幅広いソリューションを手掛けています。特徴的なソリューションとしては、セキュアな環境づくりに貢献するシンクライアント化をUSBメモリにて実現する「USBブート型シンクライアントソリューション」をはじめ、証明書の入ったPCのみがアクセス可能な環境で、セキュアブラウザ経由でグループウェア「desknet's NEO」にアクセスするソリューション、LCXアンテナを利用することで通常の無線LANに比べて狭域通信を可能にする「ARESPOシリーズ」などが展示されていました。

デジタルワークスタイルソリューション

■ペーパーレス×定型業務自動化(OCR・RPA)

ペーパーレス×定型業務自動化のエリアでは、多くの企業が興味を持っているRPAソリューションとともに、RPAを生かすべくアナログデータのデジタル化を実現するソリューションとして、長年提供し続けている豊富な実績を誇るOCR技術が紹介されていました。

東芝が提供するOCR技術として紹介されていたのが、フリーフォーマットの帳票でも簡単にフォーマット定義でき、データ化を迅速に行うことが可能になる「フリーフォームOCR」です。紙帳票をスキャンした後に座標を数字で指定せず、マウスやペンを用いて簡単に座標指定が行えるソリューションで、画面上をなぞるだけで簡単に読み取り位置を指定することができます。通常であれば専門のエンジニアが1日掛かりで座標を指定してフォーマット登録する必要がある作業を、わずか数分の間にフォーマットとして登録可能にします。1度フォーマット化してしまえば、同じ種類の帳票であればOCRによる読み取りが可能になります。会場では、フリーフォーマットの帳票を素早くフォーマット登録するデモが行われ、多くの人が興味を示していました。

ペーパーレス×定型業務自動化(OCR・RPA)

また、膨大なデータ入力や属人的な作業、レポート分析、ミス・不正防止チェックなど様々な用途に適用可能な話題のRPAに関するソリューションも展示。純国産RPA製品としてスタンドアロンで利用できる「WinActor」と、サーバー型でセキュアな統制環境で利用可能なイギリス製RPA「BluePrism」が紹介されており、使い方によって複数のRPAが提案できるようになっています。特にRPAの適用業務の洗い出しを含めたアセスメントから教育サービス、定着支援まで一貫したソリューションとしてメニュー化しているのが大きな特徴の1つとなっており、アセスメント次第ではWinActorやBluePrism以外のRPAでの提案も可能となっています。

■地域包括ケア事業支援ソリューション

地域包括ケア事業支援ソリューション

高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとしての介護保険制度において、地域による包括的な支援・サービスを後押しする地域包括ケア事業。この地域包括ケア事業支援ソリューションのエリアでは、自治体が手掛ける地域包括ケア事業を支援するソリューションとして、福祉・保健行政ソリューション「ALWAYS」シリーズが紹介されていました。主なソリューションは「ALWAYS ICC」「ALWAYS SP」です。

ALWAYS ICC」は、自治体が保有しているデータを活用しながら、要介護の認定に関わる介護保険システムのデータや地域・事業所が持つ情報、健康診断データ、各種レセプトなど医療保険システムのデータなどを名寄せ突合したうえで高齢者用の総合DBを構築、それをもとに地域包括支援のためのケア計画を立案し、実施後の評価も含めてPDCAサイクルを循環させていくことが可能な仕組みです。県や市の単位でしか把握できていない高齢者の状況を、自治体ごとに定められた小地域にまで落とし込むことで、高齢者や介護福祉サービス事業者の状況などを見える化できる環境が手に入ります。

また「ALWAYS SP」は、健康診断データやレセプトデータを突合し、糖尿病をはじめとした生活習慣病の予備軍やハイリスク者を抽出、医療機関への受診などの行動変容につなげることが可能な重症化予防のためのソリューションです。実際の介入結果を見ながら、翌年へのアクションにつなげ、PDCAサイクルに沿った効果的な事業運営を支援する仕組みを提供しています。すでに三井住友銀行が重症化予防ソリューションを10万人規模で利用しており、新たな保健事業を開始しました。また、継続的な導入により、受診勧奨を通じてその効果が具体的に示されている東芝健保の事例も紹介していました。

■安心・安全なまちづくり

安心・安全なまちづくりのエリアでは、災害時における対応判断を支援するための防災情報共有ソリューションや防御から検知・分析、予防、対処の各プロセスで実装可能な総合的なセキュリティ対策に向けた各種ソリューションが紹介されていました。

防災情報共有ソリューションでは、総務省のJ-ALERTから配信されてくる情報や災害現場の情報、気象庁や国土交通省などから情報を収集し、防災情報共有システムによってデータベースをクラウド上に構築。さまざまな手段を利用して地域住民や報道機関、消防・警察など防災関係機関に情報を定期的に配信していくことが可能になります。地図情報を活用することで災害状況の可視化が容易となっており、部署異動が頻繁に発生する自治体担当者であっても、直感的に利用できるよう工夫が施されているのが特徴です。すでに富山県や静岡県などの自治体に導入実績があります。

安心・安全なまちづくり

セキュリティソリューションについては、防御、検知/分析、予防、対処の4つのプロセスにそれぞれ役立つセキュリティ製品を紹介。次世代ファイアウォールや統合脅威管理のUTM、セキュリティ診断ツール、IT資産管理ツールなどはもちろん、メールによる標的型攻撃をシミュ―レーションして職員のセキュリティ意識の醸成を行うソリューションも提供しています。対処の面では、PCのHDD破壊や磁界による上書き保存で情報漏洩を防止するソリューションなど、セキュリティに寄与する豊富なソリューションが紹介されていました。

■東芝のAI技術

東芝のAI技術

東芝が持っているAI技術としては、コミュニケーションAIである「RECAIUS(リカイアス)」とアナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」があり、今回のブースでは主に「RECAIUS 音声書き起こしエディタ」が紹介されていました。

録音された音声を自動でテキスト化でき、書き起こし作業をサポートしてくれるソリューションで、会議における議事録作成はもちろん、議会の内容を議事録に起こす際に役立つものになります。ユーザごとに辞書が作成できるため、専門用語などにも対応可能となるだけでなく、話者分類機能によって複数の人が議論する会議の際にも重宝する仕組みが備わっています。議事録作成の効率化に期待する多くの来場者がブースで説明を求めていました。

前回同様、今回もブース内でのプレゼンテーションが開催されました。展示内容に関連した4つのテーマで、オペレーターによるプレゼンが繰り返し行われ、多くの来訪者が耳を傾けていました。

 

■ビッグデータの利活用による地域包括ケア「地域マネジメント」支援

ALWAYS ICCの概念を説明しながら、品川区や川崎市、そして東芝健康保険組合での事例を紹介し、小地域別サービス需給分析やサービスの質の可視化、糖尿病などの重症化予防に関する事例を分かりやすく解説しました。

■ICTを活用した新しい業務スタイルで生産性の向上と意思決定の迅速化

ユースケースを複数提示して「As-Is」「To-Be」にて理想の姿を紹介しながら、ユースケースごとに必要となるソリューションを提示。官公庁や自社での事例も併せて紹介することで、その実績をアピールしました。

■次世代OCRとRPAで業務改革

自治体内で行われている紙での業務について言及しながら、ふるさと納税業務に生かすフリーフォームOCRやカメラ撮影だけで実施する本人確認OCR、複数レイアウトの帳票を読み取る文字認識サービスという3つの文字・画像認識技術を紹介しました。

■コミュニケーションの活性化による働き方改革の実践

業務におけるコミュニケーションや情報共有の課題を提示しながら、自治体向けにカスタマイズされたグループウェア「desknet's NEO.Gov」やビジネスチャットツール「ChatLuck」について、その効果を交えながら活用例を紹介しました。