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PROJECT REPORT-フランス・リヨン市の再開発に挑む
  • その1
  • 01 スマートコミュニティ実現への挑戦
  • 02 フランスと日本が目指す「スマートコミュニティ」の理想形
  • 03 プロジェクトマネージャーが語る実証事業の全容とは
  • 04 スマートコミュニティキーパーソン、語る
  • その2

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PROJECT REPORT フランス・リヨン市の再開発に挑む

04 スマートコミュニティのキーパーソン、語る

リヨンのスマートコミュニティ実証事業は、2011年1月から10月にかけて実施された、事業の実施可能性調査を経て、2012年1月から事業が本格的にスタートした。プロジェクトを統括するマネージャーと営業担当者、技術者の3人のキーパーソンに、現在の状況や今後の展開について聞いた。

PROJECT MEMBER

ソリューション営業 製造・産業・社会インフラソリューション事業部 エネルギーソリューション営業部 主任 矢崎 貴久

東芝と東芝デジタルソリューションズ株式会社双方のスマートコミュニティの事業部に所属しており、国内外に向けて、東芝グループのスマートコミュニティの導入を目指した提案活動を展開。本プロジェクトでは営業業務全般も担当している。

矢崎 貴久の写真
システムソリューションエンジニア 製造・産業・社会インフラソリューション事業部 スマート・エネルギーソリューション技術部 スマートコミュニティ・ソリューション技術担当 参事 山口 直樹

本プロジェクトの「タスク2:太陽光発電を活用したEV充電管理システムとEVカーシェアリング」「タスク3:家庭内エネルギーモニタリングシステム」の東芝グループリーダー。東芝デジタルソリューションズ株式会社内でのプロジェクト・マネージャーも務める。

山口 直樹の写真
IT技術研究者 IT技術研究所 研究開発部 アドバンストソリューションズリサーチラボラトリー 木藤 愛

「タスク4:コミュニティマネジメントシステム(CMS)」開発の中心メンバーとしてプロジェクトに参画。CMSの研究開発に加えて、実証事業として、本システムの有効性について、定性的・定量的に評価していくことも担当している。

木藤 愛の写真
リヨンで作ったものが、未来の街づくりの模範になる プロジェクトの各担当図
  • 山口 直樹の写真今回のプロジェクトは、ICTを活用した最先端のスマートコミュニティの実現を通じて、リヨンの再開発地区への地域貢献を図りつつ、将来を見据えたビジネスモデルを探る、という二つの側面があります。実証事業で得られた実績やノウハウを次のビジネスにつなげていくのは一般的ですが、今回は、日本とフランス、参加企業のすべてから、より公共性の高い役割を求められていると感じますね。単なるビジネスとしてモノを売っていくのではなく、2つの国のエネルギー管轄を行っている自治体同士が協力し合い、将来を見据えて一緒に地域の最適化を行っていく。新しくて難しいところでもありますが、そこにやりがいを感じます。
  • 矢崎 貴久の写真私も同じことを感じています。フランスの上院議員も務めるリヨン市長からは、「ここで作ったものが、未来の街づくりの模範になる」と言われています。世界中で様々な実証が行われていますが、実は電力系統や交通システムなど対象を絞ったプロジェクトが多いんです。一方リヨンは、行政や住民、企業、社会インフラすべてに関わる、一つの街のエッセンスを濃縮したようなプロジェクト。それだけに、このプロジェクトが成功すれば、今後の街づくりに大きな影響を与えることは間違いありません。国内外の自治体からの問い合わせも増えています。いいものを作ることができれば、それがどんどん波及して、世界の街全体が良くなっていく。やりがいがありますね。ただ、初めて経験することばかりで、正解がないし、誰にアドバイスを求めていいのかもわからないことがたくさんあります。進めようとすると突如、法律の壁が立ちはだかることも。そうした試行錯誤の繰り返しです。
  • 打ち合わせ風景の写真今回は国の予算で取り組む実証事業なので、東芝グループでは、この事業自体で利益をあげることを目的とはしていません。実証の後に、新しい技術をどうやって次のビジネスにつなげてくか、ビジネスモデルを考えていくことが重要です。仮説を立てながら実証を進めていくのですが、やはり初めてのことが多いので、本当にこれでうまくいくのか、フランス側も含めて色々な方と議論をしています。とにかくプロジェクトの範囲が広いので、今まで接点がなかった人たちと話しができるのはすごく刺激的ですね。例えば、電気自動車を利用したカーシェアの分野であれば、普段あまり付き合いのない自動車メーカーや、カーシェアリングサービス企業、また電気自動車を動かすエネルギーを作る太陽光発電のプロ。タスク2だけでも、たくさんの会社の色々な立場の方がいます。それぞれ自分たちのビジネスをどう進めていくか、売っていくか、ということを考えながら話しを進めていくので、実証事業を推進する私たちとは、どうしてもぶつかることも。それをいかにまとめて、この実証につなげていくかが私たちの役割です。そんなところが、大変で難しい。契約交渉で商習慣も文化も異なるフランス企業を相手にするのも、なかなか苦労しますね。相手にとっては、たとえ実証事業であろうとも損失は出せないので、実証事業の契約交渉にも関わらず、損害賠償の話が入って、その場の雲行きがあやしくなることもあります。ただ、スマートコミュニティの実現に向けて、より良いものを目指す思いは一緒であり、互いに納得できる着地点にたどり着けると確信しています。
  • 矢崎 貴久の写真スマートコミュニティの実証は大きな企業が協力して行うことが多く、例えばニューメキシコのプロジェクトでは日本側だけで10数社が参画しています。そうなると日本側でもそれぞれの企業でやりたいことが異なるので苦労することもあるんですが、今回日本側は、東芝と東芝デジタルソリューションズ株式会社の2社が核になっています。そういった意味では、今回の実証を通して製品を生み出したり、事業化したりといった次のビジネスにつなげるサイクルは回りやすいと思いますね。

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地域全体のエネルギー収支を見える化する先進システム
  • 木藤 愛の写真今回の実証事業において、最も新しい試みとなるのが、私が担当している「タスク4:コミュニティマネジメントシステム(CMS)」だと思います。今回のプロジェクトでは、外壁の多くが太陽光パネルで覆われたビルで消費を上回るエネルギー供給を目指す「ポジティブ・エナジー・ビルディング(PEB)」や、太陽光発電で充電して走る電気自動車を使った、トータルでCO2を全く出さない交通システムなど、さまざまな取り組みがあります。そうした地域全体のエネルギー収支がどうなっているのかを見える化して、ステークホルダーである行政や地域住民に情報提供することで、エネルギーのさらなる最適化を促します。
    家の状態、ビルの状態、街の状態を見たときに、どういう値だったら、なにをどういう風に改善していけばいいのか。どういう管理をしていけば、街の運営がうまくいくのか。リヨンが一番進んでいるプロジェクトなので、そういった指標作りからスタートです。有効な情報を提供するために、どういうデータを集めて、どんな分析をすればいいのかわからないこともたくさんあるので、今回の実証事業を通じて成果を挙げ、手応えを掴みたいですね。普段はどちらかといえば開発業務が中心ですが、フランス企業などとも積極的にやりとりしながら、案件を進めていきたいと思います。
  • 山口 直樹の写真CMSは、これまでさまざまな社会インフラシステムの提供を通じてスマートコミュニティの実現に貢献してきた、東芝デジタルソリューションズ株式会社の強みが発揮される部分。これから、当社のウリになっていくところですね。
  • 今回私たちに実証を任せてもらえたのも、それぞれのタスクでクローズするのではなく、街全体のエネルギー供給や消費に関するデータをまとめて、最適化し、街をもっと良くするための手助けをしていくというCMSのコンセプトを認めてもらえたから、という話しも聞いています。それだけ重要なシステムです。技術関連の打ち合わせに同席する機会がありますが、木藤さんはフランス人のメンバーとも英語で対等にやりとりしていて、なかなかの交渉上手。言葉で説明するだけでなく、提示するプランやアイデアを図示して見せることで、議論の内容もより具体的となり、確実に進展していきます。開発から導入段階と、これからが大変な時期になりますが、大きな成果が挙がることを期待しています。
  • 打ち合わせ風景の写真これからどんな高い山が待っているのか、まだまだ想像がつきません。初めてで、わからないことだらけなので、自分で動いて情報を集めないと、前に進まないことが多々あります。初めは、なかなか相手の意見や要望が引き出せなくて苦労しましたが、図を描いたり、資料を持って説明することで、相手側の意見も引き出せるようになってきました。打ち合わせというより、ワークショップのような雰囲気ですね。意識的に図示するようになったのは、今回のプロジェクトで学んだことです。

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東芝デジタルソリューションズ株式会社の先進技術で、環境都市開発に貢献
  • パソコン操作の写真スマートコミュニティに求められるものは、大きく2つに分かれています。一つは、「20-20-20」(温室効果ガスの排出量を1990年比で20%削減、全体で使うエネルギーの中で再生可能エネルギーを使う割合を20%に高める、エネルギー消費を20%削減)を掲げる欧州など環境意識の高い地域に対して、最先端の技術を投入して高度な環境配慮型都市を構築しようというもの。リヨンのプロジェクトはその典型ですね。もう一つは、社会や経済の急成長に社会インフラ整備が追いつかない途上国に対して、電力供給の安定化や環境に負荷をかけない仕組みとして、スマートコミュニティを導入しようというもの。ベトナムや中国で始まっているプロジェクトはその例といえます。東芝デジタルソリューションズ株式会社は、どちらの方向性にも貢献できる技術もノウハウを持っています。これからは要望に合わせて色々なものを提案していけるように、もっとレパートリーを充実させたいですね。
  • 矢崎 貴久の写真最新鋭の設備を備えた多目的ビル、地区全域の交通システム、フランスの古き良き既存の一般住宅と、街のエッセンスをすべて凝縮したモデルがリヨンのプロジェクトです。稼働するシステムも参加している企業も多種多様。今回のリヨンのプロジェクトは長期間に及びますが、個々の案件が長期化すると影響も大きいので、常にスピード感を持って取り組んでいます。今回のプロジェクトを通じて得られる多くのノウハウを活かして、実証が終わる2016年を待つことなく、次のビジネスの一手を早く打っていきたいと思っています。
  • 木藤 愛の写真スマートコミュニティに求められるものは、政治や経済、産業の状況や、そこで暮らす人々のライフスタイルや文化、地理・気象条件など、国や地域ごとに多種多様であり、特性に合わせた実証が必要となります。そのため、CMSを通じて提示する指標についても、国や地域の特性に合わせた指標を提示する必要があります。より多くの国や地域でスマートコミュニティが実現するためにも、さまざまな多様性に柔軟に応えられるシステムを開発していきたいと考えています。
    そしてまた、リヨンでの取り組みと併行して、こうして得られる知見を次の事業に活かすための研究も行っています。ベトナムや中国など、より多くのプロジェクトに参加して、経験を重ね、新たな事業につなげていきたいですね。しかし当面はリヨンのプロジェクトに全力で取り組み、成果を確実に挙げたいと思います。
  • 山口 直樹、矢崎 貴久、木藤 愛の写真最近のことですが、半年間近くを要した契約交渉がようやくまとまりました。これで開発段階に移行できます。実に長かった(笑)。スマートコミュニティは始まったばかりの事業分野であり、明確なゴールはありません。何をすべきか自分たちで考え、試行錯誤を繰り返し、将来につなげていく。大変なことも多々ありますが、大きなやりがいがあります。たくさんの人や会社を巻き込んで、一緒にモノを作り上げるのはとても楽しいですね。ようやくモノづくりの段階を迎えることができて、ワクワクしています。
    今後、世界中の地域でプロジェクトが始まっていきますが、さまざまな設備やシステムを最適化し、スマートコミュニティを実現していくためには、ICTの力が欠かせません。そこに私たちのビジネスの可能性があります。実証事業がいよいよ本格化するリヨンのプロジェクトを成功させることで、スマートコミュニティの分野において、東芝デジタルソリューションズ株式会社の名前を国内外に改めて知らせたいですね。

※本内容は、2012年9月に取材した内容をもとに構成しています。
記事内における数値、組織名、役職などは取材時のものです。

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