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コラム

[第18回] 2017年、FinTech(フィンテック)業界の大本命! ブロックチェーンの魅力に迫る

更新日:2017年5月29日

仮想通貨ビットコインの決済を支える技術として知られるブロックチェーン。その可能性は単なる仮想通貨の運用のみならず、社会のあらゆるシーンに革命をもたらすと期待されている。コストと時間を削減し、フェアな透明性も確保できる新技術は、実際のビジネスにおいてどのような使われ方が可能だろうか?今回はブロックチェーンのしくみやメリットを解説し、企業の導入事例や金融機関の取り組みを紹介する。

「より安く、より早く、より安全に」を実現する新技術

2017年4月1日、仮想通貨の売買に関するルールを定めた「改正資金決済法」が施行された。 これにより、仮想通貨の売買等を行う仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されるなど、安全に運用するための規制が整備され、仮想通貨はいよいよ実践導入できる段階に突入したと言える。そして、この仮想通貨を低コストかつ安定的に運用するために欠かせない技術が、ブロックチェーンである。

「パーソナル・コンピュータ、インターネットに次ぐ革命 」と言われるほどその革新性が高く評価されているブロックチェーンは、今後ビジネスはもちろん、公共サービスやシェアリング・エコノミーなど様々なシーンに活用できるポテンシャルを秘めている。しかし、その魅力が世の中に浸透しているとはまだ言えないだろう。そこで改めて、ブロックチェーンの仕組みとメリットを紹介しよう。

ブロックチェーンを一言で説明すると、「大事な情報を複数の場所で共有することにより、低コストでデータの正確性を保証する仕組み」である。

従来、預金や権利などの大事な情報は、管理者が何重もの対策を施したサーバーで保管(集中型台帳)することで、データの正確性を保証し、改ざんなどの不正を防止している。しかし、仮にサーバーにトラブルが発生するとシステムが停止したり、データが改ざんされてしまうリスクが高く、それを防ぐために多額のコストをかけて何重もの対策をとっている。

一方、ブロックチェーンは大事なデータを複数の場所で保管する(分散型台帳)ため、1箇所のサーバーがトラブルで停止したり、改ざんが行われたりしても、その他のサーバーに正しいデータが残り続けるので正確性は保たれる。そして、このように安定的かつ不正が難しい仕組みであることから、結果的にセキュリティにかかるコストも削減することができるのだ。

例えば、銀行やクレジットカード会社は決済システムの構築と個人のID証明に大きなコストを投じているため、それが最終的には手数料として利用者や店舗側の負担になっている。しかも、複数の企業がシステムに関係しているため、決済までに時間がかかることもしばしば。それに対し、ブロックチェーンを活用した仮想通貨であれば、当事者同士で決済ができるので、より安く、より早く、より安全にお金のやりとりができるようになる。この特性を活用すれば、金融の取引以外にも、土地登記や戸籍などの権利証明、サプライチェーン、シェアリング・エコノミーなど様々な分野に応用できる点が、ブロックチェーンが革新的な技術と言われる所以である

金融業界の枠を超えて拡がる、ブロックチェーンの可能性

ブロックチェーンは金融業界に新しい風を吹き込む技術として注目を集め始めたが、上述したように他業界における展開にも大きな可能性を秘めており、すでにいくつかの企業が実務への運用を発表している。

2017年4月27日には、不動産業界大手の株式会社積水ハウスと、国内最大級のブロックチェーン企業である株式会社bitFlyerが、共同事業としてブロックチェーン技術を利用した不動産情報管理システムの構築開始を発表。 2017年度内を目処に、賃貸住宅における入居契約等の情報管理システムをブロックチェーンで構築し、運用開始することを目指す。実現すれば、不動産業界におけるブロックチェーンの実運用は日本初となる。

さらに、2020年には積水ハウスグループにおける賃貸住宅のサービス提供を、ブロックチェーン上で行うことを目指している。具体的には、賃貸オーナーと積水ハウス、グループ会社である積和不動産株式会社の担当する物件管理、入居者向けの管理業務などを、ブロックチェーン技術をプラットフォームとしたIoTアプリケーションでつなげることで一元管理化。入居希望者の物件見学から入居申込み、入居契約、入居に至る一連の流れを関係事業者が共有することで、自社と顧客双方の利便性を高めることを目的とする。

さらに、将来的には銀行や保険、マイナンバーなど他業種他分野のブロックチェーン技術を活用したコンソーシアムとの融合を図るほか、日本の不動産業界のネットワークをつなげる標準プラットフォームに成長することを視野に入れているという。

広告業界にも、ブロックチェーン技術による新たな試みが始まっている。 2017年4月25日、インターネット広告やコンテンツマーケティングを手がける広告代理店DAC株式会社は、デジタル広告効果の透明化にブロックチェーンを活用する実証実験を開始すると発表。 オンライン広告の取引が増加する中、複数の広告配信プラットフォームを運用した際の実績レポートに不透明性が生じる点が近年の課題とされている。そこにブロックチェーン技術を導入することで、レポートの相互閲覧や改ざん等の不正の検知、数値差分の検証が可能となり、透明性を担保するねらいだ。

テクノロジーパートナーには日本IBM株式会社を選定。トライアル結果にもとづく改善、AI活用を通じて、デジタル広告の信頼性および価値向上を目指す。まだ実証実験の段階ではあるものの、「データを複数で共有し、蓄積していく」というブロックチェーンの公平性を有効活用した好例と言えるだろう。

このように、業界を問わずブロックチェーン技術への需要が高まりつつある状況下で、技術者不足、知識不足への対応も早急に求められている。例えば、一般社団法人ブロックチェーン推進協会による教育カリキュラム「ブロックチェーン大学校 」は第4期を迎え、受講者は年々増加している(第4期は2017年5月24日開講し、すでに終了)。全8回の講義を通してブロックチェーンのスペシャリストであるエンジニアを育成するほか、ブロックチェーン導入を検討する金融機関や企業の担当者など、非エンジニア向けのコースも開講し、好評を博している。今後も技術や知識の底上げを目的とした教育プログラムは増えることが予想されるため、上記のようなプログラムを通して新しい技術への理解を深めておくことも、これからの時代を生き抜く上でカギになるかもしれない。

貿易取引におけるブロックチェーン活用が、新たなフェーズに突入

最後に、本家であるFinTech分野の現状について触れておきたい。 最近注目を集めているのが、貿易取引におけるブロックチェーン活用だ。貿易取引は、輸送時間を要することで商品の引渡しと代金決済のタイムラグが発生するなど、取引の成立が通常より難しいとされている。さらに、複数の関係者が絡むので取引が複雑化しやすい。そのため、銀行の発行する信用状を用いてリスクを回避するのが通例であり、郵送やメールなどの手段を用いるため手続きに時間を要することが課題であった。

そこで着目したのが、ブロックチェーンの「共通台帳を分散管理する」という機能。関係者が同時に情報を共有することができる上、改ざんや間違いなどを防ぐことも可能になり、大幅な時間短縮が見込まれる。

2016年2月22日には、オリックス株式会社、オリックス銀行株式会社、株式会社静岡銀行、株式会社NTTデータ、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズら5社が協働して、いち早く実証実験に着手。同年7月12日に実証実験が完了し、信用状取引における事務手続きの時間短縮、また信用状の修正手続き等についても迅速化が可能となることが確認できたという。

また、株式会社NTTデータは2017年4月24日に、東京海上日動火災保険株式会社とのブロックチェーンに関する実証実験も完了したことを発表した。外航貨物海上保険における保険証券へのブロックチェーン技術適用にチャレンジし、国際的に流通する書類の送達コストや人的コスト削減を目指して研究を進めている。

上記実験結果の実用化が待たれるなか、2017年4月26日には、株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行、R3、コグニザントジャパン株式会社の4社共同でブロックチェーン技術による貿易書類のシステム化を発表 。R3が開発した分散台帳技術プラットフォームを用いて、2017年6月を目処に実貿易取引を実施するという。こちらも実証実験の段階ではあるものの、実際に顧客の貿易取引に導入する珍しいケース。本格的な商業利用に向けた新たな一歩であることは間違いない。

これまで、各行で盛んに研究が進められるも、なかなか商業利用に結びつくまでには至らなかったブロックチェーンだが、実運用を見据えた動きは着実に進みつつある。実証実験を通して蓄積された知見がどのようなカタチでサービス化されるのか、各行の取り組みに期待したい。

ライタープロフィール

ライター:松山 響
大手広告代理店や電気通信事業者のオウンドメディアにて、取材・ライティングを担当する。若者の実態調査、地方創生プロジェクトに関する記事を継続して執筆。また、生協の週刊情報誌の編集に創刊から携わり、食と安全にも明るい。


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