本文へジャンプ

コラム

[第13回] 海外送金サービス新時代。銀行のFinTech対応に注目!

更新日:2017年2月17日

金融ビジネスのあらゆる分野に改革をもたらすFinTech。そのイノベーションの波は、海外送金サービスにも及んでいる。スタートアップ企業が牽引する新しいサービスのカタチとは? そして、FinTechが「脅威」から「ビジネスチャンス」に変わった今、銀行が着手し始めた改革とは? 最新の動向を紹介する。

「簡単、安い、早い」を実現し、従来の送金サービスを凌駕

銀行の主要業務のひとつとして、多くのユーザーに利用されている海外送金サービス。出張や海外取引、旅行、留学、移住など、グローバル化のもとで今後ますます需要が高まることが予想される。しかし、ユーザー側の視点に立つと、各種手数料がかかり、送金から着金までの日数も要するため、その利便性は決して高いとはいえない。

このような状況をテクノロジーの力で打開しようとする動きが、FinTechのスタートアップ企業を中心に広がり始めている。例を挙げるとキリがないが、FinTechという言葉が世の中に浸透する以前に、従来の海外送金サービスの常識を覆すものとして世界的な注目を集めたのが、イギリスの「TransferWise」だ。

サービスの仕組みを簡単に説明しよう。
イギリスのユーザーが10万円をアメリカに送金したい場合、海外送金はせずにTransferWiseのイギリスの口座に10万円を振り込む。すると、TransferWiseはアメリカのユーザーで10万円に相当するドルをイギリスの口座に送金したい人を見つけ、TransferWiseのアメリカの口座に振り込んでもらう。お互いが希望する金額をマッチさせ、海外送金することなく国内取引で決済することで、場合によっては手数料を従来の10分の1程度に削減することができるというのだ。

2011年のサービス開始以降、イギリス国内外で一気に浸透し、名だたる投資家からの資金を集めて急成長。2016年には日本にも進出して話題を呼んだ。世界中にユーザー数が増加することで送金先の選択肢は増え、早ければ数分で送金手続きが完了する。もちろん、窓口での面倒な手続きも不要。手数料が安いので少額の海外送金がしやすいこともメリットに挙げられる。

ほかにも、TransferWiseのビジネス版ともいえる、企業同士のマッチング送金サービス「Kantox」や、銀行口座を持たずにスマートフォンだけで送金できる「WorldRemit」など、スタートアップ企業によるユーザー利便性の高いサービスが続々と登場し、送金ビジネスのあり方は徐々に変わってきている。

FinTechは銀行の「脅威」ではなく、「ビジネスチャンス」

ユーザー利便性の高いFinTechサービスの隆盛は当初、既存の銀行サービスを破壊する「脅威」として語られることが多かった。しかし、そのような対立構造で考える段階は過ぎ、スタートアップ企業の持つ技術やチャレンジ精神は、既存の金融機関にとっても新たなビジネス創出のチャンスとして捉えられている。日本銀行は既に欧州中央銀行とブロックチェーン技術の共同研究を始めており、2017年中に成果を公表する予定だ。そのほかにも、業務提携や共同研究を推進する銀行は増加する一方である。

メガバンクの中でも先陣を切っているのが、三菱UFJフィナンシャル・グループ。2015年には世界トップの金融機関からなるワーキンググループ「R3コンソーシアム」に参加し、ビットコインの実証実験を開始。2016年には世界最大級の仮想通貨取引所を運営する「コインベース」と資本・業務提携を発表する。現在、迅速で手数料も安い海外送金を実現すべく、独自の仮想通貨の開発を進めているという。

また、海外送金に関連した動きとして、同行は日立製作所とタッグを組み、シンガポールでブロックチェーン技術を活用した、安全かつ迅速な電子小切手決済の実証実験を開始。
シンガポールでは資金決済の多くが小切手取引で行われるが、決済まで数日かかるなどの不便さがあった。そこに新システムを導入することで、即日かつセキュアな取引の実現を目指す。
金融システムが高度に発達した日本より、不自由の多い新興国のほうが潜在的な市場が大きく、そこに着目した好例といえるだろう。

新サービス構築に向けて、邦銀43行が集結!

三菱UFJフィナンシャル・グループ以外のメガバンクや地方銀行も、それぞれ他業種や大学と提携した実証実験、複数の銀行と共同で取り組む研究開発を推し進めている。

その中でも特筆すべき動向が、SBIホールディングスと邦銀42行による「国内為替の一元化検討に関するコンソーシアム」の発足。みずほフィナンシャルグループや三井住友信託銀行などの大手、中国銀行や東邦銀行など地方メガバンクなどが参加し、ブロックチェーン技術を活用することで、海外送金の利便性向上を目指す。同コンソーシアムでは、銀行の国際間の支払いをリアルタイムで処理する「ripple connect(リップルコネクト)」という次世代決済基盤を採用。これにより、国内外為替の一元化、24時間リアルタイム送金、送金コストの削減を目指す。2016年12月には新に福井銀行の参加が決定し、参加金融機関は43行に増加。今後もその数は増えていく見通しだ。

現在は国内外為替にあたって必要となる業務に関して、技術と運用の議論を重ねている段階。2017年3月を目処に実証実験や商品利用に向けた各種検証を完了する予定だという。
これだけ多くの邦銀が結集してFinTechに取り組むことは珍しく、24時間リアルタイムの海外送金システムが実現すれば、日本の金融業界に大きなインパクトを与えることは間違いない。

一方、ブロックチェーン技術を用いずに即日送金と手数料引き下げに挑戦するプロジェクトも。それが、国際銀行間通信協会(SWIFT)による「国際決済の革新に向けたイニシアティブ(GPII:Global Payments Innovation Initiative)」だ。
これは、プロジェクトに参加する銀行が、自行を含めた他の参加行の決済用口座を開設することで、即日送金を実現するというもの。他の銀行を中継せずに銀行間で直接送金を行うため、手数料の増大も防げる。現在70行以上の銀行が参加し、日本からは三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行が参加済みだ。

このような海外送金サービスの改革は、ユーザーにとってのメリットがクローズアップされがちだが、当然銀行にとってもメリットがある。
ユーザーが支払う手数料が減るということは、銀行が負担する国内外への送金コストも減るということ。低コストでの運用が可能になるうえ、手数料の高さから少額の送金を躊躇していた新規ユーザーの開拓にもつながる。そして、顧客満足度が向上すれば、銀行としてのバリューも上がっていく。また、ブロックチェーンを活用した運用に関しては、事務処理などを行う銀行員の負荷軽減にも貢献するだろう。

2017年の海外送金サービスは、銀行によるFinTech対応がどこまで進むのかが楽しみなところ。スタートアップ企業との連携も含めて注目していきたい。

ライタープロフィール

ライター:松山 響
大手広告代理店や電気通信事業者のオウンドメディアにて、取材・ライティングを担当する。若者の実態調査、地方創生プロジェクトに関する記事を継続して執筆。また、生協の週刊情報誌の編集に創刊から携わり、食と安全にも明るい。


※お申し込みいただいたお客様の個人情報は、暗号化され保護されます。