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コラム

[第12回] “投資アレルギー”克服のカギ! ロボ・アドバイザーによる資産運用

更新日:2017年1月30日

貯蓄から投資へ―。政府が旗印を掲げて個人の資産運用を促進する一方で、日本人の資産運用に対する抵抗はまだ根強い。そんな中、投資の経験があまりない人たちでも簡単に資産運用を始められるサービスとして注目されているのが、『株式会社お金のデザイン』が開発した個人向けオンライン投資サービス「THEO(テオ)」だ。ITを活用した資産運用にはどのような可能性が秘められているのか、同社取締役COOの北澤直氏に話を聞いた。

株式会社お金のデザイン 取締役COO(Chief Operating Officer) 北澤直氏

資産運用のハードルをとことん下げて、誰もが良いサービスを手軽に使えるように

日本銀行のレポートによると、個人の金融資産総額に対する「現金・預金」比率は5割を上回り、依然として高い貯蓄傾向にあることがわかる。
もちろん、円建て預金が最も効率的な運用方法だった時代は過ぎ去り、投資の必要性についても政府やメディアを通して一般社会に少しずつ浸透しつつある。しかし、未だにリスクに対する不安は払拭できず、また専門性の高さや資金力の乏しさなど様々な理由から投資を選択しない層が多いのが現状だろう。

『株式会社お金のデザイン』が2016年2月16日にリリースした資産運用サービス「THEO(テオ)」は、そんな日本人の“投資アレルギー”を克服する大きな可能性を秘めている。

THEOは、ウェブ上で5つの質問に答えるだけで、「ロボ・アドバイザー」が世界中のETF(Exchange Traded Fund、上場投資信託)銘柄からその人にとって最適なポートフォリオを提案・運用してくれるサービス。面倒な手続きは一切不要で、申し込みはスマホで完結できる。最低投資額は10万円で、投資一任報酬は預かり資産の年率1.0%だけ。売買手数料や委託手数料、為替手数料なども一切無料で、銘柄の選定はもちろん、リスク分散やリバランスも自動で行ってくれるのだ。

北澤氏は、事業立ち上げの背景をこのように語る。
「これまでの資産運用サービスは、一部の専門性がある人や資本力のある人に提供されているものと、一般の人向けに提供されているものとの間に大きな差がありました。技術やお金を持っている人だけが享受している優れたサービスを、誰もが使えるようにすべきだと思ったのが、私たちが事業を始めた最初の動機です」

実際に、THEOのユーザー体験は非常にシンプルでわかりやすいが、その裏側では数億円規模の企業の運用をまかなえるレベルの複雑なアルゴリズムが動作しているという。そのアルゴリズムは金融工学の専門家がアドバイザーに入っており、231通りもの運用パターンを有するのだから驚きだ。

「資産運用を始めたいと思っていても、本を読んで勉強したり、証券会社の窓口に話を聞きにいくのは面倒だ、大変だと感じている人も多いはず。だから、このサービスはスマホで申し込みができて、質問に答えるだけで運用はロボ・アドバイザーにお任せ。資金も安くスタートできて、よくわからない手数料は一切かからず年率1.0%だけ。資産運用に対して今まで抱いていたであろう様々なハードルをとことん取り除いたんです」と北澤氏が述べる。

5つの質問に答えると、適切な資産運用方針が提示され、そのまま申し込み画面に進める。

若年層の潜在的ニーズを開拓。“はじめの一歩”をTHEOで体験してもらいたい

リリース直後のユーザー属性は、20代~30代が6割近く、40代を含めると8割強。資産運用経験のない人、またはほとんどない人が9割近くを占めたという。この割合は資産運用業界では非常に珍しい結果であり、運用に対する潜在的ニーズを新たに掘り起こせたことを示している。

「資産運用に苦手意識を持っている方がTHEOの良さに気づいてくれることは予想できていたので、デザインもよくある暖色系の色は使わず、キャッチコピーも“いつでも安心”みたいな言葉は使わないように意識しました(笑)。今までの資産運用とは全く違う新しいものである、という印象を抱いてもらえるように、細部にまでこだわっています。ガイドラインもA4で20ページのPDFを渡されたらストレスに感じる世代。そこをいかに効果的に、法律に従って伝えるのかはユーザー・インターフェイスの世界なので、ウェブ業界出身の人間を中心に、リーガルチェックを行いながらストレスのない画面を突き詰めました」と北澤氏。このようなマーケティングの視点が備わっているのは、プロジェクトメンバーが金融業界出身者に限らず、ウェブ業界のスペシャリストをはじめ多彩なバックグラウンドを持つ人材が集った結果だろう。

また、北澤氏は若年層の資産運用に対する潜在的ニーズについて、このような見解を述べてくれた。

「統計的には、30代以下の方でも年収の半分に相当する額を貯蓄しているという結果が出ています。その背景には、将来のお金に対する不安があるのだと思います。バブルは過去の話ですし、社会保障費の高騰や年金基金の支給額減少などが連日ニュースで報じられるので、日本経済の停滞が原体験として染み付いていると思うんです。だから、浪費グセもなくて稼いだお金は貯蓄に回す。それはある意味、正しい選択なのかもしれません。貯蓄は当然、重要です。

ただ、使い道の決まっていないお金を貯蓄してもマイナス金利で金利は上がらないし、下手したらお金を引き出すだけでお金がかかる世の中で、若年層の中にも漠然と資産運用をしなければならないと感じている層はいます。でも自分で資産運用する時間がなく、勉強する暇もないから、モヤモヤしたものを抱えながらもお金をアイドリングし続けてしまう。そこからもう一歩進むための、“はじめの一歩”を、ぜひTHEOで体験してもらいたいと思っています」

北澤氏のそのような想いの根底には、「日本のファイナンス・リテラシーを高めたい」という信念もあるようだ。

「実際にTHEOで資産運用を始めると、30から40のETFを持つことになります。すると、そこから経済の動きに興味を抱いて、自発的に日経新聞を読み始める人もいるんですよね。自分なりに問題意識を持って株を買い始めた人もいます。だから、少しでもやってみたいと思っている人には、まずは試してほしいという気持ちがある。THEOのハードルをとことん下げている理由のひとつには、投資教育の意味合いもあるんです」と北澤氏。

金融業界の健全な成長に、金融機関のFinTech導入は不可欠

北澤氏は一般社団法人FinTech協会の理事も務めており、この業界を横断的に俯瞰する立場にある。そこで、2017年の金融業界はどのような一年になるのかを聞いた。

「2016年はブロックチェーンのような新しい技術が登場して、今までのサービスより確実に利便性が高いものや、コストのかからないものが出てきた。2017年は、そういった技術やサービスをしっかりビジネスとして確立させていくことになると思います。それはスタートアップ企業だけに限らず、歴史のある銀行も含めて金融業界全体で変わってくのが望ましい姿でしょう。感度の高い金融機関は動き始めています」と北澤氏は述べる。

実際、『お金のデザイン』も銀行との協働に着手し始めているという。
「大手の主要な地方銀行から出資をいただいて、協働サービスを準備しています。本当に感度の高い方は最先端を走っていて、ともすれば自己矛盾ともとれるようなビジネスモデルの変革を積極的に推し進めています。

たとえば、家計簿アプリは銀行口座の入出金記録をスマホで手軽に閲覧できる役割を備えているので、銀行サービスをより便利にするものとして銀行側も導入しやすいという側面があります。既存のビジネスを脅かすものではないですからね。それに対して、ロボ・アドバイザーは、すでにやっている資産運用サービスとの兼ね合いを考える人もいるかもしれません。でも、そういう次元の話ではなくて、新しいことを自分たちが始めないと、という声が強くなってきている。目先の利益で稼ぐのではなくて、将来あるべき方向性を見据えて取り組んでいこうと。地方銀行のトップの方々がこういった考えをお持ちなことに、私は大きな可能性を感じていますね」

最後に、北澤氏は金融業界の未来について、このような未来図を語ってくれた。

「予測というよりは希望的観測なのですが、THEOのようなユーザーファーストの発想を主眼に置いたサービスが、スタートアップだけでなく既存の金融機関からもたくさん登場してほしいと思っています。そうすると、ユーザーの選択肢もどんどん増えて、その中から本当に良いものがきちんと選ばれる業界になります。これまでの金融サービスはどこか距離感があって、一般のユーザーに馴染みにくい部分があったと思うんです。でも、ユーザーにとって本当に便利で使いやすいサービスが金融業界から続々と誕生したら、それは他業界からみても革命的なことです。そういう新しいトレンドが生まれるよう、我々も手を取り合ってビジネスを盛り上げていきたいですね」

<プロフィール>
北澤 直:慶応義塾大学法学部卒業。ペンシルバニア大学大学院修了。モルガン・スタンレー証券に投資銀行員として6年間在籍し、不動産部門の成長に貢献。それ以前は弁護士として6年間、日本とNYにて金融・不動産関連の法律業務を手がける。現・株式会社お金のデザイン取締役COO、弁護士(日本法(第一東京弁護士会)NY州法)。

ライタープロフィール

ライター:松山 響
大手広告代理店や電気通信事業者のオウンドメディアにて、取材・ライティングを担当する。若者の実態調査、地方創生プロジェクトに関する記事を継続して執筆。また、生協の週刊情報誌の編集に創刊から携わり、食と安全にも明るい。


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