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コラム

[第6回] 金融×ITの最新技術が集結!
「FIT2016」イベントレポート

更新日:2016年9月27日

去る9月8日(木)、9月9日(金)の2日間にわたり、東京国際フォーラムにて日本金融通信社が主催する国内最大の金融ITフェア「FIT2016(金融国際情報技術展)」が開催された。今年で16回目を迎える本イベントには、過去最多の163社が出展。各企業のブースには、地方創生、ロボット接客、業務効率化、セキュリティなど、様々な“イマ”を切り取るキーワードが並び、出展者と来場者が熱心に語り合う光景が見られた。迫り来る金融変革期に多様な解をもたらす、最新テクノロジーのトレンドをレポートする。



大手企業の目指す地方創生、海外企業のもたらす新技術

今年のFITのテーマは「変革期の決断。~価値観の多様化を新技術で乗り越えろ~」。“フィンテック(FinTech)”という言葉が世の中に浸透し、日本政府も規制緩和に前向きな姿勢を見せるなど、金融業界の大変革が現実味を帯びてきた現在。「次の時代の金融業のあり方」を模索して、出展者も来場者も積極的にコミュニケーションを取る姿が多く見受けられた。

フィンテックはベンチャー企業が中心となって作り上げたムーブメントだが、今回は大手企業の出展も多く、あらためて市場規模の急速な拡がりを感じさせられた。そんな大手企業の動きで印象的だったのが、「地方」をターゲットにした出展がさかんだったということ。各企業が「地方創生」や「地域経済振興」などのキーワードを掲げ、金融機関向けの様々なサービスやソリューションを紹介していた。

例えば、地域経済の活性化の大きな柱のひとつと言われている、決済のキャッシュレス化。これを起点とする決済連動マーケティングこそが地域経済に新しいヒト・モノ・カネの流れを生むと期待され、様々な企業がこの分野に参入しはじめている。ICカード製造や各種決済方式に実績のある大日本印刷では、こうした流れを鑑み、地方の金融機関に向けて「DNP国際ブランドプリペイド/デビット決済サービス」や「DNPマルチペイメントサービス」などのサービスを展開していくという。

一方で、フィンテックを牽引してきた海外のベンチャー企業やその代理店の出展もたくさんの来場者で賑わっていた。彼らは、海外で作られたサービスやシステムをそのまま日本に持ってくるのではなく、日本国内の法律や需要にマッチした提案を展開。すでに海外では実績や成功事例のあるブロックチェーン、ビッグデータ、クラウドなどの新たなテクノロジーに基づくサービスやソリューションは今後、日本市場に合わせた形で次々と各金融機関に導入されていくことになるだろう。

次代に向けたさらなる業務効率化とセキュリティの確保

会場内で多く見かけたのは、業務効率化系のサービス。金融業界に限らず、ペーパーレス化やクラウド化などITを活用した効率改善は様々な業種で導入されているが、特に大量の複雑な顧客データを扱う金融機関においては喫緊の課題と言えるだろう。膨大な文書を管理するためのシステムはもちろん、貸付金管理や資金運用などを各金融機関の特性に合わせてカスタマイズするサービスが注目を集めていた。

また、バックオフィスでの業務効率化だけでなく、営業やコンサルティングといった顧客接点の効率化も見逃せない。特に目立っていたのが、タブレット端末の活用事例。地方の高齢者など法律に詳しくない顧客にもわかりやすい説明を行うためのアプリや、必要に応じて専門のスタッフとテレビ通話を行うソリューションなど、接客時やプレゼンテーション時のコミュニケーションの円滑化をサポートするサービスが数多く見られた。

書類管理/文書管理のシステムやサービスは非常に需要が大きい。膨大な文書のペーパーレス化、データベース管理は金融機関共通の課題だ。画像はコクヨブース。

そして、どの企業も力を入れていたのがセキュリティに関するサービス。NTTコムウェアやハンモックのブースでは、資産管理などのソフトウェアにおける最先端のセキュリティ技術が展示されていた。ひと口にセキュリティといっても幅広いが、まず重視されるのは顧客情報や金融データの保護。情報漏洩の原因には単純な人的ミスも多いため、対策も単純な暗号化だけではなく、操作ログの管理やデバイス自体の操作権限制御など、より多層的なものが求められる。そうした問題の切り分けと対策は着実に洗練され、進化しつつあることがうかがえた。

もうひとつ大きなテーマとなっているのが、ユーザーによる個人認証だ。スマートフォンなどを用いたネットバンキングにおいては、セキュリティを重視しすぎるとユーザーに毎回負担をかけることになり、かえってセキュリティ効率は下がってしまうジレンマがある。そこで、高い安全性を確保する最新の生体認証や2経路認証などのシステムにより、ユーザーに負担をかけず、なおかつ安全を確保する手段が求められている。モバイルウォレットやeコマースなどにおける安全かつ快適な認証システムを各国の金融機関に提供しているジェムアルト社によるセミナーでは、同社のオンラインセキュリティソリューション「Ezio Assurance Hub」「Ezio Mobile」を例に、普段は生体情報やユーザーの振る舞いを元に簡易な認証を行い、必要な場合のみ強力な認証を要求するシステムなど、これからのモバイルデバイスによる個人認証の方向性が語られた。

明るい未来を想起させる接客ロボットたち

昨今、銀行の受付や窓口業務をロボットが担当する事例が増えている。会場でも、多くのブースでロボットたちが来場者とコミュニケーションを取る姿を見ることができた。富士ソフトの「PALRO(パルロ)」は、非常に高性能なコミュニケーションロボットとして、すでに各地の金融機関に導入されつつあるという。IBM Watsonに対応したタケロボのマスコットロボット「Robocot(ロボコット)」は、比較的低価格で気軽に導入できる小型ロボットで、今回のFITでは銀行向けに改造された「ロボコットB」が出展されていた(タケロボのブースのみならず、他社ブースでも強い存在感を放っていた)。

こうしたロボットたちは、集客やリピーターの獲得、難しいサービスの案内や説明に役立つことだろう。インターネットバンキングやモバイルバンキングが台頭する時代だからこそ、「店舗」という空間の付加価値を高めるために、金融機関におけるロボット活用は今後、大きな強みになるかもしれない。

また、ロボットと切り離せないキーワードにAIがある。単純に「ロボットにAIを搭載する」といった話ではなく、今やあらゆるシステムにAIが組み込まれ、様々な分析や自動処理を担当するのは当たり前になりつつある。NTTソフトウェアのブースでは、金融AI技術によるフロント業務の効率化に大きな注目が集まっていた。例えばコールセンターでのAI活用例として、同社の音声ビッグデータソリューション「ForeSight Voice Mining®」の事例が展示されていた。このサービスでは、オペレーターと会話する顧客の「声」の感情分析により、顧客満足度を高めることが期待できるが、この分析のために独自のAIが活用されているという。
今後、膨大なデータを効率よく管理・運用することが求められる金融機関においては、AIによる処理の自動化は不可欠となっていくだろう。人間をサポートするための高度な金融AIの進化からも目が離せない。

タケロボの提供する「ロボコットB」は、銀行での接客業務に特化した廉価なロボットだ。

迫り来る多様化の波に対応するためには、フィンテックの力が不可欠

異業種の参入や法規制の変化、地方の人口減などにより、従来型の金融ビジネスの形が大きく変わろうとしている現在、各金融機関は今まで以上に「自社の強み」を明確化し、より活かす方向に進んでいくことが求められる。テクノロジーはそのための武器であり、まずは各社の戦略ありきで、それに沿ったソリューションを選択していくことになるだろう。

一方で出展側、ソリューションを提供する側にとっても、フィンテックの急速な発展と、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスの進化により、従来型の画一的なサービスではなく、企業一社一社、利用者一人ひとりに向けた多様な対応が求められていることがうかがえる。フィンテックは、多様化するニーズを満たすだけのポテンシャルを秘めており、実際にサービスやソリューション自体も細分化が進んでいる。その傾向がより鮮明になったのが、今回のFIT2016の光景と言えそうだ。

ライタープロフィール

ライター:上野 俊一
ゲーム雑誌編集者、音楽制作雑誌編集者、VR雑誌編集者、フリーライターを経験。特にデジタルエンタテインメント分野に詳しい。


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