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インタビュー 
大同特殊鋼健康保険組合

特定保健指導対象者ゼロを目指す
大同特殊鋼健康保険組合における重症化予防の取り組み

医療費や各種給付金を支給すると同時に、健康づくりを支援する保健事業を推進している健保組合において、データ活用を通じたさまざまな先駆的な取り組みを行っているのが大同特殊鋼健康保険組合(以下、大同健保)だ。今回は、そんな大同健保の取り組みや東芝デジタルソリューションズ株式会社(以下、東芝)の重症化予防ソリューション活用の背景や効果などについてお話を伺った。

“すまいるケンポ”とは
大同健保の愛称として2007年に加入者の応募106点から選ばれたもの。「加入者みなさまの 活き活きとした健康な笑顔を支える存在であり続ける」という思いが込めれている。

大同特殊鋼健康保険組合様

(左から)事務長 三輪 博志氏、課長/健康経営エキスパートアドバイザー 森山 薫氏、常務理事 松浦 次郎氏

積極的な情報活用に特徴のある大同健保

大同健保は、大同特殊鋼株式会社を母体とした単一健保で1936年に設立され、現在は47の事業所を有し名古屋市熱田区に健保会館を構え加入者は2万人を超える。事業所の7割ほどが東海地区に集中しているという。

森山氏:
「事業所は工場が主体ですが医療機関(社会医療法人宏潤会)も加入しています。地域的かつグループ間の連携により加入者の健康に関する情報が共有しやすいこともひとつの特徴です。また、数十年前から健康管理システムを導入し生活習慣病の改善を目的として、積極的な情報活用に取り組んできました」

具体的には、1999年から加入者の健康診断データをもとに、健康管理強化や健康増進に向けた健康管理システム「COSY」の運用を開始した。データヘルス計画がスタートした2015年よりも前から、効率的な保健事業を実施するためのビッグデータとして健診結果を活用し、保健事業を推進する基盤づくりができていた。

森山薫氏

加入者の意識改革を促すための取り組み

大同健保が取り組む保健事業では、重症化予防が大きな柱で、加入者の意識改革につながる活動への取り組みを積極的に行っている。

森山氏:
「保健師のいない当健保では、当然ですが直接的な医療アドバイスはできません。自身の健康状態をどう気づかせるのかという事業展開が健保としての重要な柱になります。また重症化予防については、被扶養者の健康診断の受診率をいかに高めていくかが重要で、被扶養者の特定健診受診率を80%ぐらいまで高めていきたいです。特に被扶養者の健康管理は健保が主体となって行っていることを十分に知ってもらったうえで、次のステップとなる重症化予防の施策につなげたいと考えています」

医療費適正化という観点では、前期高齢者対策として、健康診断とは違う視点で生活習慣や健康状態に関するアンケートを実施し、被扶養者に対して電話指導を実施している。

松浦氏:
「60歳以上の被扶養者に対し65歳到達前に健康な体作りを促すために委託業者による電話保健指導を3年前から導入しています。高齢者の仲間入りした後も健康で活き活きとした生活を送って頂くためです。加えて、前期高齢者の医療費は納付金に大きく影響しますから一挙両得です。また、東芝の分析を活用してメタボ予備軍を含め40歳到達前に保健指導を強化することで特定保健指導対象者ゼロを究極の目標に据えています」

2018年2月には「健康経営優良法人2018」に大同特殊鋼株式会社が認定され、コラボヘルスにも積極的に取り組んでいる。また、女性に特化した健診や、健診受診・健康目標の達成度によりポイント付与されるインセンティブ制度、生活習慣病に影響する歯科予防など、さまざまな保健事業を行っている。

松浦次郎氏

松浦氏:
「私が長年関わってきた労働組合と一緒で、現場目線で保健事業を考えています。お預かりした保険料を加入者の健康を守るために使っていくという意識を持って事業を推進しています」

東芝が手掛ける重症化予防ソリューション

健保という立場から、事業の中心は加入者への意識改革を促す活動となっているが、その施策立案のためには加入者の健康状態に関するしっかりとした分析が必要だ。そこで活用されているのが、東芝が手掛けるハイリスク者抽出のための分析を中心とした重症化予防ソリューションだ。

森山氏:
「第一期データヘルス計画の際に課題を見える化するにあたり、健診結果からは課題を見つけられているものの、誰が重症化しているのか判断が難しく、また健診値とレセプトの疾病名との突合性が非常に悪く、レセプトの主病分配に対してはいかがなものかという疑問がありました」

実は当初は健診結果とレセプトとの相関を見ることには懐疑的な面もあった。

森山氏:
「すでに健診結果がそろっており、問診で服薬もわかっていたため、レセプト情報と突合する意味があるのかという議論があったのは正直なところです。しかし、当初、重症化のなかでも分かりやすい糖尿病に特化していた東芝で分析してもらったところ、治療放置し続けている人、医療機関にかかっているのに悪化している人など、驚きの成果が示されたのです」

分析の結果を受け、糖尿病に関する保健事業を加速させることを決断した松浦氏。まずは母体の勤務者を中心にHbA1cの値が6.5以上の人を抽出し、産業医も交えてセミナーを実施。2年目からは全加入事業所に対して同様の事業を展開し、3年あまりで400名ほどの対象者の75%以上をセミナー参加に導くことができ、多くの人に気づきを与えるきっかけづくりにつながったという。セミナー後も定期的にアンケートを行い、行動変容の意識に変化がないかを確認しながら継続的に電話指導を実施。通院していても改善がみられないケースでは、専門医を紹介するなど、加入者一人ひとりに寄り添った取り組みを行っている。

森山氏:
「血糖コントロールーセミナーを開催した翌年の数字は間違いなく改善するという結果も出てきました。明らかに上昇していた数値が止まる、または下がるという効果が発現しています。参加頂いた300名を超える方々に、このセミナーを通じて『気づき』を与えることができたのはとても大きな効果です」

そして第二期データヘルス計画のタイミングで、現状把握を目的に、糖尿病はもちろん、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病に関する分析を改めて東芝に委託。さらに、交替勤務者が多いためバリウムによる検診が難しく、受診率が低い状況が続いていた胃がん検診については、2015年からリスク分析のABC検診に切り替え、ピロリ菌除菌や胃内視鏡への導きを可視化すべく、東芝の分析を活用し現状把握を実施している。

森山氏:
「東芝での分析により潜在的なハイリスク者や予備軍が明らかになり、重症化の判定がしっかり行えるようになりました。健診結果だけでなく治療状況も踏まえた経年の傾向が見える化できた部分は大きいと評価しています」

今後の動き

今後については、信頼性の高い東芝の分析を用いて、効果的かつ実効性のある最適な保健事業の在り方を模索していき、これまで以上に「ひとへの投資で好循環の創造」に繋げていきたいという。

松浦氏:
「『ひとへの投資』は健康への投資です。健康経営の理念のとおり、健康な心身はパフォーマンスを高め、生産性の向上が期待でき企業業績に反映され利益が生まれます。この生み出された利益を更にひとへ投資する好循環に繋げることが事業主と保険者の使命だと思っています。保健事業に終着点はありませんが、定年を迎え国保などに移る時には、責任をもって健康な状態で送り出すことができれば健康寿命の延伸、医療費の削減に繋がると思います。今後も詳細な分析をおこなって頂いた東芝に協力頂きデータ分析に基づく保健事業を進化させたいと思います」

ライタープロフィール

フリーライター:てんとまる社 酒井 洋和

福祉・保険行政ソリューション ALWAYS ICC

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