コラム

地域包括ケアひとつばなし(1)

2019.3.29

「地域包括ケアとは何?」


超高齢化社会に求められる介護の在り方として、保険者である自治体は、その地域の実情や特性に合った「地域包括ケアシステム」の推進・深化が求められている。
本コラムでは、『地域包括ケアシステムの推進・深化のために、ICTベンダーとして何ができるのか?』について同分野における約20年の経験を踏まえお伝えしていきたい。

国が描く地域包括ケアのイメージ

地域包括ケアシステムとは、2025年を目途に国が推し進める政策であり、地域医療、介護、介護予防、生活支援、住まいのサービスを総動員し、高齢者本人がなるべく病院にお世話にならず、自宅や施設といった住み慣れた場所で最期まで自分らしく暮らし続ける、という社会システムの理念だ。人としての尊厳やそれぞれの満足感を維持しながら、人生を全うすることが重要視されている。

高齢者の住まいを、病院や介護施設、在宅系サービス及び生活支援サービスなどが取り囲んでいる絵を見たことがあるだろう。この絵では、住宅を中心に多職種の従事者たちが緊密に連携しながら包括的なケアを行い、最期を迎える日まで安心できる環境づくりを進める、という理想像を表している。

これを、高齢者のライフステージ(心身状態等)の変化という観点でとらえるとどうなるのだろうか?

高齢者のライフステージ4つ

高齢者の場合、介護が必要ない状態から病気や機能低下などによって徐々に介助が必要となり、さらに悪化が進むと、要介護認定を受け介護サービスのお世話が必要となっていく。また、疾病やケガの症状が悪くなり入院すると、退院後は医療と介護の緊密連携による在宅医療も必要となる。

このような状態の変遷を4つのライフステージ(シーン)ととらえ、「疾病予防→介護予防→介護→在宅医療」と分けることができる。この4つのライフステージに注目し地域包括ケアシステムをもう少しブレイクダウンしてみると、高齢者それぞれのシーン応じたケアシステムの必要性が見えてきた。

高齢者のライフステージから見える地域包括ケア

高齢者のライフステージの変遷を見ると、それぞれのシーンでサポートする関係者は異なり、また、それぞれの関係者間においても、そのシーンにあわせた連携の方法が異なる。

この「関係者」というのには、医療・介護サービスに従事する現場の人以外に住民団体や行政関係者も含まれるわけだが、そもそも地域包括ケアシステムのベースを作り上げる役割のある保険者(市区町村)は「関係者間の連携」のつなぎ役としても重要な役割がある。

保険者は、地域包括ケアシステムの目的を達成するため地域全体をマネジメントすることが求められているわけだが、マネジメント(経営)においては目標を設定、実行し、見直していく、PDCAサイクルを回す中心的存在となる。行政には、高齢者の各ライフステージを支える部門がそれぞれあり、各目的に応じた業務を管轄している。例えば疾病予防であれば健康増進部門、介護予防や在宅医療(医療・介護連携)は高齢者福祉部門、介護保険事業は介護保険部門といった具合に分かれている。

それゆえに地域マネジメントを定着させるためには、介護保険制度の保険者が行政(自治体)各部門の目的をも共有し部門間を連携できるようなPDCAサイクルを回していく、という今までの自治体業務には例のない高度な業務に進化させる必要があるわけだ。

健全な地域包括ケアシステムとして「健康寿命の延伸」を目指すには、介護事業所等のサービス質の向上が最重要テーマであり、その先には社会コストの適正化、ひいては持続可能な社会保障システムの実現へとつながる。

その実現の第一歩として、行政と医療・介護現場が緊密にスクラムを組み最善策を試行錯誤していくことが不可欠である。分かっていながら試行段階で様子見している自治体が多いのが実情だ。

次回は、地域マネジメントの実情について、その概要をお話ししたいと思う。