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株式会社ゆりかもめ 様

 

クラウド技術により高機能でも低コスト、“乗り心地”も考慮、様々なシミレーションが簡単な運転曲線作成サービス

列車のダイヤを検討する上で基準となる運転曲線(ランカーブ)の作成をクラウドサービスにより運用を開始。
これまで困難であった走行シミュレーションを数分で行い、最短時間を求めるだけでなく加速とブレーキによる乗り心地や、消費電力の違いなど、様々な視点で走行パターンを検討できるようになった。

導入前
運転曲線作成は、手書きで行っていたため専門知識と多大な労力が必要で、1枚の作成でも数時間に及び「様々なシミュレーション」が困難。また、最終的な作図は、限られた期間の中で、都度データ投入から開始していたため、大きな負担となる。

↓

導入後
長年切望していた運転曲線作成のシステム化を、クラウドサービスを利用することにより安価な月額費用で実現し、新たな視点から様々な走行シミュレーションを行う。特殊な速度制限を設けた運用の検討や、車両編成の変更や新型車両の導入など、経営にも重要な検討が可能になる。

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導入の背景

手作業による運転曲線作成に多くの時間と手間が必要に

安全な運転と快適な乗り心地を実現するゴムタイヤ式AGT(Automated Guideway Transit)※1を採用し、専用の高架軌道を自動制御しながら無人運転走行する新交通システムとして1995年に開業した株式会社ゆりかもめ。オフィスビルが並ぶ汐留地区に近い新橋からお台場、国際展示場(東京ビッグサイト)を経由し、有明までの路線の運行を始め、2006年には豊洲にまで路線を延伸、現在は16の駅でおよそ15kmを運行している。ビジネスマンが利用する通勤の足としてだけでなく、東京湾岸エリアへ観光に向かう人の移動手段としても利用されている。2014年春に新型車両「7300系」の導入を進めており、車いすスペースの増設やロングシート採用など、多くの乗客の利便性を向上させるための新たな施策にも積極的に取り組んでいる状況だ。
同社は開業以来、手書き・手引きによる運転曲線の作成を行ってきた。運転曲線とは、様々な諸条件を加味することで列車の加速と減速の状況を表したもので、運行ダイヤを作成するためには欠かすことはできない。この運転曲線を手作業で作成するには多くの時間と手間が必要となっており、長い間システム化を切望し続けてきたという経緯がある。

※1 AGT(Automated Guideway Transit)/ 自動運転により専用軌道を案内軌条に従って走行する中量輸送の旅客輸送システム。騒音、振動が少なく、摩擦力を生かした急勾配の運行が可能。

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導入の経緯

莫大な投資が必要だったために叶わないシステム化
株式会社ゆりかもめ 運輸部長(運転管理者)廣藤 信行 氏の写真運輸部長(運転管理者)
廣藤 信行 氏

「これまでは、東京都交通局が保有している運行計画表の作成システムをお借りして運転曲線の作成を行ってきましたが、社員は自社によるシステム化を切望していたのです」。しかし、現実的にシステムを導入するには数千万以上の投資が必要になるため、自社での導入が難しい状況だったと運輸部長(運転管理者)廣藤 信行氏は当時を振り返る。
一般の鉄道会社同様、運転曲線を作成するためには様々な情報が必要だ。具体的には、勾配や曲線、駅間のキロ程など地上側のデータはもちろん、車両の重量やモータ出力などの構造データから編成車両数、定員など走行する車両に関するデータまで、様々なデータを用いて運転曲線を作成していくが、その膨大なデータを入力するだけでも2ケ月あまりの時間を要していた。「ダイヤ作成に関わるメンバーは3名、運転曲線の作成には個人差があり、センスも問われます。ノッチ※2 位置の設定などによって滑らかな曲線が描けないことがあるなど、時には6ケ月程度の作成期間が必要になるケースもあるのです」と語るのは運輸部 運輸課 運輸課長の藤原 敬介氏だ。しかも、システムを間借りしていたため、情報管理の観点から入力した情報をシステム内に保管しておくことができず、データを印字して持ち帰る必要があった。「作成した運転曲線を自社に持ち帰って検証し、それを修正するために再度データ入力をお願することも。運転曲線を作成することに多くの時間と手間を割かざるを得なかったのです」(藤原氏)。
株式会社ゆりかもめ 運輸部 運輸課 運輸課長 藤原 敬介 氏の写真運輸部 運輸課 運輸課長
藤原 敬介 氏
以前からシステム化を切望していたものの、導入は難しい状況が続いていた同社だったが、突然に課題が解決する可能性がでてきた。それが、クラウドサービスを利用することで運行管理が可能になる、東芝と東芝ソリューションが共同開発した「鉄道輸送計画ICTソリューションSaaS (TrueLine®)」だった。

※2 ノッチ/主幹制御装置のハンドルを操作するときの刻み。加速、制動の操作にステップがあり、作用させる力により刻みの段数がある。

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導入のポイント

安価な月額費用でシステム運用できる“クラウド”という選択肢
株式会社ゆりかもめ 安全推進室安全係 主任運輸部運輸課運転係 兼務 羽金 克也 氏の写真安全推進室安全係 主任
運輸部運輸課運転係 兼務
羽金 克也 氏

「これまで手が届かなかった仕組みが、クラウドを利用したシステムによって実現可能になることが分かったのです」と、安全推進室安全係 主任 運輸部運輸課運転係 兼務の羽金 克也氏はそのきっかけを振り返る。「自社導入では数千万円は下らない高度な運転曲線作成システムが、わずか数万円程度の月額費用で活用できることに驚きました。この金額であれば当社でも導入できますし、費用対効果も十分出せると考えたのです」。
クラウドならではの様々なメリットも導入の大きな後押しになったと藤原氏。「固定資産としてシステムを保有する必要がなく、通信費だけで高度な仕組みが安価に活用できるのは大きなポイントです」。また、サービス側で強固なセキュリティが実装されており、自社で大きな投資をすることなくセキュアな環境が手に入る点も藤原氏は同時に評価したという。
他にも、クラウドだからこそのメリットを羽金氏は強調する。「コンピュータの進化が加速している今、5年も経てばシステムは陳腐化してしまうもの。しかし、クラウドであれば常に新しい仕組みが継続的に実装されていきます。しかも、いろんな鉄道会社のプラットフォームとしてユーザーが増えていくことで、最新のノウハウを月額利用の中で手に入れることが可能です。この期待値は非常に大きい」。
また、実際の利用シーンを具体的に想定した形での提案など、鉄道に関する東芝ソリューションの豊富な知識も高く評価した廣藤氏。「鉄道のことをよく理解しているという印象を受けました。その点は大変心強かった」。
これらの点が高く評価され、ダイヤ作成の基礎データとなる運転曲線を作成するためのインフラとして、「鉄道輸送計画ICTソリューションSaaS(TrueLine®)」が採用されることになる。

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導入の効果

自由自在に操作できる使いやすさ、様々なシミュレーションが可能に

2013年6月に導入が決定し、データの整理からシステムへの投入におよそ3ヶ月をかけた後、2013年10月より稼働を開始した同社。そのサービスを利用することで、これまで困難だった様々なシミュレーションが実施できる環境が整ったことになる。
「以前はExcelで計算しながらシートを作成し、それを手書きでプロットしていくという作業を繰り返し行っていました。今では自動的に運転曲線がプロットされ、例えばノッチ※2 を変更したい任意の点をクリックしたりドラッグしたりするだけで自由自在に変更することが可能です。以前とは比べ物にならない、次元のまったく違う操作感です」と羽金氏は高く評価する。以前は半日かけてプロットを行い、そこから変更を加えようとすると再度計算をし直す必要があったが、現在はわずか数秒単位でシミュレーションを行うことが可能になっている。
「シミュレーション結果はスピーディで、クラウドの性能・品質を実感しています。データのバックアップは東芝ソリューションのデータセンター側ですので、我々は汎用的なPCだけあれば利用可能です」(羽金氏)。場所や時間を意識することなく活用できる点も、作業効率の向上に大きく貢献している。
2014年春に導入予定の新型車両7300系の写真2014年春に導入予定の新型車両7300系 また、これまで時間や手間の面から試みることが難しかった、新たな視点でのシミュレーションができるようになった点も大きいと藤原氏は力説する。「例えば消費電力量を計算してCSRの観点から環境面での試算をしたり、お客様の乗り心地を考慮したり、新たな視点でのシミュレーションが可能になっています」。他にも、新型車両と既存車両との比較が容易になったことで、車両導入の際の参考データとしても活用できるという。「様々な視点でのシミュレーションによって、ゆりかもめの急行運転のような将来設計の視点で活用したい」と廣藤氏は大きな期待を寄せている。

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将来展望

様々な鉄道会社のプラットフォームへ成長することを期待
株式会社ゆりかもめ 様 運輸部長(運転管理者)廣藤 信行 氏(左)、運輸部 運輸課 運輸課長 藤原 敬介 氏(中央)、安全推進室安全係 主任運輸部運輸課運転係 兼務 羽金 克也 氏(右)の写真株式会社ゆりかもめ 様
運輸部長(運転管理者)廣藤 信行 氏(左)
運輸部 運輸課 運輸課長 藤原 敬介 氏(中央)
安全推進室安全係 主任 運輸部運輸課運転係 兼務 羽金 克也 氏(右)

初めてクラウド導入に踏み込んだ同社。「東芝ソリューションは、当社の要望に対してできることから改善していただいており、その対応力とサービスの柔軟性に満足しています」(羽金氏)。
「鉄道輸送計画ICTソリューションSaaS (TrueLine®)」が多くの鉄道会社のインフラになっていけば、新たな機能やノウハウも適宜利用できるようになるなど、様々な恩恵を受けることが可能になるはずです。このソリューションが、今後の会社経営にも大きく貢献していくでしょう」と廣藤氏は期待を寄せる。
また、現在は運転曲線作成サービスのみ利用しているが、自動進路制御装置であるPRC(Programmed Route Control)※3をはじめ、駅務改札システムや総合的な設備管理との連携が可能になれば、基本ダイヤ作成サービスなど他のサービスも合わせて検討していきたい考えだ。

東芝ソリューションは東芝と共同で、鉄道事業者に向けて、「基本ダイヤ作成サービス」、「乗務員/車掌運用作成サービス」、「車両割当サービス」、「構内作業計画サービス」、「GIS運行監視サービス」を含めたトータルな輸送計画システムを提案していく。海外の鉄道事業者向けにも利用できるよう、多言語対応していることで、クラウドの特長を活かし、海外鉄道事業者に日本の優れた鉄道運行ノウハウを低価格で提供する。全世界の鉄道の安定輸送・定時運行を実現し、省エネで、かつ、地球環境に優しい鉄道事業に向けて貢献していく。

※3 自動進路制御装置;PRC(Programmed Route Control)
運行ダイヤの情報と列車の在線情報から、信号・転轍機の動作を判断し、動作を指示する装置。

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お客様の情報

ゆりもの写真2
名称:
株式会社ゆりかもめ
設立:
1988年4月25日
代表者:
代表取締役社長 宮川 昭
本社所在地:
東京都江東区有明3丁目13番1号
事業概要:
新橋から豊洲までの区間を運行する東京臨海新交通臨海線を運営する鉄道会社。
利用客数平均107,000人/日(平成24年度)。
専用の高架軌道を自動制御しながら走行する新交通システムを採用、乗客の利便性向上に向けた様々な施策を展開。
導入プロダクト:
鉄道輸送計画システムICTソリューションSaaS(TrueLine®)
URL:
http://www.yurikamome.co.jp別ウィンドウで開きます

本記事は2013年9月30日に取材した内容をもとに構成しています。記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。

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