ビジョンから実践へ。東芝の「次世代ものづくりソリューション」最前線

製造現場の次世代化をトータルサポート/田島 正憲

デジタル情報の「水平結合」と「垂直結合」でバリューチェーン全体を最適化し、「ものづくり」から「ものづかい(製品の使用曲面)」に至るあらゆるデータを同期させることで、マスカスタマイゼーションにも対応した柔軟なものづくりや、サービスの高付加価値化、新たなビジネスモデルの構築を実現していく。この基本的なフレームワークに基づいて、東芝は「次世代ものづくりソリューション」の提供をスタートさせました。その第一弾として2016年4月に リリースした、つながる工場の見える化ソリューション『Meister Visualizer』、ものづくりBigData分析・活用ソリューション『Meister Analysis』、製造業向けIoTソリューション『Meister IoT』、そしてそれらと連携して提供する、ものづくり情報プラットフォーム『Meister DigitalTwin』 について紹介します。

次世代ものづくりのキーとなる三つのレイヤー

 日本の製造業の将来を見据えながら、ものづくりの次世代化を段階的に推進していくというビジョンの下、東芝ではまず製造現場のさらなる生産性向上と品質改善に力点を置いてソリューションの開発を進めてきました。

図1 三つのレイヤーで次世代ものづくりを実現

 ソリューションの開発にあたり、「情報収集」「情報蓄積」「情報活用」の三つのレイヤーで、次世代化に必要な要件を満たすことが重要であると捉えています(図1)。

 「情報収集」のレイヤーでは、工場のあらゆる機器・製品・建屋のほか、そこで働く人たちに関する多種多様なデータを、センサーなどでリアルタイムに収集・処理する環境の構築が必要です。

 「情報蓄積」のレイヤーでは、収集した膨大な現場のデータを蓄積し、ERP※1やMES※2といったビジネスシステムからのデータを組み合わせ、製造現場などで起きていることをデジタル空間上に正確に再現することが求められます。

 「情報活用」のレイヤーでは、デジタル空間に再現された製造関連データを利用して品質や生産性の継続的な改善活動を支援するなど、収集したデータを、お客さまのさらなる競争力向上に結びつく具体的価値に変換することが求められます。

  • ※1 ERP:Enterprise Resource Planning
  • ※2 MES:Manufacturing Execution System

ものづくりの次世代化を阻む、製造現場の実情

 ところが、各レイヤーにおける要件を従来の製造現場で実現することは簡単ではありません。

 例えば「情報収集」のレイヤーでは、既に稼働しているレガシーシステムの存在や、通信プロトコルが異なる機器同士の接続などが大きな課題となります。また時系列で収集される膨大なセンサーデータを、いかに効率良く運用管理するかといった点にも留意しなければなりません。

 「情報蓄積」のレイヤーでは、サイロ化された製造プロセスが、次世代化に向けての障壁になります。局所最適化された各プロセスから得られるデータを単に収集するだけでは、全体最適化や新たな目標達成を図るには不十分です。各プロセスをシームレスにつなぎ、個々のデータがどのような状況で生成され、他のどんなデータと関連しているのかまで詳細に把握できる仕組みが必要となります。

 このような仕組みで得られたデータを目的に応じて有効に活用することが、「情報活用」のレイヤーでの課題となります。統合されるデータが膨大になればなるほど、その相関関係は驚くほど多様で複雑になります。ここでは、正確かつ詳細なビッグデータ分析を行って、工場内の課題解決や目的に見合った知見を迅速に引き出すことが求められます。また、刻々と変化する現場の情報をリアルタイムに可視化し、タイムリーな対応や意思決定が行えるようにすることも求められています。

ものづくり情報プラットフォームを中核に、
情報収集・蓄積・活用をトータルサポート

 東芝の次世代ものづくりソリューションは、こうした「情報収集」「情報蓄積」の課題を解決すると同時に、お客さまの目的に応じた「情報活用」の実現までをトータルに提供します。これら三つのレイヤーを一気通貫で支援するソリューションで、次世代化への第一歩をスムーズに踏み出すことができるのが最大の魅力です。そこには、ものづくりの現場を知り尽くし、卓越したIoT※3のノウハウを製造現場に最適な形で落とし込むことができる、東芝ならではの強みが発揮されています。

 次世代ものづくりの起点となる「情報収集」の環境実現には、製造業向けIoTソリューション『Meister IoT』を提供します。製造現場にあるさまざまな機器に、外付け、後付けできるIoTデバイスやゲートウェイなどの製品群を提供。これにより、機器をCloud Ready化しつつ、データの全てをクラウドで処理するのではなく、より現場に近いところでリアルタイム・低遅延に効率的に処理するエッジコンピューティングを実現します。あわせて、社会インフラにおける遠隔監視のノウハウや、製造現場でIoTを活用するノウハウをメソドロジーに体系化し、製造現場へのIoT導入をサポートするコンサルティングサービスを提供します。

 「情報蓄積」環境の最適化には、製造プロセスのあらゆる情報を統合する、ものづくり情報プラットフォーム『Meister DigitalTwin』を提供します。これにはエネルギー分野で実績ある、ビッグデータ向けスケールアウト型データベース『GridDB』を中心に、新たに開発した次世代ものづくりのコアテクノロジーと、豊富な東芝のものづくりの経験から導き出した汎用的なデータモデルが実装されています。「ものづくり」から「ものづかい」までの情報をデジタル空間上に再現し、統合的に管理することで、バリューチェーン全体の最適化につなげることができる、次世代ものづくりの根幹となる情報プラットフォームです。

 「情報活用」に対しては、つながる工場の見える化ソリューション『Meister Visualizer』と、ものづくりBigData分析・活用ソリューション『Meister Analysis』を提供します。

 Meister Visualizerは、Meister DigitalTwinを核に、東芝独自のリアルタイムデータ処理技術とユーザーインターフェース技術を連携させたものです。刻々と蓄積されるデータを継続的に解析し、製造現場の今をリアルタイムに可視化。工場単体ではもちろん、IoTでつながる全国、全世界の工場の生産状況や品質情報を精緻に把握することで、経営者や管理者の気づきを誘発し、生産計画をグローバル規模で最適化するなど、リアルタイム型のマネジメントをサポートします。

図2 各ソリューションのポイント

 Meister Analysisには、オムロン様の草津事業所や東芝の四日市工場で既に実績のある、東芝独自のビッグデータ分析技術「事象パターン分析」の手法を導入(参照記事)。「品質要因分析」「故障要因分析」という二つのテンプレートで、Meister DigitalTwinに蓄積されたデータ同士の複雑な相関関係を分析し、熟練の技術者でも気づかなかった事実や新たな課題を見いだし、これを現場での解決に役立てます。これまでの経験値を見える化し、問題が起こった場合に推定される不良や故障の要因を分析した結果を新たな形式知として蓄積することで、一層進んだ品質や生産性の継続的な向上につなげることが可能です(図2)。

 世界のものづくりが加速度的に進化する中、東芝は情報収集・蓄積・活用をトータルにサポートする次世代ものづくりソリューションの提供を通じて、日本のものづくりの変革をさらに力強く推進していくとともに、ものづくりの変革を目指すお客さまのニーズを満たす最適なソリューションの開発に今後も取り組んでいきます。東芝の挑戦はまだ始まったばかりです。

  • ※3 IoT:Internet of Things
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