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お客さまインタビュー

アナリティクスAI「SATLYS™(サトリス)」で目指す
廃棄物処理施設における燃焼状態判定の自動化への挑戦

カンパニー:JFEエンジニアリング株式会社 × ソリューション:アナリティクスAI「SATLYS™(サトリス)」

 JFEグループの総合エンジニアリング会社として、エネルギー創出、インフラ整備、システム開発、そしてリサイクル処理などの事業を国内外に提供しているJFEエンジニアリング株式会社。同社では、主力事業の一つである廃棄物処理施設をより効率的かつ安定的に運用するために、AIの活用を進めている。同施設の安定運用の肝とも言える燃焼状態の判定の仕組みに採用されたのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供するアナリティクスAI 「SATLYS™(サトリス)」だ。

安全、安定的に廃棄物処理施設を操業するため、運転員が制御室に常駐し、その1つとして燃焼状態を監視しているが、その適切な判断はベテラン運転員に頼っていることが多い。そのノウハウをAIで補うべく、検討を開始した。

将来の廃棄物処理施設の運転自動化の強化に向けて、AIにより燃焼状態を判定する仕組みを構築。ベテランの運転員が判断している燃焼状態を、AIで判断し、燃焼の良し悪しを数値表示し、その精度を高めている。

導入の背景

民間委託が進む自治体の環境プラント運営

小嶋 浩史 氏

環境本部
開発グループ 経営スタッフ

小嶋 浩史氏

 廃棄物処理施設や水処理プラント、パイプラインや発電など環境・エネルギープラントの設計・建設からオペレーション・メンテナンスに加え、社会インフラの整備、リサイクル・発電事業などを国内外に展開しているJFEエンジニアリング株式会社。同社は、2002年の川崎製鉄と日本鋼管との経営統合により設立されたJFEホールディングスの事業会社の1社で、2003年に発足した総合エンジニアリング会社である。同社は鉄鋼業・造船業を源流として培った技術を生かし、お客さまのニーズに応じたトータルソリューションを提案、現在約12カ国18拠点で、海外事業の拡大に注力しており、発展途上国の成長にも大きく貢献している。

 このように、事業提案から建設、運営までの一貫サービスも提供している同社では、廃棄物処理施設などの環境プラントにおいて、「近年は建設に加え、運営管理までを任されることが増えています」と環境本部 開発グループ 経営スタッフ 小嶋浩史氏は説明する。自治体が民間ノウハウの活用を拡大する動きが活発化していることがその背景にある。廃棄物処理施設などの環境プラントは特に高度な技術を使用しているため、安心・安定・安全に加え効率的に運営するには、総合的なエンジニアリング能力が必要となる。そのため、同社では運営管理まで担当する案件が増えているのだ。

導入の経緯

より効率的で安定的な仕組みを作りたい

 廃棄物処理施設の運営は長期に及ぶ。「建設後、20年程度の長期運営を任されます」と小嶋氏は語る。競合他社もこの分野には力を入れており、運営力の強化は不可欠である。そして今回、運営力を高める施策の1つとして浮上したのが、ちょうど世間でも話題を集めていたAIを活用したソリューションである。

 近年、廃棄物処理施設においてはゴミを燃やすことで発生した熱を電気に変える発電設備も有する施設が多く、同社が運営している施設もこのタイプが主体で、安全、安定、安心に運営するために、中央制御室で運転員が燃焼状態を監視している。しかしその状態を判断するには経験が必要で、誰もが簡単にできるわけではない。「5年前より現場に赴き、何が大変なのか、運転員の意見を聞きました。その1つが、ゴミの燃焼状態の監視と改善操作が必要かどうかの判定です。その手助けができるような仕組みがあれば現場が楽になるのではと考えました」と小嶋氏は明かす。

小林 義孝 氏

技術本部 ICTセンター
AI・ビッグデータ活用推進部
グループマネージャー

小林 義孝氏

 2014年9月に開設したリモートサービスセンター(RSC)という廃棄物処理施設に特化した遠隔監視の仕組みはその1つ。同施設の効果は現場の集中制御室と同様の操作ができるようになったことだけではない。カメラで撮影された燃焼画像をはじめ、さまざまなデータをクラウドに蓄積し、AIの適用に向けた準備をしてきた。
「AIによる画像認識の事例も登場しており、効果も報告されていました。これを活用すれば、より安定的な操業に繋がるのではと考え、技術本部 ICTセンターに相談したのです」と小嶋氏は当時の様子を語る。

 環境本部からのこのような相談を受けたICTセンター AI・ビッグデータ活用推進部 グループマネージャーの小林義孝氏は「どのようなAIの仕組みを作れば環境本部の目的が実現できるのか、検討を始めることにしたのです」と語る。

導入のポイント

画像分析の精度と精度向上のための学習機構を評価

小山 建樹 氏

技術本部 ICTセンター
AI・ビッグデータ活用推進部長

小山 建樹氏

 ICTセンター側における、廃棄物処理施設へのAI導入の目的は大きく2つある。「1つ目はベテランのノウハウを機械に覚えさせること。2つ目は働き方改革につなげることです」と技術本部 ICTセンター AI・ビッグデータ活用推進部長 小山建樹氏は語る。先述したように燃焼状態の判定は非常に難しい。同社が運営している廃棄物処理施設の多くは一般ゴミが対象だが、例えば梅雨時期は燃えにくいなど季節によっても燃焼状態が変わるという。「ベテランの運転員でも、判断にバラツキがあったりする」と小嶋氏が言うように、オペレーション品質を向上するためには、ベテランのノウハウ、感覚で行っている判断を見える化する必要があり、AIの導入はその一助になる。さらに今後、運営管理する施設が増えていくことを考えると、ベテランの運転員が足りなくなることも想定される。だからこそ、早急にベテランのノウハウをAIに置き換えることが必要になるというわけだ。また、AIが得意な仕事はAIに任せ、人は人にしかできない仕事に携われるようになれば、業務が効率化され働き方改革にもつながる。

 複数のベンダーによる提案の中から、東芝のアナリティクスAI「SATLYS」を選んだ理由について、小林氏は「3つのポイントで比較検討した結果、他社よりも優れていました。まずは画像認識の精度。私たちが求めているAIは人間の目の替わりとなるものです。1枚の炎の画像を見て、これは正常な状態か、異常な状態かを分類させる実験を行いました。正常か異常かを大別した上で、それを複数の分類段階に判別してもらうのです。その精度が、『SATLYS』の場合精度は他社と比較してトップクラスの認識率だったのです」と語る。2つ目のポイントはエンジンの処理速度について。「今後、工場の数が増えてもそれに追随できる処理速度を有しているか検討しました。東芝のアーキテクチャーはその点についても全く問題がありませんでした」と小林氏。第3のポイントはメンテンナンスのしやすさである。「実はここが一番のポイントでした。AIのシステムは作って終わりではありません。より精度を上げるには、日々、学習させていく必要があります。その学習機構を効率化させる仕組みが秀逸だったのが東芝でした」(小林氏)

玉川 耕介 氏

技術本部 ICTセンター
AI・ビッグデータ活用推進部

玉川 耕介氏

 2017年11月から燃焼画像を分類するシステム開発プロジェクトが立ち上がった。プロジェクトマネジャーとして、AIシステムの設計を担当した技術本部 ICTセンター AI・ビッグデータ活用推進部の玉川耕介氏は「最も苦労したのは、品質保証がしっかりなされている従来までの情報システムに、条件によっては精度が変わる今回のような仕組みを1つに統合することでした。私たちも初めてのことですので、方法論から考える状態でした。しかし、東芝の方に相談したところ、真摯に応えてくださり、具体的な解決策を提案していただきました。おかげさまで無事、納期に間に合わせることができました。私たちの立場や考え方を親身になって理解してくれて、一緒になって進めて貰えたのは、とても嬉しかったです」と笑顔で語る。

導入の効果

燃焼判断の自動化に向けた第一歩が

 アプリケーションの構築と並行して、AIモデルの構築、学習エンジンの検証を行い、2018年4月より、数工場でAI画像分析が稼働した。今回のプロジェクトは、AIによる分析結果を見える化するフェーズ1、AIの分析精度を向上させるための、効率的・効果的な学習が可能な環境を構築するフェーズ2に分かれている。これまで同様、制御室には燃焼状態を監視する運転員が配置されており、AIの判定の見える化により運転員の判定業務を支援しており、ゆくゆくはAIの活用による自動運転を強化していくという。

 「現在のAIによる判別の精度は80%ぐらいで、人と比べるとまだまだです。私たちが目指しているのは、とにかく運転を最適化すること。運転員が操作するAIシステムのUIは、非常に使いやすいと現場からは好評です。今回、東芝のデザインセンターの方がプロジェクトに入ってアドバイスしてくださり、本当に助かりました。」と小山氏は語る。小嶋氏は「AIに対する考え方の違いはいろいろあり、これを埋めていくため、現場の人たちとさらにコミュニケーションを取っていくことも私たちの大切な仕事だと思います。今回、見やすく、確認しやすい画面にしていただき、現場に喜んで貰えて良かったです」と同調する。

将来の展望

AIの活用で他社との差別化を強化する

集合写真

(左から)小山 建樹氏、小嶋 浩史氏、小林 義孝氏、玉川 耕介氏

 「今後、新規案件は提案段階からAIによる燃焼画像解析の仕組みを入れ、受注につなげていきたい。そしてこのような仕組みで支援する工場を増やしていきたいですね」と小嶋氏。また、「今回のAI適用は廃棄物処理施設の事例でしたが、今年3月末に開設したグローバルリモートセンター(GRC)では、水処理施設、太陽光発電施設、バイオマス発電施設などのプラントの遠隔監視・操作を行っており、そこでもさまざまなビッグデータを蓄積しています。これらの施設においても、AIの活用が始まっていますので、近い将来、私たちは益々、付加価値の高い商品や施設を提供していけるようになると思います。」と将来について小山氏は熱く語った。東芝は今後もJFEエンジニアリングと共に最新技術を活用し、新しいことに挑戦。より良い社会を実現していくだろう。

SOLTION FOCUS

SATLYS™の概要

 東芝アナリティクスAI 「SATLYS™」は、東芝の「ものづくり」の実績から得た知見をAI技術に集大成し、高精度な識別、予測、要因推定、異常検知、故障予兆検知、行動推定などを実現します。
 今回のシステムでは、高度なAIモデルによる画像判定サービスに加え、複数工場への展開や日々精度向上を行うための効率的な学習機構も実現、SATLYSが役立っています。

この記事の内容は2018年8月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
JFEエンジニアリング株式会社
設立
2003年
代表者
代表取締役社長 大下 元
本社所在地
横浜本社 横浜市鶴見区末広町二丁目1番地
事業概要
エネルギー・環境分野や社会インフラ分野など、人々の生活と産業を支えるエンジニアリング事業を展開。
URL
http://www.jfe-eng.co.jp/

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