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お客さまインタビュー

新たな付加価値を生む、水処理遠隔監視サービス
世界に広がる、東芝のIoT

カンパニー:栗田工業株式会社× ソリューション:広域遠隔監視ソリューション
栗田工業株式会社 様

産業用水処理に関する装置・薬品事業を手掛けている栗田工業株式会社が、グローバルに提供する水処理薬品管理サービス「S.sensing®」。独自のセンサーを用いて水処理装置に投入する薬品の濃度や、水処理効率を自動制御するサービスである。このS.sensing®で用いられるセンシングデバイスから情報を収集し、情報共有のためのポータルサイト「S.sensing® WEB」を介して情報提供する水処理遠隔監視サービスの仕組みを構築したのが、株式会社東芝 インダストリアルICTソリューション社(以下、東芝)だ。

1990年代から取り組んできた水処理遠隔監視について、交換部品の入手困難性の増加やサーバーの保守切れなど、さまざまな課題が顕在化。海外市場への展開も含めて、新たな付加価値をお客さまに提供すべく、遠隔監視の仕組みを構築することに。
お客さまと情報共有できるポータルサイト「S.sensing® WEB」を構築し、東芝のUXD手法を用いたデザインによって直感的にわかりやすい情報提供が可能となった。コストを抑えながらグローバルな水処理薬品管理サービスのIoTインフラ構築に成功した。
導入の背景

パイオニアとして取り組んできた遠隔監視

 「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念に、産業用水処理のリーディングカンパニーとしてグローバル展開している栗田工業株式会社。ボイラや冷却水などに用いられる水処理薬品事業をはじめ、排水回収や用水処理といった水処理装置事業、それらのメンテナンス・サービス事業の3つの領域に注力。企業ビジョンとして掲げる「水と環境の先進的マネジメント企業」を実現するべく、水の新しい機能、新しい価値を追求し続けている。現在は、グループ会社および関係会社含めて国内27社、海外20社。2016年3月期のグループ売上高は2,000億円を超える規模にまで事業を拡大させている。

 同社は、客先の水処理施設の状況をセンシングし、モニタリングを通じて適切な薬品を注入するための遠隔監視に、パイオニアとして取り組んできた。その歴史はすでに20年以上にも及んでおり、その過程で交換部品の入手困難性の増加やサーバーの保守切れなどさまざまな課題が顕在化したため、新たな付加価値をお客さまに提供できる遠隔監視の仕組みを構築することになった。

導入の経緯

海外市場へのさらなる展開も視野に入れたシステム刷新が急務に

高橋 邦幸 氏

開発本部 基盤技術グループ
グループリーダー

高橋 邦幸 氏

 これまでは、1990年代に構築された遠隔監視システム「テレセントリーシステム」を必要に応じて拡張しながら、2005年には新たな仕組み「Kurita IT システム」を構築して併用するなど、同社は個別ながらグローバル対応を進めてきた。事業を拡大していくためには、さらなる付加価値の提供が必要と考え、新たな仕組みづくりの検討を開始したという。「センシングデバイスから情報を収集する機器の交換部品調達が難しくなりつつあるだけでなく、センシングできるデータ量やシステムの取り扱いなどに制限が出てきました。今後のグローバル対応も念頭に考えれば、標準仕様で展開できる新たな仕組みに刷新すべきだという結論に至ったのです」と当時を振り返るのは開発本部 基盤技術グループ グループリーダー 高橋 邦幸氏だ。

大澤 公伸 氏

ケミカル事業本部 技術統括部門
機器部 部長

大澤 公伸 氏

 2015年4月にスタートした中期経営計画「Competitive Kurita 2017(CK-17)」の中で、国内を固めながら海外市場を伸ばすことが計画の1つに挙げられていた。ケミカル事業本部 技術統括部門 機器部 部長 大澤 公伸氏は「日本とアジア、欧州、北南米の4極体制を目指し、海外市場への展開に見合った営業体制や情報、ネットワークサービスを構築する必要がありました。それも踏まえてシステムの刷新に踏み切ったのです」と説明する。また、従来のサービスでは、お客さまとのコミュニケーションを行うためのツールはFAXが中心であり、お客さまと画面で状況を共有するような仕組みにはなっていなかった。同部RO・センシング推進課 課長 原田 要氏は「求める情報にすぐにアクセス、共有できる環境が必要でしたが、これまでは、専門の技術者による機器設定に、多くの時間を要していました。グローバル展開を迅速に行うためには、専門の人でなくても使えるような新しい仕組みが欲しかったのです」と語る。

導入のポイント

やりたいことへの十分な理解があり、満場一致で提案内容を評価

 各現場に設置するデータ収集端末と、お客さまと自社の営業向けに情報展開するポータルサイトの構築、そしてグローバルでのネットワークインフラを含めたシステム全般が今回の提案の範囲だった。必要な情報にワンクリックで到達できることや、多種多様な機器へ対応するために拡張できる仕組みを作ること、通信やサーバー上でのセキュリティ要件をクリアすることなどを開発部門からの要件として挙げた。

 そこで複数の企業に対して提案を求めたところ、同社の目に留まったのが東芝だった。「開発部門の意見だけでなく、事業部や情報システム部など関係部門の意見を求めたところ、満場一致で東芝の提案内容を評価したのです。東芝は、私たちが実現したいことをしっかり理解下さっていて、それが提案内容に落とし込まれていました」と高橋氏。

 実際に客先へ展開する事業部としては、「特にこれまで足りなかったのがデザインの部分だった」と原田氏は振り返る。「東芝にはデザイン専門の部門があり、家電などで培ったユーザー視点でのデザイン経験が豊富なので、私たちの仕組みにもそのノウハウを活かしていただけると考えました。他社からは、BIツールを駆使して見せるという提案はありましたが、具体的なインターフェースの提案まではありませんでした」。東芝は、遠隔監視システムに多くの経験を持っており、その知見や技術力も含めた信頼感は大きかったという。

原田 要 氏

ケミカル事業本部 技術統括部門
機器部 RO・センシング推進課 課長

原田 要 氏

 また大きな選定ポイントとして挙げられるのが、あらかじめ念頭に置いていたランニングコストだ。従来の仕組みに比べてデータ項目や量は飛躍的に増えるものの、これまでと同様のコストで運用できるかどうかも重要なポイントだった。「今回は、東芝が事前にボーダフォン・グローバル・エンタープライズ社としっかり案を練って、グローバルなネットワークまで最適なコストで提案してくれました」と高橋氏。データ収集端末についても、専用デバイスではなく汎用的な機器を提案に盛り込んだ東芝を評価している。「端末が老朽化して部品調達などが困難になるなど、数年後に多くのコストが発生するのは避けたいところ。端末の設定も容易にできるよう、システム全体を私たちの立場を考えた上で提案してくれたのが良かったですね」と原田氏は語る。

 これらの評価を受け、東芝の遠隔監視システムが、同社の水処理薬品管理サービス「S.sensing®」の仕組みに採用されることになる。

導入の効果

総合的なポータル画面と展開しやすい仕組みで基盤構築を実現

 現在は、S.sensing®機器などから新たに設置したS.sensing® GWを経由して、お客さまとの間の情報ポータルとして構築した「S.sensing® WEB」に情報を集約表示できる。

 S.sensing®機器などの稼働情報だけでなく、以前は取得できなかった画像データも収集でき、そのデータ数は50倍あまりにも膨らんでいる。これらの情報がタブレットやパソコンで表示できるようになっている。さらに、連携機能により他サービスからの分析情報や水質測定情報、安全データシート等を取込み一元管理することで、総合的な水質レポートも可能になった。お客さまへの報告書も日報や月報として自動生成し、水質トレンド等必要な情報に直ぐにアクセスできる。「S.sensing® WEB」は、お客さまとのコミュニケーションのきっかけとなっている。

図1.サービス全体概要

 すでに2016年7月から国内を中心に順次展開を進めており、海外での導入も始まっている状況だ。

 また、以前の「Kurita IT システム」では現場に応じてカスタマイズしていた部分が多かったが、今回新たに標準化された仕組みができたことで、現場への設置などが容易になり、作業の外注化も可能になっている。設置時間も「従来は半日余りを要していたが、今ではわずか40分あまりで設定作業を終わらせることができる」と原田氏は評価する。また、顧客固有の現場に対応できる拡張性を備えた仕組みができている。「薬品を入れるボイラなどの中身は常に変動しており、稼働率なども一緒に見たいという話もよく出てきます。新たな付加価値を提供することで次の設備更新時の最適設計に役立つ情報が提供できるなど、当初想定していなかったビジネス機会も得られるはず」と大澤氏は評価する。

図2.お客さま向け ポータル画面(一例)

 今回、新たな仕組みに刷新したことで、代理店や販売会社向けの説明会での評価は上々だと大澤氏。「PCはもちろん、タブレットやスマートフォンでも閲覧できるようになり、使いやすくなったと評判です」。また原田氏は「お客さまから、見栄えについて“すごいですね”というお声をいただけています。デザインとして完成されているという印象を持たれるお客さまが多く、営業的にも満足しています」と東芝のUXD手法を用いたデザインを評価する。もちろん提供する国によってデザインの好みに差はあるものの、グローバル含めての評価も高い。「アイコンも変更できるように作ってもらっていますし、設定のためのテンプレートも工夫していただきました。全体的に満足しています」と高橋氏。

 なお、東芝の対応については「基幹システムとの連携やセンシングデバイスからのデータ収集における検証など、想定よりも時間がかかった部分はありますが、東芝内の複数部門との連携やボーダフォン社との調整もスムーズに行っていただけました。課題に対しても解決までしっかりワンストップでサポートいただけており、さすが東芝という印象です」と高橋氏。

将来の展望

協業していくことでグローバルスタンダードの構築を目指す

原田 要 氏(左)、大澤 公伸 氏(中)、高橋 邦幸 氏(右)

原田 要 氏(左)、大澤 公伸 氏(中)、高橋 邦幸 氏(右)

 今後については、2018年3月を目途に既存のテレセントリーシステムとして導入されている約4,000台を新たにS.sensing®機器への置き換えを推進しており、さらに時期は未定ながら同社が事業展開している世界30か国、約1万拠点への展開を順次予定している。また、S.sensing® WEBはお客さまとの間の情報ポータルとしてさらに使い勝手を高めていき、さまざまな情報を交換する場として広げていきたいと原田氏は語る。「収集する情報をさらに充実させ、私たちの水処理の知見と合わせて新たな価値を提供できるようにしていきたい。そのためには、東芝が持っているAI技術やビッグデータ解析などを活用した提案もいただきたいし、私たちも要望していくつもりです」。また、お客様のKPI測定や収集データの解析機能を深めるなど、センシング情報にさらに付加価値を与える仕掛けにも取り組んでいきたいと高橋氏は力説する。「私たちのお客さまには、『他にはないさまざまな情報が得られる、だから栗田を選んだ』と思っていただきたい」。

 大澤氏は「水に関する薬品の販売は継続したビジネスであり、お客さまとの接点が強い。情報技術の力で、その接点をもっと強くしていこうという会社の方針があります。現状の計測・監視からさらに踏み込んで、世界中の水を最適化できるよう、これからも東芝と協業しながらグローバルスタンダードを構築していきたい」と熱く語った。

 東芝は、これからも栗田工業とともに、世界の水を支えていくだろう。

この記事の内容は2016年11月4日に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。
「S.sensing®」は栗田工業株式会社の登録商標です。

COMPANY PROFILE

会社名
栗田工業株式会社
設立
1949年7月13日
代表者
代表取締役社長 門田 道也
本社所在地
東京都中野区中野4-10-1
事業概要
水処理薬品事業および水処理装置事業
URL
http://www.kurita.co.jp/index.html 別ウィンドウで開きます

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