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お客さまインタビュー

倉庫管理に東芝の「LADOCSuite」を採用
3000パレット/日の出荷作業の効率化を実現

カンパニー:月桂冠株式会社×ソリューション:
導入の背景

清酒造りで370年を超える歴史を持つ月桂冠

「ヘイベリアンセンター」の様子。顧客接点の中核を担う

 酒造りが盛んな京都の伏見に「大手蔵」と「昭和蔵」という2つの清酒工場を構える月桂冠は日本を代表する酒造メーカーの1社である。初代の大倉治右衛門が伏見で酒屋を開業した寛永14年(1637年)の創業から数えて370年を超える歴史を持っており、まさに老舗中の老舗といえるだろう。「健をめざし、酒(しゅ)を科学して、快を創る」というコーポレートブランドコンセプトを規範として事業を進めている。

 同社は老舗でありながら新技術の導入にも積極的で、例えば1960年代には冬季だけではなく一年を通して安定的な日本酒造りを実現した「四季醸造」技術を確立し、生産の拡大を実現した。また、1990年にはアメリカ(カリフォルニア州)に設立した米国月桂冠株式会社でも酒造りを開始し、現在は輸出も含め世界70カ国に商品を展開している。

福井徹也 氏

 さらに、高品質な日本酒はもちろん、新商品の開発にも取り組んでおり、日本酒の糖質をゼロに抑えた「糖質ゼロ」および「糖質ゼロ冷酒」やスパークリング日本酒仕立て「うたかた」、ノンアルコールの日本酒テイスト飲料「月桂冠NEWフリー」などをラインアップに加え、消費者の多様なニーズにも応えている。

 一方、IT投資の面では従来のメインフレームからオープンアーキテクチャへの切り替えを実施し、特に2010年には基幹系を一気に刷新するいわゆる「ビッグバン導入」を敢行している。

 比較的早期からIT化を進めてきた同社だったが、大手蔵に併設された物流倉庫の管理だけはさまざまな事情から人手に頼っていたと、同社物流部の福井徹也氏は振り返る。「大手蔵で生産された商品を全国の酒問屋に発送するに当たって、ピッキングや在庫管理などを人手で行っていたため誤出荷などの作業ミスがあり、棚卸しにも時間を要していました」。

 そこで、パッケージベースの倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)を2003年に導入しいったんは効率化を実現したが、同社特有の業務処理に対応するためにカスタマイズが膨らんでしまい、その結果としてシステムの更新費用や保守費用が高額になるなど別の課題が生じていた。「旧システムは保守期間が2016年に満了することもあって、社内の業務フローを変えてでも、カスタマイズに頼らないパッケージベースへの刷新を行う必要があると考えていました」(福井氏)。

導入の経緯

東芝の「LADOCSuite」を新WMSに選定

 代替となるソリューションを検討していた2013年秋に、ロジスティクスを専門とする展示会で東芝のWMS「LADOCSuite」(ラドック・スイート)の存在を知り、最終的には東芝を含む10社のソリューションを対象に選考を行った。なお、RFP(要求仕様書)としては、 (1) パッケージベースであること、(2) 最小限のカスタマイズが可能なこと、(3) 倉庫の効率的な運用が見込めること、(4) 同社の商品数(SKUで1200種以上)や出荷形態(パレット/ケース/バラ)に対応できること、などの項目が提示された。

 一次選考で3社に絞り込んだのち、二次選考を経て最終的に選定されたのが東芝の「LADOCSuite」だった。「WMSとしての完成度が高いことはもちろんとして、他社のソリューションにはないトラックの配車機能を備えていることを評価しました。また、当社が将来的にやりたいことが盛り込まれていたほか、分野こそ違え当社と同様にモノづくりに取り組んでいて、提案に熱意を感じました」と福井氏は選定の理由を説明する。

導入のポイント

東芝グループ内の倉庫業務のノウハウが凝縮

物流部物流課 林忍 氏

 「LADOCSuite」(図1、図2)は東芝グループの倉庫管理および物流管理用に開発された内部ソフトウェアをベースに、クラウド化への対応や多言語化を組み込んだ汎用のWMSパッケージである。倉庫内作業の効率化、配車計画との連動、配送リードタイムの短縮などを実現できるのが特長で、ロット管理も考慮した入荷処理や出荷処理にも対応する。東芝のクラウドサービスと組み合わせる使い方のほか、顧客の社内クラウド(オンプレミス)上に構築することもできる。

 「LADOCSuite」の導入を決めた月桂冠では、早速東芝と共同で新システムの構築に着手した。「物流の現場は目先の業務に追われてなかなか空き時間がありません。30分程度の短いミーティングを何回も設定しながら、現場の担当者の意見や要望を吸い上げて、画面設計などに反映していきました」と、物流部の林 忍氏は述べる。

 同時に業務の見直しも行った。ピッキング作業の手順もその1つである。従来は明日の出荷分の事前ピッキングをしていたが、翌日になって予定のトラックが指定時間どおりに入ってこないことも多く、積み込みバースが仮置きのパレットで占有され非効率になっていた。

 そこで「LADOCSuite」のトラック誘導機能を使い、トラックが待機バースに入場したときにシステムに登録し、荷さばき場が空いた段階でピッキングを開始し、積み込みバースに空きができた段階でドライバーを待機バースからコールする手順に切り替えた。

図1 LADOCSuiteの機能概要

LADOCSuiteの機能概要

図2 LADOCSuiteの内部構成

LADOCSuiteの内部構成
導入の効果

運用のフレキシビリティと倉庫業務の効率化を実現

 業務フローの一部変更や入念な現場運用テストを経て、「LADOCSuite」で構築した新WMSは2015年4月に稼動を開始した。「最初の数日はどんなトラブルが出るかも分からず泊まり込みも覚悟していましたが、細かいトラブルはあったものの特に問題になるようなことはなく、とてもスムーズにシステムの切り替えが完了しました」と林氏は振り返る。

 新システムは、配車計画に始まって、当日の車両受付(バース状況)(図3)、ピッキングや積込検品(図4)までの一連の進捗が画面上から簡単に把握できるようになったなど、さまざまな効果をもたらしているという。先入れ・先出しの逆転の防止やトレーサビリティの精度向上も図られた。また、トラックの到着がなんらかの理由によって遅延した場合でも、配車の組み替えが簡単にできるようになった。

 ピッキング指示の効率化などによって積み込み完了までの時間も5分ほど短縮され40分程度で済むようになった。「わずか5分の短縮ですが、日本酒の出荷が増える10月から12月の繁忙期にはとても大きな意味を持ってきます」と福井氏は効率アップを評価する。実際に1日当たり100台のトラックをさばくとすれば、最大で延べ500分も短縮できることになり、効果は大きい。

図3 「LADOCSuite」で待機バースの待ち状況、積込バースの作業状況を一元管理

LADOCSuiteの機能概要

図4 ピッキングや積み込み処理の効率化を実現

LADOCSuiteの機能概要
今後の展望

清酒の復権を目指した取り組みが続く

 ところで、日本酒(清酒)は日本で古くから造られてきた歴史を持ち「國酒」(こくしゅ)の1つにもなっているが、その国内消費量はピークのおよそ1/3にまで減少しているのが実情だ(国税庁「酒のしおり」)。月桂冠を含む酒造メーカーは新商品の開発や飲み方の提案などさまざまな市場開拓を進めており、減少傾向に歯止めが掛かった感はあるが、国内消費量を大幅に回復するまでには至っていない。

 そうした厳しい市場状況を踏まえると、最大手の月桂冠においてもさまざまな業務の更なる効率化が急務となっており、倉庫業務および物流業務に関しては今回導入した東芝の「LADOCSuite」を軸に取り組みを進めていきたい考えだ。

 例えば、メガネ型ウェアラブル端末を使ってピッキングすべき商品を視界に映し出すなどして、倉庫業務の効率化を図る案などが考えられる。IoT(モノのインターネット)を使った倉庫環境の見える化なども有効だろう。

 「今回のWMSの刷新では東芝の『LADOCSuite』を選んだことで大きな効果を上げることができました。東芝には今後もさまざまな提案を期待しています」と福井氏は述べている。

 日本酒がブームとなっている海外への販路拡大を進めながら、日本国内での日本酒の復権を目指す月桂冠のこれからの取り組みが注目される。

この記事の内容は2015年10月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
月桂冠 株式会社
設立
1927年5月
本社所在地
京都府京都市伏見区南浜町247
事業概要
清酒、本格焼酎、リキュール類の製造販売、ビール、ワインの輸入販売
URL
http://www.gekkeikan.co.jp 別ウィンドウで開きます

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ソリューションのより詳しい情報はこちらから 倉庫管理ソリューションLADOCsuite®/WMS