シニア人材の活用ポイント


2020.6.12

HR-i コンサルティング
代表 シニア・コンサルタント 伊藤 晃

シニア人材の現状

働き方改革は企業の重要な経営課題となっています。過重労働、各種のハラスメントにより社員の心身を害する企業は信頼されません。日本企業の生産性の低さも問題になっています。ムダな会議が多い、意思決定が遅い、手続きが煩雑等、業務の抜本的な改革が必要になっています。さらには深刻な労働力不足があり、育児や介護等の状況でも「働きたい人が働ける」環境づくりも進んでいます。

世代別の実態

シニア人材の置かれている環境はさまざまです。40代は就職氷河期世代でもあり、能力を活かす機会を得られていない人材が多いと言われます。子育て途中の場合も多く、早くも親の介護に直面する人も出てきます。50代は定年が視野に入り、自分の生き方の再構築が必要になる世代です。そして60代以降は、自身の健康や経済状況を踏まえつつ、労働と余暇の兼ね合いが問題となっていきます。

これまでのシニア対応施策

企業がシニアに対して打ってきた施策としては、まず役職定年制度があります。これは次世代人材の登用機会を作る仕掛けですが、次世代が育っていない中で画一的に運用すると問題も起きますし、役職からはずれることのモティベーションダウンも発生します。役職定年と合わせ一部の大企業では子会社への出向や転籍等の手を打ってきました。

定年後のキャリアを考えるためのキャリア研修も長く行われてきた施策です。キャリア研修の実施時期は、定年数年前、50代、40代と次第に早期化しています。最近では業績が堅調な中での早期退職を行う企業も増えており、社会の中でのジョブマッチングが重要になっています。

これらの施策の根底にあるのは、企業側としてはシニア人材の働き・貢献と報酬とのマッチングをどうするかという問題意識です。年功的な処遇制度であるほど、この問題は深刻です。

シニア人材活用の急所

これからのシニア人材の活用においてどんな点が重要でしょうか。意識や能力、人生価値観が多様化する中では、シニア個々人に応じたキメ細かな対応が求められます。能力も高く、十分働ける環境にある人材であれば、年齢に限らず企業に貢献し続けることができます。報酬も役職定年後や定年後に一律削減ではなく、本来はその貢献度に応じた配分が公正な対応と言えます。

こうした活用を成功させるには、実はシニア人材自身が企業に頼らず、自ら人生に向き合うことが前提として重要と考えます。例えば、年代に関わらず以下の取り組みは、40代以降なら一度は必ず行うべき取り組みと考えます。

(1)経験の棚卸・振り返り、決着
まずは自身の経験の棚卸を行います。過去を振り返り客観的に自分を見つめ、時には自分の気持ちに決着をつけ過去と決別することで新たな一歩を踏み出しやすくなります。

(2)経験価値の評価と貢献の探索
誰でも経験してきたことには一定の価値があります。自分で気づいていない価値もあります。今後の人生での新たな貢献を始める場合も、これまでの経験を活かさない手はありません。

(3)発意・行動、継続と満足
これからのシニア人材には自ら貢献行動を始めることが求められます。自分で発意して行動し、継続し、その結果には一定の満足=すなわち「足るを知る」生き方が必要です。

シニア人材には、健康面や新たな学習の面で難しい側面があります。これらの検討には体験の意味づけや新たな貢献アイデアを一緒に考え助言してくれる第三者の介在がとても有益です。日本経済にとって重要な労働力としての期待は高まっています。シニア人材にこそ「適材適所」の人材活用が求められていると言えるでしょう。

  • 記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年6月時点のものです。

伊藤 晃(いとう あきら)
HR-iコンサルティング 代表 シニア・コンサルタント。

株式会社日本能率協会コンサルティングにて、業務改革および知恵と活力を高める組織・人材革新コンサルティングを推進。支援業界は自動車、運輸、繊維、製紙、製薬、精密機械、銀行、商社、建設、不動産、生保、IT、電力、ガス、新聞、大学、流通、ホテル、テーマパーク、経済連等 多岐にわたる。
2019年9月定年退職。10月より現職。現在は、人と経営の「意」をサポートする、をモットーに人材マネジメント全般を支援している。主要テーマは、人事・人材開発制度構築、経営幹部育成・登用制度構築、全階層一貫教育の企画・推進、意のある次世代リーダー育成、人材マネジメント全般に関する相談対応および自社流の構想立案・推進支援。


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