多様性時代の人材育成


2019.12.20

HR-i コンサルティング
代表 シニア・コンサルタント 伊藤 晃

多様化が加速する日本社会

少子化による深刻な労働力不足で人材獲得競争が激化し、外国人の採用も増えています。加えて海外からの観光客、ラグビーワールドカップの成功、東京オリンピックもあり、我々の生活の中で多様な国々の人との接点も増えています。

こうした外的な環境変化に加えて日本人自体も多様化しています。SNSやキャッシュレス化など技術革新で生み出される新しい手法の活用、育児、介護、働き方等々、同じ日本人でも行動スタイルが多様化しています。高齢化が進み、世代間のギャップをより強く実感することも増えてきました。

企業は働き方改革に取り組んでいます。働きたい人が安心・安全に働ける多様な環境整備を進めています。労働時間の短縮、在宅勤務、休暇の取得ルール等の法律や制度がビジネスパーソンの仕事と生活に大きな影響を与えています。

企業における多様性の意義

企業は革新を続けてこそ発展を持続できます。革新とは新たな発想の選択であり、前例のないチャレンジです。これを成功させるには従来発想にとらわれない人材が不可欠です。企業にとって多様性は革新のトリガーと言えます。そのため採用、育成、活躍環境の整備等、多様な人材が活躍できるマネジメントを多くの企業が研究しています。

多様性が人材育成に与える影響

多様性の時代では「(丁寧に言わなくても)分かるだろう?」という教育は通用しません。使う言葉や意味、行動習慣の常識が異なるからです。技術の進化には若者の方が敏感でリテラシーが高く、先輩が必ずしも後輩を教える役になりません。人生100年時代と言われ、高齢者が常識の異なる若者に交じって働き続ける、学び続ける…ことが当たり前となるのです。

多様性の時代では、こうした環境変化に対応するための新たな学びが必要です。ではどのように対処していけばいいでしょうか。そのヒントをいくつかを紹介しましょう。

多様性時代の成長・育成原則

まず「自分は普通・標準」と決めつけず、多様性の一部であること、個性的な存在であることを自覚しましょう。自分が大事にしていること、興味・関心、これまでの人生で獲得してきたこと等を洗い出し、これから学びたいこと、活かしたいこと、磨き上げていきたいテーマを探し見つけます。自己の眠っているポテンシャル(潜在的可能性)に気づくことが、多様性時代の成長・育成の出発点となります。

次に、柔軟にコミュニケーションできるスキルを学びましょう。人の発言・行動にすぐ反応せず、一歩引いて、ゆとりをもって観察・傾聴することが必要です。価値観や常識の違いを楽しむ気持ちを持ってコミュニケーションできれば、出会うさまざまな人から新たな学びを得やすくなります。多様性の時代は、いつでも、どこでも、誰とでも、何をしている時も、それが自分を高め、学ぶ機会となるのです。

「偶然」を活かす力を養うことも大切です。人生には予期せぬ出来事が起こります。変化の激しい時代ではなおさらです。慎重に備えつつ、起きた事態には柔軟・迅速に対応します。偶然の事態を前向きに受け止めて学び、行動する力を磨いていけば、困難を乗り越える都度、自分が成長した姿を見ることができるでしょう。

最後に、誰かと関わることが、その人の成長に貢献する機会であることを知っておきましょう。これが実感できれば、成長や育成の大きな喜びの一つとなっていきます。 多様性の時代は、誤解、分断、軋轢、不信が増幅しやすい時代です。だからこそ平和や連帯、尊重など、より良い社会のために貢献する気持ちが大切です。健全な精神を持って“変化し続ける社会に対応していくこと”、これが多様性時代における自己成長・人材育成の基本スタンスです。

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年12月時点のものです。

伊藤 晃(いとう あきら)
HR-iコンサルティング 代表 シニア・コンサルタント。

株式会社日本能率協会コンサルティングにて、業務改革および知恵と活力を高める組織・人材革新コンサルティングを推進。支援業界は自動車、運輸、繊維、製紙、製薬、精密機械、銀行、商社、建設、不動産、生保、IT、電力、ガス、新聞、大学、流通、ホテル、テーマパーク、経済連等 多岐にわたる。
2019年9月定年退職。10月より現職。現在は、人と経営の「意」をサポートする、をモットーに人材マネジメント全般を支援している。主要テーマは、人事・人材開発制度構築、経営幹部育成・登用制度構築、全階層一貫教育の企画・推進、意のある次世代リーダー育成、人材マネジメント全般に関する相談対応および自社流の構想立案・推進支援。


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