[第38回]遺伝子スイッチをオンにする生き方


2021.1.25

これまで経験したことの無い環境に遭遇した一年が過ぎ、新たな年が始まりました。将来の働き方と思っていた在宅勤務が突然始まり、Web会議も定番となりましたが、新たなスキルをにわか仕込みし、何とか仕事ができるようになりました。今回は、新型コロナという未曾有の挑戦に応戦する人間の底力について、遺伝子工学の第一人者である筑波大学名誉教授 村上和雄氏の著書「スイッチオンの生き方」(致知出版社)を通して考えてみたいと思います。

環境を変えてみる

村上和雄氏はその著書の中で『人間という存在は遺伝子レベルで見れば、学校の成績が良かろうが悪かろうが、身体が強かろうが弱かろうが、99.5%以上は誰でも同じです。能力に差があるとすれば、遺伝子を眠らせているか、目覚めさせているかの違いだけです。その違いは、心のありようや環境などによって生じます。人との出会いや環境の変化などによって、眠れる遺伝子のスイッチがオンになるとき、人は生きながらにして生まれ変わることができるのです。』と言われています。

この本を読み返すたびに、人間の可能性は無限大と気づかせてもらっています。新型コロナに遭遇している今は、まさに未だかつてない環境に身を置いているわけで、良い遺伝子をオンにするチャンスが今、この環境にこそ具わっていると捉えることもできるのではないでしょうか。

『遺伝子は環境の変化に応じて働いているのですから、環境という条件は重大です。もし、努力に結果が伴わない、現状に納得がいかないというように、いまの自分に行き詰まりや壁を感じているなら、それは遺伝子がオンになる条件が整っていないからだと考えて、思い切って転職するなど、環境を変えることを考えてみてもいいかもしれません。』

給料が安いから価値の低い仕事をさせている。それが、その社員の能力を駄目にしてしまう大きな要因になっている。だから、給料アップが生産性を上げることになるとの考え方がある一方で、給料分だけ働けばよいとか、文句を言われない程度にすればよいという受け身的な働き方はいかがなものでしょうか。いずれにしても、環境の変化を自身の可能性を開くためにと、前向きに捉えていくことができれば遺伝子スイッチオンにつながるのではないでしょうか。

『何が人を新しいことに挑戦させるかといえば、外から絶えず入ってくる刺激です。精神的に守りに徹していたのでは、決して新しいものを取り入れることができません。(中略)だから、「守り」ではなく「攻め」で新しい刺激を求めていくことが大切なのです。』

仕事を選ぶ、会社を選ぶでも、大事にしたいのは、刺激ではないでしょうか。刺激が無い日々を過ごしていては、良い仕事もできるはずがありません。皆さんは、今の仕事に刺激はありますか? 刺激が少ないなと思ったら、立ち止まって考えてみる時かも知れません。

一流に交わる

『同類を求めていたら、いつまでたっても「どんぐりの背比べ」の域を出ることができません。目指していることがあるのなら、先にそれを成し遂げた「その道の先輩」との出会いを積極的に求めていくといいでしょう。一流に交わることによって刺激を受けて、眠っていた遺伝子がオンになることもあるのです。』

これまで述べてきたことでもありますが、人間力を磨くために始めた人間力講座は、まさに人間的な魅力溢れる一流の人との出会いの場作りでした。社員一人でも良い、その機会を通して、刺激を受け、眠っていた遺伝子をオンにすることにつながれば、その人にとっても、その人の職場にとっても、しいては会社にとっても資産を無限大に高めていくことができるはずだとの信念で取り組んできました。凡そ10年間続けてきて自分もその一人でありたいと常に言い聞かせてきました。

また、目指していることがあるのなら、と書かれている点にも目が止まりました。まさに、「守り」ではなく「攻め」で常に新しい刺激を求めていく。人間力を磨くとはゴールを目指すことではなく、その流れそのものではないでしょうか。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2021年1月時点のものです。


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