[第20回]求めるものが変われば、人生が変わる


2019.2.20

先日、“当たり前”という言葉に魅かれて、『学校の「当たり前」をやめた。』(工藤勇一著)を読んでみました。もちろん、学校教育の当たり前について、書かれているわけですが、決して学校教育だけではないなと感じました。目の前の「当たり前」は、どこか他人事になっていないだろうか。工藤氏は本著の中で「手取り足取り丁寧に教え、壁に当たればすぐに手を差しのべる。そうして手厚く育てられた子供たちは、自ら考え、判断、決定、行動できず、「自律」できないまま、大人になっていきます。そして、大人になってからも、何か壁にぶつかると「会社が悪い」「国が悪い」と誰かのせいにしてしまうのです」と語ります。壁や変化を自分事として捉えたることができたら・・・。

前回は、人材開発部への突然の異動をどう受け止めたのかについて話してきましたが、今回は、そこでの出会いが私の人生を大きく変えてしまったという話です。『人間力との出会い』を通して、求めるものが変われば人生は変わるというお話です。

自分が求めているもので人生が変わる

ある朝、競い合って出勤していたT部長に呼ばれ「当社の人材育成の根幹に“人間力”を据えたい。そのためにどうすれば良いか考えてほしい」と言われたことから始まった。解のないような仕事、久しぶりに面白そうだなと“わくわく”したことを覚えています。どういうわけか、大変だなとは思わなかった。

それからというもの、歩いていても“人間力”とは何か?人間力を磨くためにはどうすればよいか?を考えた。そんななか、人間力高き人に自身の体験談を語ってもらい人間力を感じ、気づいてもらうおうと「人間力講座」を始めた。人間力は人間としての根幹であるから、職業や立場は問わない。人間力は目に見えないため、受け手の受信機の精度や感性が大事になってくる。

T部長は、月曜になると決まって、先週読んだ本の感想を送ってくれた。最初は短期間に本が読めるなあと思う程度だったが、それが続くと関心から尊敬に変わった。この人は本気なんだと、私に火をつけてくれた。

手探りで始めた人間力講座ではあったが、第5回目の人間力講座には青年塾を主宰されている上甲晃さんに登壇いただき、志の大切さを語っていただいた。講座の事前打合せのため、上甲さんに面談し、当社の人材育成の取り組みについて、人間力講座を始めた経緯、そして人間力に懸ける思いをお伝えした。当社の人材育成の取り組みについて紹介した時の様子を上甲さんはこのように書いてくださった。

「『人間力』などといった表現が、大きく記され、繰り返し使われている。『人間力』を高めていくことこそ、すべての基本であるとの考え方だ。(中略)私は、ずいぶん前から、『人間力』を高めることが、人材育成のもっとも基本であると主張してきた。だから、東芝の人材育成もまた、『人間力』を高めるところにあると聞いて、やっとわかってもらえるようになったかといった感慨が心をよぎった」(上甲晃著 ディリーメッセージ4533号)

先の見えないことを進めている情況の中で「人材育成の根幹に『人間力』を据えたことは、間違っていなかった」と確信を深めるとともに、大きな励ましをいただいた。

「人間力講座」の講師に誰をお呼びするのかが悩みの連続となった。そのために、どれだけ本を読んだり、講演を聞いたりしただろうか。自分が何を求めているのか、何を考えているのかで、出会う人への関心度も、読む本のジャンルも変わることを感じた。設計開発畑では、けっして出会うことのなかった人たちとの出会いが始まった。自分が何を求めて生きているのかで、こんなにも人生が変わるのかと感じた。

お呼びするため講師と面談した折に「上甲さんが登壇されているのであれば」と仰る方が多いことに気づいた。人間力の高い方同士には、目に見えないネットワークがあることを教えていただいた。

講師を求めて東奔西走。休みを使って、自費で講師へ会うために出かけたこともあった。人間力を磨くために、まずは自身の感度を磨かねばならないとの思いがそうさせていたが、次第にどこまでが仕事なのかわからないようになった。

仕事を通して出会ったお一人おひとりは、私にとってもかけがえのない財産となった。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年2月時点のものです。


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