[第12回]社会人基礎力から見る人間力⑦


2018.6.20

これまで連載してきた「社会人基礎力」について少々ふり返ってみたい。「社会人基礎力アップ・プログラム」をラーニング形式の教育プログラムとして制作したことは、昨年12月の回にてお伝えした通りである。新入社員から若手社員、30代前半くらいまでの中堅社員向けに、会社で仕事をする上で、最低限必要となるコンピテンシーのセットをコンパクトにまとめた内容となっている。受講による本人の気づき(自分に何が足りないのかさえわからないでは、ことは進まない)を確認する内容も盛り込んでいる。

初心に戻って、私もそのプログラムを受講してみると反省することしきりで、この内容はけっして若手対象だけではないな、と感じた。人間力を磨くためには、当たり前のことができているかを素直にふり返る時間も必要ではないだろうか。

能力を発揮し続けるために

経済産業省は「人生100年時代の社会人基礎力」を『新・社会人基礎力』と呼び、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力と定義している。

これまでの社会人基礎力は「学校教育と社会との関係の接続」に重点を置き、社会人として必要な能力を示すことで、学校教育へ対しても刺激を与えていた。これからの重点は、長くなる会社人生の中で、自身の力を継続発揮することに軸足が移っている。つまり、会社人生のどの時間軸でも「この人と一緒に仕事をしてみたい」と思われる人材を目指すことになる。

そのための学びは、自らの“問いかけ”や“気づき”そして“ふり返り”によるものでなければならないとしている。これも人間力を磨くことに通じている。

例えば、「持続的に活躍し続けるために必要な学びはなにか?」「経験等を引き継ぐための学びはなにか?」「多様な人との関係性を活かし、活躍の場や領域をこれまでより広げているか?」「これまでの経験を踏まえ、自らが社会に提供できる価値は何か?」などの“問いかけ”である。

小生も自身の力を継続発揮するために何が必要かを常に問い、気づき、磨く日々でありたいと思っている。

問いを自ら発見し、発信する力

人間力を磨く基本も、自らの気づきが出発点であることは述べてきたとおりである。講師が一方的に教えるには限界があるが、受講者一人ひとりが、自分の思いや考えをまとめて伝える、相手の話を聞いて、そういう考えもあるのかと、お互いから学び合う学習方法には広がりがある。

討議の時間では、いかに発言しやすい雰囲気を作れるか、また、発言してくれた意見や考え方を、うまくすくい上げることができるかが講師には問われることになる。ちょっとした発言や行動は、すくい上げ方次第では、大きな自信につながることもある。

先日、企業コンサルに従事している方と懇談したときに、全国展開している店舗の店長教育について話が及んだ。忙しい店長を一か所に集めて集合教育を行う時間的な余裕がないため、各店長の力量に任されている現状を伺った。私は、光る店長の思考や行動の一端を共有し、学ぶ機会があれば、得るところは大きいのではないだろうかと思った。

好業績をあげている店舗の日頃の活動をビデオに撮り、各店舗の時間に合わせて、そのコンテンツ動画をメンバーで視聴し、皆で気づいたことをディスカッションすることができたらどうだろうか。

当社で始めた人間力講座も同じ思いで、各講座をビデオ収録し、そのコンテンツをライブラリー化して現場へ貸出してきた。最初から答えを教えるのではなく、一緒に仕事をするメンバーで同じビデオを見る時間を共有し、一人ひとりの感性の違いに気づき、その違いから学ぶことこそ、人間力を磨くことに通じるはずだとの信念に基づいている。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

コラム掲載1年を記念して

最近、「もう50過ぎたんだからこれから成長なんてできない…」みたいな言葉を耳にすることがある。
“人生100年時代“というのに悲しい限りだ。
コラムの中で真野氏は『学びは、自らの“問いかけ”や“気づき”そして“ふり返り”によるものでなければならない』 と書いている。自らが自らのことを気にしてあげて、気づいてあげないといけないな・・・と再認識!
いくつになっても、「成長できる」「夢を見られる」、それが続けられることこそが『幸せなキャリア』なのではないだろうか。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部
担当部長 小野 慎一

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2017年12月時点のものです。


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