DIGITAL T-SOUL

Vol.30 働き方の革新と豊かな暮らしをRECAIUSが実現 人とAIのつながりがもたらすデジタル社会

このページを印刷する

#02 コミュニケーションから価値を生み出す FAQをナレッジとして活用「RECAIUS コンタクトセンタープラス」 東芝デジタルソリューションズ株式会社 園尾 聡, 降幡 建太郎

AIによる「働き方の革新」と「生活の快適化」に取り組む東芝デジタルソリューションズでは、コミュニケーションを切り口とした業務プロセスの改革をさまざまな分野に展開しています。そのひとつが、企業と顧客の架け橋として近年重要性が高まっているコンタクトセンター業務を支援するソリューション「RECAIUS コンタクトセンタープラス」です。このソリューションでは、東芝が長年にわたり培ってきた音声技術と自然言語処理技術を結集し、オペレーターの応対品質と顧客満足度の向上を支援するとともに、FAQ*をナレッジとして効果的に活用するAI技術を強化。業務効率化の一歩先を目指し、コンタクトセンター業務を根本から変えていくことに挑戦しています。ここでは、コンタクトセンター業務の支援に向けた当社の取り組みをご紹介します。

*FAQ:Frequently Asked Questions

コンタクトセンターの課題とAIに求められるもの

企業と顧客がダイレクトにつながるコンタクトセンター。顧客が知りたい時に、知りたい情報を提供する。満足度の高い応対で、企業やサービスのファンをつくりだす。応対の中から顧客の声をすくい上げ、今後のビジネスの芽を見つけだす。商品やサービスが多様化し、消費者のニーズが複雑になっている今、その存在と機能は企業活動に不可欠なものです。

しかし現代は、国内の生産年齢人口(働き手)の減少が影響し、ほかの業種同様にコンタクトセンターでも十分な数のオペレーターを確保することが難しい時代です。また取り扱う製品やサービスの多様化・高度化に伴いオペレーションが複雑になったことで、オペレーターの教育とキャリア支援にも一層の力を入れる必要があります。コンタクトセンターを企業と顧客との強い絆を育む存在として成長させていくためには、これらの課題に対応し、オペレーターと顧客の双方が心から満足できる施策が必要です。

そこでテクノロジーの進化とともに注目されているのが、AIの活用です。機械に任せられることは機械に任せることで、業務プロセスを改善。オペレーターが「おもてなし」に注力できる環境を整え、限られた人員で応対の品質を高めていこうというのが、その狙いです。音声認識や自然言語処理といった要素技術と機械学習を組み合わせるなどによりAIをうまく活用すれば、コンタクトセンター業務のさまざまな場面で人を効果的に支援できることが期待されます。

しかし、これまでのようにバックオフィスなどでの定型的な処理業務はともかく、コンタクトセンターにおけるコミュニケーションという領域へのAIの活用には高いハードルがありました。日本語には同音異義語や異音同義語が多く、感情を表現する言葉も多種多様です。AIをコンタクトセンターの応対業務に活用するためには、電話の向こう側から届く音声の意味までをも正確に理解できることが求められました。

このページのトップへ

業務改善から価値創造までをトータルサポート

園尾 聡

東芝デジタルソリューションズでは、東芝コミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」において、早くからコミュニケーションの合理化を切り口としたコンタクトセンターにおける業務プロセスの改善に取り組んできました。そのひとつが、先進の音声認識技術に、音声合成や対話、意図理解などの技術を融合させ、自動応答により電話窓口業務の効率化を実現した「RECAIUS 通話エージェント」です。

顧客が電話口で発した声(話し言葉)を正しい意味で捉え、合成音声で回答する自動音声応答サービス。プッシュボタンと連動させた従来の音声ガイダンスとは異なり、会話する中で意思の確認や各種手続きをスムーズに行えるため、顧客の負担も軽いことが特長です。オペレーターに代わり電話発信と対話を行うことができ、幅広い分野の電話窓口業務を支援します。

さらに電話窓口のような特定の業務の効率化から一歩先を目指し、コンタクトセンター業務をAIでトータルに支援する画期的なソリューションの提供も進めています。それが「RECAIUS コンタクトセンタープラス」です。

コンタクトセンター業務にAIの導入が進むことで、オペレーターが電話で応対した内容の可視化や、多岐にわたるやり取りの自動化や標準化などが期待されています。RECAIUS コンタクトセンタープラスは、音声認識技術を使ってリアルタイムに会話音声をテキスト化し、顧客とオペレーターの声を網羅的に可視化。さらに、発話内容とオペレーターが参照したFAQの関連性を学習して賢くなっていく、FAQの自動レコメンド機能も実現したことで、業務の効率化や応対品質の向上、顧客満足度の向上につなげました。コンタクトセンターのさまざまな業務改善ニーズを満たしながら、オペレーターと顧客の声を「価値」へと変えていきます。

このページのトップへ

「RECAIUS コンタクトセンタープラス」を支える技術

RECAIUS コンタクトセンタープラスのFAQ(=よくある質問とその回答集)活用に関する技術をご紹介します。

発話内容に応じてFAQを自動レコメンド。AIが新人オペレーターをサポート

コンタクトセンター業務において、FAQは顧客満足度を向上させる鍵を握ります。オペレーターは、よくある質問を整理して分類されたFAQを手掛かりに、顧客からの問い合わせに対して的確に回答をする必要があります。ベテランのオペレーターは、その経験を生かして適切なFAQをスムーズに検索し、活用することができますが、経験の浅い新人オペレーターにとって顧客に応対しながらFAQを検索することは、非常に難しい業務です。

そこで当社は、高精度の音声認識技術に加えて、発話内容に応じたFAQをAIでレコメンドする技術と、オペレーターの発話や操作履歴からAIの学習データを抽出し、モデルの更新を自動で行う技術を開発。これにより、AIや分析のエンジニアに任せなくても、オペレーターやスーパーバイザー(各オペレーターのモニタリングや支援を行う管理者)がこのRECAIUS コンタクトセンタープラスの利用を重ねることで、FAQのレコメンド精度が自動的に向上していきます。FAQのレコメンド精度が上がれば、新人のオペレーターでもベテランオペレーターのように適切に素早くFAQを活用することができるようになります(図1)。

図1 RECAIUS コンタクトセンタープラス:FAQ自動レコメンド機能

大量の問い合わせから新たなFAQを作成。顧客の声を価値に変える

降幡 建太郎

また、適切に分類された「使えるFAQ」の作成や更新をするには、これまで専門家による高度な分析作業が必要であり、相応の時間とコストがかかっていました。そのため、一度作成されたFAQが更新されにくく、陳腐化したり劣化したりしてしまうという課題があり、「最新の問い合わせ内容に応対できるように、継続的かつリアルタイムにFAQを追加、更新したい」という現場の声を良く耳にします。

そこで当社は、音声認識技術と自然言語処理技術によって問い合わせの内容を把握し、その内容の類似度に応じて自動的にグループ化(分類)する技術を開発。この技術を「RECAIUS ナレッジエディタ」に適用しました。

RECAIUS ナレッジエディタは、大量の問い合わせ履歴から新規にFAQとする候補を抽出し、さらに重要な文章やキーワードを抽出して関連情報とともに表示するため、分析に関する専門的な知識を持たない人でも手軽にFAQを作成し、管理することができます。

RECAIUS コンタクトセンタープラスは、このRECAIUS ナレッジエディタとシームレスに連携し、最新の顧客の声を反映した質の高いFAQを整備して活用していくことができます。

経験の有無にかかわらず、それぞれのオペレーターが質の高い応対を実現し、顧客の信頼を一層深めていけるように、東芝デジタルソリューションズは、今後もRECAIUS コンタクトセンタープラスを中心に、さまざまなAI技術を活用して、企業と顧客の懸け橋であるコンタクトセンターの業務を支援していきます。

そして、そこで培った知識や経験を、さまざまな業種や業務におけるコミュニケーションへのAI活用に広げていきます(図2)。

図2 AI技術を活用し、コールセンター業務をトータルにサポート

*「RECAIUS ナレッジエディタ」については、#04で詳しくご紹介します。

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年7月現在のものです。

関連記事Vol.30:働き方の革新と豊かな暮らしをRECAIUSが実現 人とAIのつながりがもたらすデジタル社会

このページのトップへ