生存時間分析技術 保守部品在庫最適化

生存時間分析技術 保守部品在庫最適化

故障履歴から適切な調達数を予測し部品在庫を最適化

東芝グループでは様々な製品、システムに対して保守サービスを提供しています。お客様へのサービス品質を維持するためには、突発的な故障に備えて一定量の保守部品の在庫が必要です。一方、保守最終期において保守部品が大量に余ってしまうと大きなコストが発生します。東芝デジタルソリューションズでは自社製品であるIAサーバ(MAGNIAシリーズ)の保守履歴データから保守部品種ごとの故障モデルを作成し、故障がいつごろ、どれくらい発生するかを予測し、在庫管理に活用するソリューションの開発を進めています。(図1)

生存時間分析は統計的な分析手法の一つです。疾病が再発するまで、工業製品が故障するまで、離職者が再び職を得るまでなど、着目するイベントが発生するまでの時間、期間をそれらの履歴データからモデル化します。これらの履歴データには、利用開始は記録されているが故障の記録が無いなど、一部が欠損したレコードが含まれていたり、履歴データの量(サンプル数)が少ない事例がしばしばあります。このような事例においても、生存時間分析の一つであるKaplan-Meier法は、故障モデルの生成と精度の高い予測ができます。Kaplan-Meier法を利用してMAGNIAの代表的な保守部品(マザーボード、電源、CPU)の保守履歴データから故障モデルを作成し、生存率をプロットすると階段状のグラフ(生存曲線)が描かれます。(図2) これらの生存曲線を故障モデルとして利用することにより、保守部品の種類ごとに故障確率を求め、指定した期間内での故障数を予測することができます。

MAGNIAシリーズの典型的な保守部品6種(テープ装置、CPU、オプションカード、メモリ、電源、マザーボード)について提案したモデルにより故障部品数をシミュレーション予測し、実数と比較しました。CPUの場合、半期ごとの故障部品実数は、予測値95%信頼区間の上下限値の間にほぼ収っており、確率的に予測できることが分かります。(図3(a)) 累積の予測故障部品数は常に実数を上回り、保守部品の枯渇は発生せず、保守最終期(2015以降)でも保守部品の残数は最小限に抑えられます。(図3(b)) CPU以外の保守部品5種についても同様の傾向となっていることが確認できました。さらに、実際の保守最終期における部品残数を調査したところ、本手法を適用すれば、6部品種の合計で155個、1種あたりの平均30個程度の保守部品を削減出来ることが分かりました。

現在、対象とする保守部品の種類を増やして、実際の部品調達、保守サービスにおける本手法の有用性をグループ会社と連携して検証しています。今後はMAGNIAのみならず、保守部品を必要とする東芝グループ内外の様々な製品、システムに本ソリューションを展開していく予定です。

保守部品在庫管理最適化

過去の保守履歴データから保守部品種ごとの故障モデルを作成し、いつごろ、どれくらいの故障が発生するのかを予測して、適正に在庫を管理します。

保守部品在庫管理最適化のイメージ図

保守部品在庫管理最適化のイメージ図

保守部品の生存率曲線

MAGNIAの代表的な保守部品(マザーボード、電源、CPU)の生存率曲線。横軸は稼働時間[days],縦軸は累積生存率。オレンジの破線はMAGNIAの標準的な保守期間である6年(2190[days])を示します。最初は全ての部品が正常に動作していますが、稼働時間が長くなるにつれて、累積生存率が階段状に低下します。また、生存率の低下の割合は稼働時間で異なります。

保守部品の生存率曲線のグラフ

保守部品の生存率曲線のグラフ

MAGNIA保守部品(CPU)の故障数シミュレーション

提案したモデルにより故障部品数をシミュレーションで予測し、実数と比較した。(a)半期ごとの故障部品実数は、予測値95%信頼区間の上下限値の間にほぼ収っており、確率的に予測できている。 (b)累積の予測故障部品数は常に実数を上回り、保守部品の枯渇は発生しない。また、製品ライフサイクルの終盤(2015以降)でも保守部品の残数は最小限に抑えられる。

半期ごとの故障数予測値(青実線:平均、青破線:信頼係数95%上下限)と実数(赤実線)を表すグラフ画像

半期ごとの故障数予測値(青実線:平均、青破線:信頼係数95%上下限)と実数(赤実線)を表すグラフ画像

(a)半期ごとの故障数予測値(青実線:平均、青破線:信頼係数95%上下限)と実数(赤実線)

累積の予測故障部品数(青実線)と実数(赤実線)を表すグラフ画像

累積の予測故障部品数(青実線)と実数(赤実線)を表すグラフ画像

(b)累積の予測故障部品数(青実線)と実数(赤実線)