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物流IoTソリューション
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TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017 セミナーレポート 「センシングデータから見えてくる輸送品質とその改善に向けて」

更新日:2017年12月5日

2017年11月9日(木)~11月10日(金)、東京・お台場にて「TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017」が開催された。東芝グループの多種多様なIoTソリューションを展示するとともに、東芝グループの社員や関係企業・組織による全27のセミナーも実施。テクノロジーの力を活用して社会課題の解決を目指す同グループの取り組みに関して、活発なプレゼンテーションが展開された。

物流分野からは、東芝デジタルソリューションズの流通・運輸サービスソリューション技術部グループ長・鷲頭幸範氏が登壇。今、業界で注目を集めている「輸送品質管理」の改善・向上に貢献すべく開発された、新しいサービスについて語った。

[イメージ] TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2017 「輸送品質管理」 セミナー

医薬品・食料品の市場拡大と同時に、「確かな輸送品質」への需要も増加

近年、輸送業界では食の安全への取り組み、医薬品輸送へのGDP(Good Distribution Practice)の適用などから、輸送品質管理への需要が高まっている。これを受けて東芝デジタルソリューションズは2017年11月8日、温度管理輸送を必要とする食料品や医薬品などを取り扱う企業向けに「輸送品質見える化・分析クラウドサービス」の販売を開始。輸送環境情報と輸送業務情報の見える化・分析を可能にし、輸送品質の維持・改善活動をサポートする。

当日のセミナーでは同サービスの紹介を兼ねて、開発に至った背景やアセスメントで得られた気づき、今後の展開にまで話が及んだ。

はじめに、「輸送品質とは何か?」について、鷲頭氏は大きく3つのポイントに分けて紹介。「ひとつ目は“納期”の品質。決められた日時にきちんと荷物が届くかどうかは、エンドユーザーの方々が一番気にされる部分だと思います。続いて、“正確性”の品質。当然ながら、正しい荷物を正しい相手に届けることが重要です。3つ目に、“輸送状態”の品質。これも当たり前ですが、指定された輸送状態を維持して届けることが求められています。この中で我々が着目したのは、3つ目の“輸送状態”。具体的には“温度”に焦点をあてて、輸送品質を維持・改善するサービスを検討しました」

温度管理は輸送品質において重要な要素のひとつ。すでに専用のトラックやクーラーボックスなど、温度を維持して輸送するための機材が業界内では浸透している。それに加え、近年の物流業界を取り巻く環境の変化に応じて、実際に正しい温度で運ばれていたかを“見える化”することへのニーズが高まりつつあるという。

鷲頭氏は、温度管理が求められる荷物の代表例として「医薬品」と「食料品」を挙げ、それぞれの業界動向について説明した。

まず、医薬品については“バイオ医薬品”の需要が増加しているが、これらはたんぱく質などの成分を含むことから、一定の温度を維持しないと薬の効用がなくなる可能性があると言われている。「製薬業界の物流障害に関する想定被害は、全世界で年間6億円に及ぶと考えられています。さらに、管理体制が問われた結果、二次被害として工場閉鎖などのリスクもはらんでいます」と鷲頭氏が話すように、安全性が非常に重視される分野だからこそ、輸送品質にも高い精度が求められている。実際、医薬品の流通過程における国際的な品質管理基準「PIC/S GDPガイドライン」では、適切な輸送品質を維持するのは卸売販売業者の責任でもあることが明記されている。このガイドラインは日本でも導入が検討されている。

一方、食料品においても国内の冷凍食品の生産高は年々増加。さらに海外においては経済成長が望める東アジア地域で、今後コールドチェーン市場が伸びると予測されている。こうしたマーケットの拡大に伴い、やはり「食の安全」にも注目が集まっている。
「厚生労働省は各自治体に対して、食品の運送事業者に適切な温度管理を指導するよう通達しています。さらに、製造会社に対しても、運送事業者との間で適切な温度管理を実施することを義務付けています。つまり、食料品も医薬品と同じく、輸送にかかわるあらゆる事業者への責任が増加しているのです」と鷲頭氏。

こうした状況下だからこそ、荷物が適切に輸送されたかどうかを確認・記録する仕組みが必要で、輸送品質を維持・向上させる体制づくりが重要視されているのだ。

[イメージ] 東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルソリューション事業部 流通・運輸サービスソリューション技術部 流通サービス技術担当 グループ長 鷲頭幸範氏

東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルソリューション事業部
流通・運輸サービスソリューション技術部 流通サービス技術担当
グループ長 鷲頭幸範氏

早急かつ多角的な分析で、輸送品質を改善。導入のしやすさにも配慮

同社はシステム開発にあたり、3つの課題を想定したアセスメントを実施。「輸送時と荷役時の温度管理。それから、異なる温度帯の荷物を同時に運んだときの温度管理。そして、作業品質を把握できているかどうかのチェックを行いました」と鷲頭氏。
そして、実際にいくつかのトラックにセンサーロガーを付けて温度データを取得し、さらに運転日報もデータ化。2つのデータを組み合わせて、温度変化が起きたときの配送地点や業務内容などを分析した。

上記アセスメントの結果、いくつかの気づきが得られたと鷲頭氏は話す。
「ひとつは、アイドリングストップを行なった地点での温度変化が顕著であるということ。また、配送先の業務内容と温度上昇に因果関係があることも明らかになりました。さらに、ドライバーさんがドライアイスを用意していたりするなど、各々が独自で輸送品質を維持するための工夫をしていたことも判明。このように、どれも当たり前のことではあるのですが、輸送中の状況を数値として可視化できたため、具体的な改善につなげることができると思います」

こうした検証を何度も重ね、試行錯誤を経て完成したのが「輸送品質見える化・分析クラウドサービス」。トラックに設置したセンサーデバイスと運転日報情報を関係付けることで、輸送温度を逸脱する配送先を特定。拠点別の月次分析などを通して作業手順や計画の変更・見直しを実施し、最適化を測ることができる。

同サービスの大きな特徴を、鷲頭氏はこのように述べた。
「まずは基本的なことですが、適切な温度帯から逸脱している配送先をすぐに検出できるということ。早急に、かつ具体的に改善すべき地点を示せるのが導入のメリットだと考えます。

次に、事前に運転日報の計画データを入れておくことで、配送計画と実績の予実管理ができる点。現実的な計画なのか、逆に余裕がありすぎて無駄な配送時間がないかなど、配送計画の見直しにも一役買えるのではないかと思っています。

もうひとつ、導入のしやすさもポイントです。トラックに取り付けるセンサーデバイスとスマートフォンさえあれば、すぐにこのサービスを使うことができる。小さい拠点で試験的に始め、大規模な複数拠点に段階的に導入することができます。個別のシステムインテグレーションに比較して短期間で輸送環境品質管理の基盤が作れるので、ぜひ気軽にお問い合わせいただければと思います」

[イメージ] センサーデバイスを持つ鷲頭氏

”+α”のデータを模索し、サービス拡張を目指す。AI活用にも期待!

新しく誕生したサービスを掲げ、物流業界が抱える課題解決への貢献を目指す東芝グループ。鷲頭氏はセミナーの最後に、今後の展開についての構想を語ってくれた。
「物流業界へのIoT活用はまだ成長段階にあると考えています。たとえば、今回のサービスでいえば、センサーデータに対して運転日報という“+α”を加えたことがポイント。この“+α”に位置情報や気候情報などを追加すれば、ソリューションの幅はどんどん広がります。今後もこうしたアイデアを検証しながら、輸送品質の維持・改善に寄与するソリューションの開発に注力していきたいと思います」

さらに、鷲頭氏は「先日、当社から新しいアナリティクスAI・SATLYS™がリリースされました。いずれは私たちもこのAIを活用し、AIが輸送品質の答えを出すようなサービスを実現することが、ひとつのゴールになるのではないでしょうか」と、将来的にはAIの導入も検討していることを示唆し、セミナーを締めくくった。

なお、「輸送品質見える化・分析クラウドサービス」は今回のフェアの出展ブースでも紹介。リリース直後ということもあり、説明を受ける来場者が後を絶たなかった。

[イメージ] 「輸送品質見える化・分析クラウドサービス」出展ブース

ブース担当者は、「同サービスの強みは、ひとつの拠点から試験的に導入し、それを全国の拠点に展開することができる点。開発にあたっては、全国展開によって取得するデータが膨大になるケースも想定し、それでも快適に使えるシステムを構築しています。また、現場で実際に使える仕様になっているかを検証し、実務と矛盾しないような要件定義を追求しました」と語ってくれた。

「輸送品質見える化・分析サービス」の詳細はこちらから

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