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問題が顕在化した今こそビジネスチャンス!
倉庫管理システム(WMS)やロボット活用で、
物流業界の課題解決に挑む

更新日:2017年7月18日

生産物を生産者から消費者に届ける「物流」は、経済活動や人々の生活を支える基盤となるもの。だが、近年、この「物流」が大きく揺らいでいる。2017年春闘でヤマト運輸の労働組合が宅配便の荷受量の抑制を求めたニュースに象徴されるように、物流を取り巻く環境は厳しさを増しており、将来的な物流の維持も懸念される。
“物流危機”は、今や国を挙げて解決しなければならない問題であるとともに、企業経営においてもコストやサービス、品質管理などに大きな影響が及ぶため、新たな物流戦略が求められている。

少子高齢化やEC市場の拡大に揺れる物流業界

そこで今回は、物流業界で課題とされている取引環境や長時間労働について、特にドライバーをはじめとする人材不足に関する話題を取り上げ、これらに対して企業や国がどのように改善しようとしているのか、事例を交えて紹介したい。

少子高齢化による人材不足はさまざまな産業で問題となっているが、とりわけ人手に頼ることが多い物流業界は、その影響が大きい。特に「ドライバー不足」は深刻で、国土交通省が2017年2月16日に公表した資料「物流を取り巻く現状について」では、「大型トラックドライバーの年齢構成比率において、2001年は、50歳以上が12.8%、29歳以下が28.5%だったのに対し、2015年は、50歳以上が38.6%、29歳以下は3.2%で、29歳以下の比率が急激に低下している」と報告されていて、今後もドライバー不足に拍車がかかる恐れがある。

その一方で、EC(電子商取引)市場の飛躍的な拡大に伴い、宅配便の取り扱いは増加。国土交通省の資料でも「宅配便の取扱件数は、2010年度が約32.2億個だったのに対し、2015年度は約37.5億個になり、5年間で約12%増えている」というデータが示されている。さらに、共働き世帯や一人暮らし世帯が増え、指定した時間に荷物を受け取れないケースが多くなったことから、「再配達」の問題も浮上。先の資料でも「宅配事業者3社のサンプル調査において、宅配貨物の不在再配達が全体の約2割発生している」と述べている。

さらに、トラックドライバーの長時間労働の大きな要因として、荷主の都合で荷物の積み込みや荷下ろしを長時間待たされる「荷待ち」の問題が深刻化。国土交通省の2015年度調査では、「手待ち時間がある運行での手待ち時間は、1運行あたり平均1時間45分で、うち1時間超が55.1%、2時間超が28.7%、3時間超が15.1%」と報告されており、ドライバーに負担がかかっていることがわかる。

これらの問題以外にも、EC市場の拡大により、単純に荷物量が増えているだけでなく、今やECサイトでさまざまなものが購入できるため荷物の種類が多様化し、入出荷の多頻度小口化が進んでいることも見逃せない。「倉庫管理」の世界はどんどん複雑になっているうえ、現場の人手不足や高齢化も慢性的な問題となっていて、今後いかに効率性を保ちながら、多様化する倉庫管理業務に対応していくかが問われているのだ。

もちろん人手不足やEC市場の拡大だけが、物流業界に影響を及ぼしているわけではない。だが、取引環境や長時間労働の問題は改善が急がれる。では、こうした課題に対して企業や国がどのように取り組んでいるのかを見ていこう。


「ドライバー不足」を貨客混載で改善。政府の取り組みにも注目

ドライバー不足の問題解決の一環として、佐川急便は、2017年4月18日より北越急行と提携して貨客混載列車の運行を本格的に開始。「旅客列車を利用し、新たな輸送サービスを提供するとともに、輸送の効率化を図る」と述べている。似たような取り組みはヤマト運輸も行っていて、九州や北海道などで路線バスと連携し、バスの座席の一部を荷台スペースにした車両を導入して荷物を運搬している。鉄道やバスといった既存の交通インフラを利用しながらドライバー不足を補うことは、物流業界にとってメリットがあるだけでなく、過疎化が進む地域の交通網の維持にもつながるだろう。

交通インフラにおける工夫に加えて、ドライバー自体を増やすことも急務だ。国土交通省は、女性のトラックドライバーを増やすために「トラガール促進プロジェクト」を推進。トラック業界全体で2.4%の割合(約2万人・2013年時点)に過ぎない女性ドライバーを、2020年までに4万人にする施策を打ち出し、Webサイトを設けて運転免許の種別ごとの取得方法や採用に関する情報、現役女性ドライバーの声などを掲載して啓蒙活動を行っているほか、女性ドライバーが働きやすい環境整備を経営者に働きかけたりしている。女性の登用はもちろんのこと、次代を担う若年層のドライバーを増やすための取り組みも必要だ。こうした施策はイチ企業だけで成り立つものではないので、政府のサポートによる新しい仕組みづくりや労務環境の改善に今後期待したい。


「荷待ち」解消をめざし、2017年7月に法改正。
官民一体でパイロット事業も開始

近年、注目が高まりつつあるトラックドライバーの「荷待ち」の問題に対して、政府は活発な動きを見せている。国土交通省や厚生労働省は、ドライバーの労働環境の改善に向けて、荷主とトラック運送事業者に加え、労働組合や学識経験者、関係行政機関などからなる協議会を国や地方に設置。中央と地方で連携して、環境改善に向けた取り組みに着手し始めている。

例えば、発荷主、着荷主、運送事業者の3者を一つの対象集団とした上で、そこにコンサルティング会社を加えてプロジェクトチームを作り、パイロット事業を展開。チーム内で問題点を把握し、改善策を検討。さらにコンサルティング会社が各事業場を訪ね、改善策の実施具合を確認して、効果測定や検証を行っているようだ。

さらに、国土交通省は、「貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令」を、2017年7月1日に施行。これは、「トラックドライバーが車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラックに乗務した場合、荷主の都合により、30分以上待機したときは、<集貨地点等、集貨地点等への到着・出発日時、荷積み・荷卸しの開始・終了日時>などを乗務記録の記載対象として追加する」というもの。荷待ち時間等の記録義務付けによって、トラックドライバーの「荷待ち」の実態を把握するとともに、長時間にわたる「荷待ち」を生じさせている荷主に対し、勧告などを行う際の判断材料とする。

「荷待ち」を改善するためには、運送事業者と荷主双方の努力が必要なだけでなく、労働時間や労務環境などの問題も絡むため、行政の力も欠かせない。今後も官民一体となった活発な取り組みに期待したい。


最新技術で庫内業務の負担を軽減。
倉庫管理システム(WMS)の可能性にも注目!

「倉庫管理」における課題は、先述した多頻度小口化や人手不足のほかにも、従業員の多言語対応や、新たな人員への教育体制、コールドチェーン品質管理など、多岐にわたるが、今回は解決に挑む手段のひとつとして、ロボットを活用した事例を紹介しよう。

家具やインテリア用品を販売しているニトリグループの物流会社である株式会社ホームロジスティクスは、2016年2月より神奈川県川崎市の通販発送センターで「積み木型ロボット倉庫」の稼働を開始した。これは、隙間なく積み上げられたコンテナの上をロボットが縦横無尽に走行し、目的の商品が入っているコンテナを吊り上げて作業員のいるスペースまで運ぶというもの。導入以前は作業者が倉庫内を歩き回って棚から商品を選び出していたが、これをロボットに任せることで作業効率の向上が見込めるほか、コンテナを積み上げることで在庫面積の削減にもつながることが期待されている。

現状の倉庫作業は人海戦術で行うケースが非常に多く、商品の取り違えや破損、品質劣化などのミスも許されないので、人手も時間もかかる。EC市場の拡大などにより、今後ますます荷物量が増えて多様化が進めば、現場はさらに疲弊してしまうだろう。それを防ぐための手段として、ロボットを使って作業員の負担を減らしたり、AIやビッグデータを活用して効率化を図ったり、最新技術を駆使したソリューションが今後ますます重要になっていくことは間違いない。

テクノロジー活用の一環として、物流情報処理に特化した倉庫管理システム(WMS)を導入するのも有効な手段だ。入荷から入庫、棚卸、出荷に至るまでの庫内業務に関するあらゆる情報を「見える化」することで、作業効率化はもちろん、先述した荷物の多頻度小口化への対応や従業員の多言語対応、「荷待ち」時間の短縮など、物流業界が抱えているさまざまな課題解決に貢献する可能性を秘めている。

物流を取り巻く変化に対して、国や企業がどのように取り組んでいくかが問われている昨今。課題は山積みである一方、この潮流をチャンスとしてとらえ、効率のよい物流システムを構築できれば、商品やサービスの向上につながり、ビジネスの可能性は大きく広がる。そのためには、これまでマンパワーに頼ってきた部分や、効率性や生産性が不透明になっていた部分に対して、テクノロジーを最大限に活用し、ITの力と人間の力の融合を図ることがカギになるだろう。


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