平成30年度診療報酬改定の概況と調剤業界におけるインパクト|重症化予防ソリューション|東芝デジタルソリューションズ
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インタビュー 日本調剤株式会社様 第1回

平成30年度診療報酬改定の概況と調剤業界におけるインパクト

2年に一度行われる診療報酬改定の内容が決定したが、なかでも調剤薬局に対しては適正化の措置が図られるなど、内容的には厳しい印象となった。そんな診療報酬改定について紐解いていきながら、調剤の現場はどのような施策に取り組んでいるのか、保険者にも関わるその実態について紹介しよう。

平成30年度における診療報酬改定の概要

2018年(平成30年度)、2年に1度行われている診療報酬改定のタイミングを迎えた。今回の改定は、団塊の世代が75歳以上となる2025年とそれ以降の社会・経済の変化や技術革新への対応に向けられたものとなっており、効率的な医療体制を整備しながら、新たなニーズに対応できる質の高い医療の実現を意識した内容となっている。特に、人生100年時代を見据えた社会の実現などを前提に、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」「新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実」「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」」「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」が基本的な方向性として位置付けられている。

具体的な数字を見てみると、診療報酬本体は全体で0.55%のプラスであり、医科・歯科・調剤ともに診療報酬はプラスの改定率だ。しかし、薬価等については、薬価で1.65%のマイナス(実勢価格等改定で1.36%のマイナス、薬価制度の抜本改革で0.29%のマイナス)となり、材料価格も0.09%のマイナスとなった。さらに、「大型門前薬局に対する評価の適正化の措置を講ずる」と明記されるなど、門前薬局に対しても厳しい改定状況となったといえる。

特に調剤基本料については、新たに点数を減算する点数が新設されている。具体的には、薬局グループ全体での処方箋回数が40万回/月を超えており、処方箋集中率が85%超、医療モールなど特定の医療機関と賃貸借関係がある保険薬局が減算対象となる。特に処方箋回数については大手調剤チェーンの上位がほとんど該当することになってくる。実際に全国に調剤薬局を展開している日本調剤株式会社(以下、日本調剤)でも当然ながらその影響は避けられず、おそらく大手調剤チェーンのほとんどが今後減収減益になるのは間違いないと語るのは、日本調剤株式会社 薬剤・薬剤受託担当 常務取締役 深井 克彦氏だ。ただし今回の改定も含めて、以前から業界全体の潮流は変わっていないと語る。「我々が目指すところの基本は、患者本位の医薬分業の実現に向けて厚生労働省が示した『患者のための薬局ビジョン』です。今回の改定では地域支援体制加算が新たに加わりましたが、まさに地域包括ケアシステムの実現に向けた動きといえます」と深井氏は分析する。

深井克彦氏

常務取締役
深井克彦氏

実際には地域包括ケアシステムのなかで、患者が医療機関を受診する前から関わり、調剤後も継続的に患者の服薬情報を把握する薬剤師の姿を求めており、その実現に向けて調剤報酬の面で後押しする形となっている。また、外来だけでなく在宅医療も含め、ポリファーマシーや残薬、副作用報告など、薬剤師が医薬品の安全対策の中心的な役割として機能することも求められている。
例えばポリファーマシーに関しては、医療機関と連携し、6種類以上の内服薬が処方されていた場合に、薬剤師が文書を用いて提案したうえで2種類以上減薬できた場合には特定の薬学管理料が算定される。また服薬情報提供料を2段階に分け、調剤後も患者の服用薬の情報などを把握し、医療機関に情報提供を行った場合の点数を新設している。調剤後も薬剤師が患者の状況を把握することで、患者自身が治療方針の決定に参加して治療を受けるアドヒアランスの向上や重複投薬・相互作用を防止することに期待を寄せている状況にある。

もっともインパクトがあるのは、基準調剤体制加算を廃止して新設された地域支援体制加算だろう。地域支援体制加算は、一定時間以上の開局や医薬品備蓄などの体制を整備しただけでは算定されない。常勤薬剤師1人当たりで計8項目の「実績要件」を満たす必要があるなど、難易度の高い実績が要求される。

まさに今回の改正でも、『患者のための薬局ビジョン』で示した、立地から機能や質、対物業務から対人業務に大きくシフトしていくことが求められているわけだ(なお、調剤基本料1を算定している保険薬局については、麻薬小売業者の免許を受けている等といった3基準を満たしていれば「実績要件」は適用されない)。

日本調剤が取り組む、地域連携における新たな調剤薬局の姿

調剤各社が厳しい状況にあるなかで、日本調剤では、国が取り組む医療費削減に向けたジェネリック医薬品(後発医薬品)使用の促進や薬剤師訪問サービスなど在宅医療への取り組み、かかりつけ薬剤師制度の拡充などを業界に先駆けて進めており、国が進める2025年の地域包括ケアシステムの実現に向け、医療機関との連携も強化している状況にあるという。「ジェネリック医薬品については、すでに84%ほどに達している状況で、業界においても2020年目標に向けて達成しつつあるのは我々だけ。在宅に取り組む店舗もすでに97%に達し、かかりつけ薬剤師としての同意件数も38万件を超えています。同意件数や累計の算定実績も、競合他社に比べて倍以上の差が出てきています」と深井氏は日本調剤の取り組みを説明する。

特に日本調剤が手掛ける、かかりつけ薬剤師制度を加速させていくためには、薬剤師自身のレベルアップはもちろん患者からの信頼獲得が何よりも欠かせない。そこで日本調剤が長年取り組んできたのが、薬剤師における人材教育の強化だ。1994年ごろから社内教育に積極的な投資を進めてきており、2013年からは社内のみならず病院継続的実務研修(HCBT Hospital Continual Business Training)と呼ばれる社外教育にも注力。病院における業務全般を通じて、今後地域包括ケアシステムに欠かせない医師との連携を意識した人材教育を行っている。また2018年からは薬剤師ステージ制度「JP-STAR」を創設し、キャリアアップ支援や各種認定制度を通じて薬剤師の地位向上に努めている状況にある。

また、47都道府県すべてに調剤薬局を展開している日本調剤では、統制の取れた環境で全国均一のサービスを提供するITC(Integrated Task Control)に取り組むことで、顧客の安心・安全に応える環境を整備していると深井氏は力説する。「数多くの店舗を展開している調剤チェーンもありますが、我々はご利用いただく方にご満足いただけるよう、店舗自体の質、薬剤師の質を担保することを心掛けています。長時間労働の撲滅といった働き方改革も含め、我々が重視する法令順守という観点でもITCでの店舗展開は意義のあること。全国で質の高いサービスを均一にご利用いただけることで、お客さまの信頼醸成につなげているのです」。利用者の利便性向上にも取り組んでおり、スマホでいつでも簡単にお薬情報を管理できるアプリ「お薬手帳プラス」を提供するなど、ICTを積極的に活用している点も日本調剤の大きな特徴の1つとなっている。

ほかにも、日本調剤が取り組む施策の1つに、薬局内で展開している「健康チェックステーション」と呼ばれるものがある。これは、自分の健康状態をチェックできる測定機器や相談ブースを薬局内に設けることで、処方箋の有無にかかわらず気軽に薬局に立ち寄ってもらえるような施策となっており、2016年12月から藤沢薬局にてスタートしたものだ。健康チェックステーションでの取り組みを推進している、薬剤本部 薬剤管理部 管理課 課長で管理栄養士の皆川 紘美氏は「厚生労働省が示した薬局ビジョンのなかで、薬局に健康サポート機能を備えることが示されています。そこで管理栄養士を新たに採用し、運動や食事の面での健康支援を行う環境を整備しています」とその取り組みを説明する。未病の状況でも薬局に訪れてもらえるよう、健康寿命に欠かせない筋肉量を測定する体組成計などを用意し、管理栄養士が健康に関する相談に応じる環境を整えている。「日頃から日本調剤にお越しいただけるよう、積極的にイベントを開催するなど、地域における連携を通じて健康を支援しています」。

皆川紘美氏

薬剤本部 薬剤管理部 管理課 課長
皆川紘美氏

まさに地域に根差した活動として、学校や地域包括ケアセンターとの連携を図っていきながら、健康チェックステーションが地域のハブとなるような形にしていきたいという。「日々の健康サポートはもちろんですが、血液の検体検査などを通じて、薬剤師が受診勧奨などを行うという役割も重要な地域連携の1つ。受診勧奨を積極的に行うことで、糖尿病をはじめとした重症化予防にもつながるはずです」と今後の活動について皆川氏に語っていただいた。

健康チェックステーション

今回は、2018年度診療報酬改定の概況とともに、地域医療連携を含めた日本調剤の取り組みについて紹介した。次回は、日本調剤が実施しているデータヘルスにおける取り組みと、東芝デジタルソリューションズ株式会社が手掛ける重症化予防ソリューションとのかかわりについて見ていきたい。

ライタープロフィール

フリーライター:てんとまる社 酒井 洋和

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