重症化予防ソリューション

お客さまインタビュー 東芝健康保険組合様

データ活用による糖尿病重症化予防事業を実現

2014年、当時30万人の加入者を担っていた東芝健康保険組合(以下、東芝健保)では、重症化する恐れのある糖尿病リスク者を選定し、受診勧奨までを行うという保健事業に着手した。
その際、東芝健保が選択したのが、東芝デジタルソリューションズ株式会社(以下、東芝デジタルソリューションズ)の提供する重症化予防ソリューションだ。
その具体的な取り組みとは?

糖尿病の重症化予防に着目、データヘルス計画の主題に


2014年以前、同健保では加入者の健康改善・維持の施策として、人間ドックなどの各種補助金や、健康情報の提供を行っていた。しかし「そうした取り組みだけでは実効性を実感できなかった」と理事長を務める木村文裕氏は、当時を振り返る。

木村氏:
「重症化予防の必要性が高い疾病として、糖尿病が挙げられます。糖尿病はそもそも本人に自覚症状がないため、健康診断の結果が悪くても即通院するという行動にはつながりにくい病気です。そのため、本人の気付かないうちに進行してしまい、失明や足の切断、さらには生涯人工透析という非常に重篤な事態を招く恐れがあります。こうした状況は、ご本人だけでなく、ご家族にも大きな負担を強いることになります。そのため、実効性のある重症化予防の必要性をずっと感じていました」

一方、2013年6月、厚生労働省よりデータヘルス計画の作成と施策実行が要求される。

木村氏:
「データヘルス計画は、加入者の健康診断の結果やレセプトなどのデータを活用し、PDCAサイクルを回して保健事業の実効性を高めていくことが狙いです。東芝健保として、計画の主題として何を据えるのか、模索を始めていました」

ちょうどその頃、約1万人を対象に事業部・事業主・健保の三者共同で重症化予防の実証実験を行うことになる。

1万人を対象に効果を検証、大幅に改善した糖尿病リスク者も


木村氏:
「実証では各事業所の産業医のフォローもあり、対象者の実に96%が、受診勧奨に応じてくれました。一般的に3割応じてくれれば上出来と言われる中で、これは画期的な数字です。また受診勧奨を断った人でも、のちのレセプトデータから病院に行ったことがわかることもありました。別の見方をすれば、当人に“あなたは糖尿病リスク者ですよ”という通知を行うだけでも効果があるということです。まさにデータ活用による新たな保健事業の可能性が見えた結果です」

全面導入へのためらいと、決め手になった一通の手紙


理事長
木村文裕氏

実証実験の結果を以って東芝デジタルソリューションズから糖尿病リスク者の抽出と対象者への受診勧奨事業の本格実施の提案がされた。
木村氏は糖尿病重症化予防事業の実施を検討するが、一方で全加入者30万人にまで拡大することには、事業リスク的に非常に大きなためらいがあったという。それを払拭してくれたのが、実証により治療を開始し、数値が大幅に改善した50代男性からのお礼の手紙だった。

木村氏:
「その方はHbA1cの値が非常に高く、就業制限がかかっていたのですが、受診勧奨によって保健師との面談を行い、毎月1回の通院と、生活習慣の改善を行ったことで、見る見るうちに数値が改善されました。そして最後に、“是非これからも、同じような従業員を救うために本事業の推進をお願いします”とのコメントをいただいたのです。これが決め手でした。糖尿病重症化予防事業を実施すれば、たとえ一人でも糖尿病リスク者の方を救うことができる。これは全体で実施すべき施策で、限定すべきではないと。従業員とご家族も含めて、全員を対象に導入することを決定しました」

東芝健保は2014年度から40歳以上の全加入者を対象に糖尿病重症化予防事業を開始した。

重症化予防ソリューションの導入後、
抽出したリスク者の人工透析への移行者はゼロ


東芝デジタルソリューションズは東芝健保の実績を基に2015年2月に重症化予防ソリューションを正式にリリース。 重症化予防ソリューションは、医療保険者向けの保健事業支援サービスで、まず健保が糖尿病リスク者だと考えるHbA1cの値を設定し、加入者の健診データからHbA1c値がその値を超えており、かつレセプトデータから未治療の人・十分な治療を受けていない人を抽出するものだ。特に抽出条件は、顧客ニーズに応じた細かな設定が可能である。例えば、分析期間やHbA1c値以外の健診値との組み合わせ、糖尿病治療回数など、顧客が抽出したい対象者の条件を細かく指定することができる。

木村氏:
「今まではそもそも健診データとレセプトデータの突き合わせができていなかったので、受診勧奨さえできていませんでした。しかし重症化予防ソリューションの全面導入後、例えば2016年度では、糖尿病リスク者として受診勧奨を行った163名中、実際に71名が受診されました。つまり今まではリスク者として特定することができていなかった人たちが163名もいたということです」

また、木村氏は、東芝デジタルソリューションズの専門医につなげる受診勧奨事業者紹介についても高く評価している。

木村氏:
「ただ単に病院に行ってくださいと言っても、どこに行けばいいのかわかりません。また、自宅近くの病院で、とりあえず経過を見ましょうとだけ言われたと苦情が来たこともありました。やはり治療効果の高い専門医に診てもらえるかどうかが非常に重要です」

今後の課題は「受診勧奨後の未受診の人たちにどう対応していくか」


システム担当 保健・データヘルス事業担当 グループ長の森安満明氏は今後の課題をこう述べている。

森安氏:
「受診勧奨に応じてさえもらえれば、専門医をご紹介したり、食事や運動指導をしてもらうことができます。それは糖尿病のリスクから脱出してもらうことにつながります。数値改善を最終的な成果とした上で、どのような施策を打てば未受診の人たちが次の一歩を踏み出してもらえるか。今後の保健事業における重要な課題として位置付けています」

そして2018年からは、第2期データヘルス計画が開始される。

木村氏:
「今は受診勧奨後に受診に至った人数と、その人たちのHbA1c値の推移を見ていますが、東芝デジタルソリューションズの重症化予防ソリューションでは、我々のニーズに応じて細かいデータ抽出条件を設定することができるので、現加入者25万人全体に対する糖尿病リスク者の比率がどう変化しているかなどのデータも取っていきたい。また、これからも重症化予防ソリューションを利用した現在のデータ活用の取り組みを、腰を据えてじっくりと継続していくことが重要だと考えています。その中で東芝デジタルソリューションズには、さまざまな取り組み事例も教えていただき、私たちの保健事業を引き続き支援してもらいたいと思います」

システム担当
保健・データヘルス事業担当 グループ長

森安満明氏

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