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With/Afterコロナ時代がもたらした変化と企業が進むべき道(前編)

テクノロジー、経営
2020年7月30日

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、世界秩序・グローバル経済・社会の枠組み・働き方・人と人の関わり・生活・価値観などにも大きな変化が起こりつつある。この変化と企業が進むべき方向性について、東芝デジタルソリューションズ株式会社(TDSL) IoT技師長 中村 公弘と、同社 ICTソリューション事業部 ソリューションビジネスユニット 統括責任者 甲斐 武博に話を聞いた。前編では、With/Afterコロナ時代に求められる企業経営のあり方や対処すべき課題について取り上げて紹介する。        

東芝デジタルソリューションズ株式会社 IoT技師長 中村 公弘  
東芝デジタルソリューションズ株式会社  IoT技師長 中村公弘

■価値観や常識、文化も変えてしまった新型コロナウイルス感染症の今

編集部:最初に、新型コロナウイルス感染症が社会にどんなインパクトを与えたのか、どのように分析しているかについてお話しいただけますか。

中村:新型コロナウイルス感染症は、世界秩序やグローバル経済の枠組みだけでなく、働き方、人と人との関わり、生活、価値観までをも変えてしまうほど大きなインパクトを与えています。一方で、テレワークの急速な拡大に見られるように、社会や生活、仕事など、さまざまな場面へのデジタルテクノロジーの実装を急激に進めざるを得ない事態も招いています。人と人との接触や移動の制限が続くなかで、企業経営や事業運営、そしてサプライチェーンに対する影響も大きく、新たな課題も顕在化しているのが今の状況です。
世界中で、非常に広い範囲で起きた/起きつつある変化を、全体として俯瞰してとらえるアプローチが、これからの経営・事業を考えるために必要になってきていると考えています。

編集部:少し具体的にひも解いていただけますか。

中村:例えば、世界のあり方については、これまではグローバリズムで世界中がつながった1つのマーケットととらえられてきましたが、新型コロナ禍でサプライチェーンが寸断し、特定国に頼っていた医療品や生活必需品などが不足する事態が起きてしまい、国民の生活・医療など最低限必要なものは自国でつくる「自給国家」という考え方が出てきました。また米中貿易戦争に端を発して、「米中デカップリング(分断化)」と呼ばれるような情勢になっています。さらに民主主義で時間をかけて合意形成するよりも、中央集権で迅速に対策を決め国民を監視するようなやり方で感染拡大を防止した事例も出て、改めてそのあり方が問われ始めています。世界秩序は新たな枠組みに向かっていると言えます。
経済面でも、さまざまな産業が需要の蒸発によって大きなインパクトを受け、世界全体が戦後最悪の景気後退と言われる状況になっています。これに対応するため世界各国・地域で空前の経済復興対策が打ち出されており、なかでもグリーンニューディールによる環境・気候変動対策に重点が置かれ、日本ではデジタルニューディールと言われるデジタル化の推進施策が展開されています。
社会・生活面では、人との関わり方や習慣に新たな常態(「ニューノーマル」)が求められるようになり、「非接触」、「非対面」、「ソーシャルディスタンス」や「3密防止」などが日常的に行われる必要があります。持続可能な社会を目指したSDGsへの関心がこれまでになく高まっていることも変化として見てとれます。
価値観や生き方といった視点では、新型コロナの負の影響を長期にわたって受けてしまう世代が出現しつつあり、「Generation C(コロナ世代)」といった言葉も登場しているほどです。まさに、新型コロナは我々の価値観、マインドセット、生き方、文化にまで大きな影響を与えているのです。

編集部:テクノロジーや事業、働き方といった視点からはいかがでしょうか。

中村:テクノロジーの面では、人と接触せずに、移動しないで済むよう、リモートモニタリング、リモート制御、ロボット、ドローンなど、「遠隔化」、「省人化」、「自動化」、「スマート化(知能化)」といったキーワードで表されるテクノロジーが次々に社会実装・実用化されています。
企業活動の面では、突然、想定もしなかった“戦時”体制に放り込まれ、どの企業もリスタート戦略を描き、実行に移しています。そこでは事業オペレーションやサプライチェーンを堅牢(レジリエンス)にしていくことが求められています。企業ビジョンもこれまでの株主第一主義から、従業員や顧客・地域社会を重視する「ステークホルダー資本主義」・社会第一主義であることが求められるよう変わってきており、これからは企業のあり方・社会的存在としての企業の存在意義を問われる傾向が一層加速し、ESG/SDGs経営に取り組む企業が一層増えると考えられます。
新たな働き方・社会を変えるITという視点では、リモートワークの常態化でフルクラウドやRPAなどによるデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、リモート環境でのセキュリティの確保や、従業員の健康・安全の確保をどう行うか、それに伴うプライバシーの課題も浮き彫りになっています。そして、「巣ごもり需要」などの需要の変化・新たな需要が発生し、オンラインショッピングが活況を呈すなど、デジタルを上手に活用しながら新たな需要に対応していくことが、まさに今の企業に求められているのです。

■時代の急激な変化のなかで企業に求められること

編集部:そんなWith/Afterコロナの変化に対して、企業にはどのようなことが求められると考えていますか。

中村:新たな世界秩序、大きく変化するグローバル経済に「備える」こと、「ニューノーマル」な社会に迅速に「適応する」必要があります。同時に、新たな時代に向けた企業ビジョンを明確化し、事業運営やサプライチェーンのレジリエント化を進めること、そしてデジタルテクノロジーを新たな業務や事業に実際に使っていく必要があります。リモートワークやリモートマネジメントなどを高い生産性で実現し、新しいビジネスモデルを作り上げていくことが不可欠となってきます。

編集部:今回のような有事に対応すべく、東芝グループでは、出社せずとも業務を継続させるための環境づくりを急ピッチで進めました。デジタルテクノロジーの有効性を改めて認識した気がします。

中村:新型コロナによって、デジタル化が有効であることが立証されたと考えています。元々は人と人とが接触しないようはじめたテレワークやリモートモニタリングにより、通勤や移動に時間が取られず、かえって生産性が向上したり、場所や時間、会議への参加人数にも制限がなくなるなど、オンライン環境でのビジネスが活発になっているのがその表れです。
また、感染拡大を封じ込めた国では、行動追跡とデータ解析、すなわちIoTでのデータ収集とそのデータを分析・活用することで、クラスターを抑え込むことに成功しています。ヒトやモノ、設備、環境などをモニタリングし、そのデータを基に分析することの価値が改めて立証されたと言えるでしょう。
同時に、ロボットやドローン、リモートモニタリングなどの仕組みが一斉に社会実装されて実用化されたことや、デジタルやネットワークを間に介在させることで人同士が接触せずに済むようになったことをみても、デジタル化の有効性は明らかです。

編集部:デジタル化が有効だと立証された一方で、デジタル化に向けた新たな課題も顕在化したのではないでしょうか。

中村:確かに顕在化した課題がいくつもあります。例えば、ハンコや対面主義といった旧制度や古い仕組みが、デジタル化に向かう障害として明らかになっただけでなく、オンライン診療等にみられる従来の規制の問い直しも必要でしょう。
従業員の安全や衛生の確保をどうするのか、サプライチェーンリスクをどう軽減するのかといった事業リスクへの備えが重要であることが再認識されました。従来は無駄を省くリーン経営を目指してきたわけですが、想定しなかった事態に備えるための “余力”や“予備”を持ち、事前に想定しておくが求められるようになりました。
またデジタル化に伴うセキュリティ問題やプライバシーはもちろん、トラストワージネスなども注目を集めており、これらの課題をうまく解決していきながら、デジタルの良さをさらに生かし、生産性や堅牢性、事業継続性を高めていく必要があるのです。

東芝デジタルソリューションズ株式会社 インダストリアルソリューション事業部 ソリューションビジネスユニット 統括責任者 甲斐 武博  
東芝デジタルソリューションズ株式会社 ICTソリューション事業部 ソリューションビジネスユニット 統括責任者 甲斐武博

■東芝が実施してきた取り組みは?

編集部:新型コロナによる社会や経済へのインパクトや企業の課題について語っていただきましたが、東芝グループとして実施してきた取り組みを紹介してください。

甲斐:従業員と社会の安全確保に向けた取り組みをいくつか紹介します。
東芝グループでは従業員の安全確保と事業継続(BCP)を目的に、2月に「総合COVID対策本部」発足しましたが、当社の取組みをいくつか紹介します。
まず1つが、徹底した出社抑制です。東芝グループは、いち早く在宅勤務の徹底を世の中にメッセージとして発信しており、緊急事態宣言中は出社率を20%以下にしました。また、最大限の接触削減を目指し、4月後半を休みにするという年間休日カレンダーの見直しも行い、その間は自宅で過ごしてもらうなど、外出自粛に努めました。6月以降は出社する従業員も増えていますが、テレワーク可能な従業員はそのまま在宅勤務を続けています。さらに、コアタイムのないフレックス制や変形労働時間制など接触機会を削減する勤務制度の検討も進めているところです。更なる社会貢献としては、抗原検査キットの製造協力や、新入社員研修の滞りを解消できるように企業へのeラーニング講座の無償提供なども行いました。
当社がテレワークにスムースに移行できた背景には、厚労省の「働き方の未来2035」に基づき働き方改革を進めながら、多様な働き方に合わせ柔軟に対応できる利用基準を策定し、オンラインコミュニケーションツールの活用が円滑に行えるような職場環境をつくってきたことがあります。これが従業員のテレワークに対する意識ハードルを下げ、またネットワークインフラの準備にもつながっていったと考えています。

 後編では、With/Afterコロナ時代における、東芝グループが提供できる価値について取り上げます。

執筆:てんとまる 酒井洋和
  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年7月現在のものです。

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