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セカンドステージへと向かう東芝のCPS戦略の取り組み
(後編)

イノベーション, テクノロジー
2020年3月31日

 ヒト、モノ、システムなどいろいろなモノが繋がり、デジタルテクノロジーが社会実装されていく令和の時代。企業のIoTを活用したデジタル化の取り組みはセカンドステージに進もうとしているが、そのためには乗り越えなければならない壁がある。セカンドステージに進むために必要となるのは、「オープンなアーキテクチャー」「データ活用の基盤づくり」「製品・設備のインテリジェントアセット化」である。
 東芝では現在、これらを整備し、それに則ったソリューションの提供を開始しつつある。その取り組みの概要と今後の展望について、東芝デジタルソリューションズ IoT技師長 中村公弘が解説する。

東芝デジタルソリューションズ株式会社 IoT技師長  中村公弘
東芝デジタルソリューションズ株式会社 IoT技師長 中村公弘

さまざまなプレイヤーやパートナーと協働するための「オープンなアーキテクチャー」

 IoTによるデジタル化のセカンドステージに進むためのポイントは3つあります。第一のポイントは、他社も含めて一つのサービスとして顧客に提供できるオープンなアーキテクチャーです。

 東芝は2018年にまず「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー(Toshiba IoT Reference Architecture)」を整備しました。これはグローバルにさまざまなプレイヤーやパートナーと協働していくためのフレームワークですが、例えば「弁当箱」のように、誰でも具材を詰めていけるように枠組みをきちんと定義することが重要です。そして2019年に、このリファレンスアーキテクチャーに則った実装モデルを策定しました。それが「東芝IoTリファレンスインプリメンテーション(Toshiba IoT Reference Implementation)」です。

 「東芝IoTリファレンスインプリメンテーション」には大きく3つの特長があります。まずは弁当箱の枠に入るソフトウェアの再利用性と生産性を高められるよう、オープンアーキテクチャーを採用していること。次にコンテナ化に基づくプラットフォームを採用しており、各アプリケーションサービスが仮想化され、いろいろなプラットフォーム上で動くよう、ポータブルなサービス、モジュールになっていることです。そしてセキュリティにも配慮し、業界標準であるIEC 62443やNIST SP800-82に則った実行環境を提供していることです。

 「東芝IoTリファレンスインプリメンテーション」を既に適用した事例も登場しています。例えば、ビルマネジメントへの適用では、クラウドベースでさまざまなビルからAPI経由でデータを集めて、BaaS(Backend as a Service)としてエンドユーザーに多様なサービスを提供するというものがあります。さまざまなデータを蓄積するとともに、各サービスをコンテナ技術を用いてマイクロサービス化し、再利用性を徹底的に高めています。

 現在までに「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー」に沿った12のリューションを開発しました。エネルギー領域向けには、エネルギーシステムIoTソリューションを提供します。これは、オープンAPIにより、発電プラントの最適化や最適なメンテナンスを行うサービスです。社会インフラ領域では、東芝キヤリアが熱源空調遠隔管理サービスを開発しました。これは、産業用熱源機器を最適運転でエネルギーコストが削減できるサービスです。またビルファシリティの分野では、「東芝共通データプラットフォーム」を使った、ビル設備のマネジメントだけではなく、混雑情報や空席情報など、ビルを利用する人に向けたビルウェルネスサービスを開発しています。ものづくり領域では、製造業向けIoTサービス「Meister Cloudシリーズ」を2019年12月にリリースしました。これは従来、大手企業向けに提供していたオンプレミスのソリューションをバリューチェーンにまで拡大したサービスです。O&M(Operation & Maintenance)の領域では、設備メーカーと工場オーナー間のプラットフォームを提供するなど、機能を拡大。クラウド上で、より精緻なトレーサビリティや、5M1E(人:Man、機械・設備:Machine、方法:Method、原料・材料:Material、測定・検査:Measurement、環境:Environment)の視点でさまざまなセンシングデータの見える化を実現しています。

将来にわたりビジネス変革を支える「データ活用の基盤づくり」

 IoT化のセカンドステージに向けた第二のポイントは、将来にわたってデータを活用でき、ビジネス変革を支え続けるデータ基盤をきちんとつくっていくことです。

 東芝では「デジタルツイン」と呼ぶ、現場の事象と既存のシステムのデータを関連付けて新しい価値を創出するための統合データ基盤を提供しています。ヒト、マシン、マテリアルなどのセンシングデータを自動収集し、同じ時間軸上でプロット。そして既存の業務システムのデータを組み合わせ、AIで解析することで、新しい意味を見つけ、現実世界へフィードバックするという、たゆまぬ改善を行えるようにするための仕組みでもあります。すでにソリューション化され、半導体、電子部品、自動車、自動車部品メーカー、ロボットメーカーなどで活用が始まっています。

 このデジタルツインを活用すると、膨大なデータの中から因果関係を見つけたり、微細な変化を捉えたり、発生した事象を記録して詳細にトラッキングしたり、トレーサビリティしたりすることができるようになります。また、AIを使うことで匠の技を再現することも可能となります。私たちはヒトの仕事をAIに置き換えるのではなく、人の力を拡張し、さらにパワーアップできる方向でAIを活用していきたいと考えています

 また。デジタルツインは、AIや機械学習の基盤としても活用できます。これまでAIや機械学習が進まなかった要因の一つは、活用できるデータが網羅的に整備されていないことでした。東芝が提供するデジタルツインでは、オペレーションの状態とイベント情報が関連付いて把握できるように工夫されています。このようにデータが関連付いて蓄積されていくと、機械学習も、より効果的に使えるようになってきます。最終的には自律運転・自律制御といったオートノミーの世界を目指して発展させて行きます。

製品・設備をサイバーに繋ぐための「インテリジェントアセット化」

 第三のポイントは、製品や設備をサーバーに繋ぎ、現場での使われ方・状態を詳細に把握できるよう「インテリジェントアセット化」することです。これを実現するために、インダストリー4.0の管理シェル(Asset Administration Shell)の考え方を採用しています。これを採用することで、メーカーと工場・プラントのデータがシームレスに繋がるので、設備データの活用が進むようになります。自社だけでなく他社の機械や設備の状態も見えるようになります。2019年のハノーバーメッセでは、「Asset Administration Shellエクスプローラー」というツールが登場しました。機器構成や図面、CADデータなどのメーカーの情報とオペレーションの情報を一括で管理することで、工場やプラント全体の運転、保守を最適化できるように工夫されています。

 この領域では管理シェルの考え方をさらにオープンにし、他社サービスを組み込むことでお客さまセントリックなフルサービス化を図っていくという戦略と、コマツのLANDLOGのように場(プラットフォーム)として提供することで、パブリックデータや異業種のデータを取り込み、エコシステムのサービスとしてお客さまに提供していくという戦略が有効だろうと言われています。

強い信念を持って東芝自身を変革し、パートナー・お客さまの変革を支える

 ここまでインダストリアル領域におけるデジタル化のセカンドステージに進むための3つのポイントを紹介しました。しかし、大事なのは、絶対そうなるという「強い信念を持つこと」です。

 IoT化のファーストステージは終わり、セカンドステージに入ろうとしています。そのセカンドステージに向け、東芝自身もCPSテクノロジー企業を目指し、デジタルエボリューション(DE)、デジタルトランスフォーメーション(DX)で自社の変革に取り組んでいます。その中で培った経験とノウハウを生かしてアーキテクチャーやソリューションを開発し、パートナー、お客さまのDXを支えていきます。

執筆:中村 仁美
撮影:鎌田 健志
  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年3月現在のものです。

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