東芝デジタルソリューションズ株式会社 本文へジャンプ

ヘルプ

綿密な調査をもとにグローバル標準経理システムを短期間で導入

海外製造4拠点の経理システムを統一、グローバルガバナンスの強化と連結業績管理の効率化を実現。
グローバルな連結業績管理がスムーズに行われ、4拠点(米・英・仏・タイ)のグループ経営におけるビジネススピードをさらに迅速化。

導入前
海外生産関連会社(拠点)ごとに、異なる経理システムを利用していた。経理システムで保持しているデータの細かさも拠点ごとに異なり、本社が各社を横並びで見ることができなかった。

↓

導入後
EBSをベースに本社の要件(財務・管理の両会計を統合する「財管一致」)を満たすグローバルな共通経理システムの構築を行った。これにより、以前よりも共通、なおかつ多様なデータを扱えるようになり、これらのデータを活用したリアルタイムな経営分析が可能となる。また、EBSの標準機能を有効に活用することでアドオン開発を絞り込み、スピード導入を実現した。

インタビュー全文

ソリューション事例概要インタビュー全文を読む
印刷して読む(別ウィンドウで開きます)

導入の背景

将来に備えた効率的な経理システム導入を目指してプロジェクト始動
●●●の写真経理本部計画部
シニアスペシャリスト
藤井和美 様(左)
IT/S本部 NSシステムセンター
CUBICグループ シニアスペシャリスト
渡辺祐子 様(右)
IT/S本部 NSシステムセンター
CUBICグループ
渡邉朋樹 様(中央右)
IT/S本部 NSシステムセンター
CUBICグループ
安東 瞳 様(中央左)

リコーはデジタル複合機、プリンター、プロダクションプリンター、ファクシミリ、印刷機などの画像ソリューションおよび、様々な分野で製品およびソリューションを展開している。ネットワーク機器、関連ソフト、半導体なども取り扱い、デジタルカメラでもヒット商品を続々と発表している。また、最近では新規事業として、プロジェクターやユニファイド コミュニケーション システム市場にも参入し、新製品を発表している。

多様な製品、サービスをグローバルで展開しているリコーにとって、海外拠点も含めた経理システムはビジネスにおいて非常に重要な位置を占めている。グループ経営のための経理情報基盤の確立、グループでの経理業務の標準化・効率化・決算の早期化による意思決定支援とIR情報(投資家向け広報)の充実を目指し、2002年からグループ全体の経理業務改革への取組みをプロジェクトとして開始した。その中で、グループ各社の経理システムの共通化に向けた実現方法の検討を行った。

「共通経理システムを実現するための検討の結果、グローバルでの情報の一元管理のしやすさ、外部システムとの連携の柔軟性などの観点から、国内、海外ともにOracle E-Business Suite(以下EBS)を導入することになったわけです」と語るのは、経理本部計画部 シニアスペシャリストの藤井和美氏だ。

リコーでは、新システムをまず国内へ導入し、そこで構築されたシステムをテンプレート化して、海外生産拠点へ展開するという計画を立てた(リコーは米、英、仏、タイ、中国に生産拠点を持っている)。

最初に行われた国内でのEBS導入の状況をIT/S本部 NSシステムセンターCUBICグループ シニアスペシャリストの渡辺祐子氏は次のように語る。

「いざEBSを導入するとなると国内販売関連会社などから、様々なアドオン開発の要望が寄せられ、その対応に予想以上に時間がかかりました。日本では、毎月決められた締日があり、1ヶ月分の取引に関して請求や支払いを行うことが一般的ですが、米国では納品した取引の単位にそれらを行うことが一般的です。日本では支払いの方法も欧米に比べて多く、いくつものパターンをカバーしなければなりません。日本の商習慣で必要な経理業務に対応する機能がEBSには標準装備されていなかったため、そうした業務に対応するアドオン開発が必要だったのです」

コストと時間がかかるアドオン開発は極力少なくしたい。しかし国内へのEBS導入では多数のアドオン開発を行うこととなり、2004年に国内各社で利用する共通経理システムが完成した。

概要に戻る

導入の経緯

国内のシステムを海外展開する当初の計画を変更
IT/S本部 NSシステムセンター CUBICグループ シニアスペシャリスト 渡辺祐子 氏の写真IT/S本部 NSシステムセンター CUBICグループ シニアスペシャリスト 渡辺祐子 氏

当初の計画では、国内で展開を実施した経理システムをベースに海外拠点へ導入しようとしていた同社だが、その計画の変更を余儀なくされることになった。国内で構築されたシステムは、日本の商習慣が、アドオンで多く盛り込まれている。従って、国内用の機能を海外拠点用に導入することは、非効率になることが判明したのだ。

「そこで、海外拠点に関しては現地の調査をしたうえで、EBS標準機能をベースに、必要な機能に絞り込んだ経理システムを作ることになりました」(藤井氏)

米国の業務をモデルに標準業務フローを作成し、共通で利用できるEBSのテンプレートを構築。導入は米、タイ、英、仏の順で行うこととした。各拠点では自社のシステムの情報を、新システムの共通インターフェースに合わせたフォーマットで作成。新システムへのデータ自動連携を実現した。今回の新システムは、債務管理、債権管理、固定資産、一般会計のモジュールが組み込まれているEBSの本体部分と、共通のインターフェースや銀行連携ファイル作成、経理情報提供などのモジュールが連携されるよう配置されている。さらに、新システムを1つの共通システムとしてみれば、「生産管理」「各統合マスタ」「連結業績管理」の仕組みと合わせて、生産関連会社の共通システムのパッケージとして扱うことができるように配慮されている。各拠点より出される様々な変更、機能追加要求に対し、共通システムの展開の狙いを崩すことのないよう、その内容を精査、整理しながらアドオン開発を絞り込み、低コスト・短期間の導入を目指すことになった。

「アドオン開発を許可する基準は、標準化できるもの、つまりその追加機能が各拠点すべてに利用できるものに限定しました。ただし、各国の法的要件により必要なもの、固有商習慣のために避けられないもの、最後に、その機能がないと業務が回らないものも対象としました。共通テンプレートの原型は、米国の仕組みと定め、他の拠点にリコーの経理部門、IT部門が調査に入りました」(藤井氏)

実際にこの調査が開始されたのは、2008年のことだった。この際、リコーのスタッフとともに各拠点のヒアリング、要望の整理、最終的なアドオン開発の内容の吟味を行ったのが、イー・ビー・ソリューション株式会社(以下EBSS社)である。EBSS社は、東芝ソリューションのグループ会社の中で、ERP導入のエキスパート集団として、グローバル展開をする日本企業様に対する実績も豊富だ。東芝、東芝ソリューション、アクセンチュア、日本オラクルと連携し、実績に基づいた独自の導入スキームを確立している。また、これまでにもリコーの海外拠点での販売システムを手掛けており、リコーグループのグローバルシステムをよく知る企業として今回のソリューションパートナーとして選ばれた。

実際に各拠点での経理担当者とコミュニケーションを取ってみると、やはり様々な要望が出てきたという。

「現地から入る多くの要望に対して、『なぜそれが必要なのか』ということを一つひとつ突き詰め、要求に対する精査、整理を進めていきました。もちろん『なぜ』と聞くだけではなく、その答えに対して『では、アドオン開発ではなくこういう解決方法はどうか』という提案を積極的に行っていきました」(渡辺氏)

こうした調査を経て、開発作業が2008年5月に開始され、2009年に米、タイで、そして2010年に英、仏で新経理システムが稼働することになった。

システム概念図 概要に戻る

導入のポイント

様々な工夫を凝らしアドオンに代わる方策を提案
経理本部 計画部 シニアスペシャリスト 藤井和美 氏の写真経理本部 計画部 シニアスペシャリスト 藤井和美 氏

今回のプロジェクトが成功したのは、何と言っても現地に対するヒアリングとディスカッションが効率的に進んだからである。一連のコミュニケーションにはEBSS社の経験が大きく影響したという。

「現地の方々からの要望に『その追加機能はなぜ必要か』を一つひとつヒアリングする際は、非常にエネルギーが必要です。そのうえで、EBSの標準機能をうまく利用してアドオン開発に代わる方策を提案するため、EBSS社も含めて、私たちは様々な工夫を凝らしました」(藤井氏)

例えば現地よりアドオン開発の要望があったが、新規開発はせずEBSの標準機能を利用して、債務管理を実現した例がある。この例では当初の現地からの要望は、登録した買掛金情報について、全て自動で保留を行い、関連部門の承認後に保留を解除して、次のステップ(経理承認処理)に進むプロセスにしたいというものだった。これを実現するため、買掛金情報の入力時に、ユーザーに手動で保留をかけてもらうという手段を取ることにした。その際、部門を選択し、どの部門の承認待ちかがわかるように対応した。この手動の保留機能および保留タイプを選択する機能は、EBSでは標準機能として用意されている。

また管理帳票に関して各拠点の個別の情報分析に各種帳票・データが必要なので追加してほしいという要望があった。標準フローに沿ったグループ共通の経理業務に必要な帳票は、標準帳票を提供していた。そこで不足するものは、EBS標準の帳票作成機能で対応した。さらに拠点ごとの情報分析も積極的に行うことができるよう、新システム内部の情報を抽出・送信するインターフェースを用意し、拠点の保有するデータウェアハウスに連携する仕組みを構築した。この仕組みにより、拠点ごとに自社データウェアハウスから必要なデータを抽出し、業務分析が進められるようになった。

その他にも、「旧システムより入力項目が多くなった」などの意見がユーザーから寄せられたこともあったという。渡辺氏によると、「各拠点のユーザーが新システムに慣れるまではやはりそれなりの時間がかかりました。それに対してはユーザーの習熟だけを待つのではなく、デフォルトで表示できる項目はできるだけ表示させる、入力必須の項目は画面の左側に項目位置を変更して右画面へのスクロール回数を減らす、など、非常に細かいことですが、EBSの標準機能を駆使して入力作業の効率化を進めました」という。

このようにアドオン開発の要望は精査、整理され、各拠点に納得してもらいながら導入を進めていったのだ。

概要に戻る

将来展望

財管一致の概念を導入した新経理システム
豊富な切り口のデータで、より経営に貢献

今回の新システムは、旧経理システムのリニューアルにとどまらず、財務会計と管理会計の両方の情報を閲覧できるシステムとなった。以前は、経理システムで算出した財務会計の数字とシステム外で算出した管理会計の数字とは整合が取れていないことが多かった。しかし、新システムでは細分化された項目のデータを入力し、地域・製品・販売チャネルなどの情報を付加することで、財務データをセグメント集計することができる。つまり、同一データで財務会計、管理会計双方の数字が把握できるようになったわけだ。また、各拠点の生産管理システムとの連携により、生産管理の標準化・効率化、連結業績管理のスピード向上が期待できることも大きなポイントだ。

「これまで以上にビジネスセグメントごとのリアルタイムに近い情報を把握できるようになったことは、連結決算数字の早期の把握とともに大きな成果だと考えています。国内と海外の業績をシームレスにつかめることで、グループ全体のガバナンスが強化されたことはいうまでもありません。今後はこれに加えて、グローバルで展開するわれわれのビジネススピードがさらに迅速になることへの貢献を次のステップとして目指していきたいですね」(藤井氏)

また、現在は中国の拠点に対する新システム導入を検討している。これについて藤井氏は次のように語る。

新経理システム(CUBIC)を活用する、米国Ricoh Electronics, Inc. のスタッフの写真新経理システム(CUBIC)を活用する、米国Ricoh Electronics, Inc. のスタッフ

「中国国内にも、当社の拠点が複数あります。中国生産拠点は海外生産拠点として大きな比重を占めており、もっと効率的で迅速な導入方法はないか検討中です」

いずれにしても、今回のリコーの取り組みはグローバル展開におけるガバナンス強化という意味で多くの企業の手本となるものではないだろうか。藤井氏によれば、今後海外の拠点での新システムの活用状況を積極的にフォローしていく方針だという。


概要に戻る
ソリューション事例概要インタビュー全文を読む

お客様の企業情報

会社名:
株式会社リコー
設立:
1936年2月6日
代表者:
代表取締役 社長執行役員 近藤 史朗
従業員数:
109,014名(2011年3月31日現在,連結)
資本金:
1,353億円(2012年3月31日現在)
本社所在地:
東京都中央区銀座8-13-1 リコービル
URL:
http://www.ricoh.co.jp/別ウィンドウで開きます

この記事内容は2011年4月に取材した内容を元に構成しています。記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。

資料請求・お問い合わせ お気軽にご相談ください。 導入事例やソリューションに関するご質問・ご相談・資料請求はこちらから
このページのトップへ
Copyright