加速する、サービスビジネスへの変革。東芝が拓く「共創イノベーション」最前線

みんなの「うれしい」をデザインするコンサルティング/大道 茂夫

共創による新規事業の創出には、サービスの絵を描き、実現までの道を提言して未来へと導くコンサルタントの存在が重要となります。
東芝のインダストリアルICTソリューション社には、経験価値に軸足を置いたサービスビジネスを、実効性あるビジネスとしてデザインするプロフェッショナルのコンサルタントチームがあります。この組織では、これまでのビジネスコンサルティングの手法に、UX※1デザインやサービスサイエンスの手法を融合。IoT※2の先進技術はもちろん、お客さまが保有するノウハウや実績から価値創造の芽を見いだし、画期的でありながら継続性あるビジネスとして実現する取り組みを進めています。

  • ※1 UX:User Experience(顧客の経験価値)
  • ※2 IoT:Internet of Things(モノのインターネット)

お客さまと東芝グループの事業拡大を担うコンサルタントチーム

 企業活動の要は共創によるイノベーションと、これによる新規事業の創出へとシフトしはじめています。次の未来の創造に向けて、経験価値(UX)を戦略的にマネジメントする組織の具現化と活動の推進は、東芝グループ全体の課題です。

 東芝の東芝デジタルソリューションズ株式会社では、お客さまや東芝グループの新たな事業を生み出すべく、IoTを活用した新規事業の創出を専門とするコンサルタントチームを結成しました。

 「新規事業」という抽象的な概念に対して、戦略の策定から具体的な事業計画の立案まで一連の活動を領域横断的なスキルとアプローチで支援するコンサルタントは、非常に重要な役割を担っています。私たちは、新規事業の創出を目指し、事業領域の枠を超えて、無限の可能性を引き出す牽引役としての重要な任務を託されています。その業務範囲は、啓発活動と教育にはじまり、市場の分析や課題の定義、KGI※3・CSF※4・KPI※5の策定、コンセプトメーキング、ユーザビリティー分析の提供、さらには体制、コスト、アクションプランなどを含む事業計画の策定まで非常に広範囲に及びます。顧客、技術、知的財産、外部リソースなど資産の棚卸しにより、埋もれた宝を発掘し、有効性を判断するのも欠かせない作業です。

  • ※3 KGI:Key Goal Indicator(重要目標達成指標)
  • ※4 CSF:Critical Success Factor(重要成功要因)
  • ※5 KPI:Key Performance Indicator(重要業績評価指標)

コンサルテーション手法①

ステークスホルダー全員の「うれしい」を描きだす
四つの視点の思考プロセス

 私たちは、ビジネスコンサルティングとUXデザイン、さらにサービスサイエンスを融合させた独自のコンサルテーション手法を採用。ビジネスのアイデアを経験価値の視点から適切なサービスとして描き出し、ユーザーが使いやすい、使いたいと感じる、よりよいサービスモデルを創り上げていきます。

図1 事業創出に必要な4つの視点

 事業創出までの基本プロセスは、一般のコンサルティングファームも活用する「市場全体像分析」→「企画構想」→「実行計画策定」の3ステップで進めます。既存事業を持つ事業体における、新規事業の開発は難易度が高く、従来の枠を超えた発想を求める一方で、セオリーに即した意思決定や行動原則を重視することが必要になります。各ステップでは、市場機会の有望性と差異化を見極めるために、「顧客企業は誰で、その課題は何か?」「どのような価値を提供するのか?」「収入モデルは?」「必要なケイパビリティーは?」といった10項目の問いを設置。見いだしたクリティカルな課題からアプローチし、次のステージに進むかどうかを判断します。

 ここで重要になるのが、モデルをどう組み立てるかです。経験価値の視点からどんなに優れた体験を考えついても、それが事業として成り立たなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。「初期の0円PC」などの例でも分かるように、顧客にとっての「うれしい」とビジネスにとっての「うれしい」は、必ずしも両立しません。そこで私たちは、「マクロ視点」「ミクロ視点」に「顧客視点」「科学的視点」を加えた四つの複合的な視点からコンサルティングを行います(図1)。

 ビジネスコンサルティングでは通常、テクノロジーやマーケットトレンド、政治や経済の動きなど外部環境を洗い出すマクロ視点と、顧客動向や競争状況、対象市場を緻密に掘り下げるミクロ視点の両面から問題を定義し、解決策を探っていきます。これに対して私たちは、ここにUXデザインによる顧客視点のアプローチや、データサイエンスやサービスサイエンスなどの科学的視点を対で加えて、複合的に思考していきます。技術による実現の可能性はもちろん、事業としての収益性、継続性などをバランスよく客観的に判断。サービスの提供者や対象者といったステークスホルダー全てのニーズを汲み取った満足度の高いサービスをデザインしていきます。

コンサルテーション手法②

お客さまのノウハウや実績をビジネスにつなげる
カスタマージャーニーマップ活用法

図2 カスタマージャーニーマップ(サンプル)

 ビジネステーマを考慮しながら着地点を探るために、カスタマージャーニーマップを使った独自のアプローチも行っています(図2)。

 カスタマージャーニーマップは、サービスシーンのストーリー全体を可視化するツールで、ユーザー視点の行動をマップ化したものです。目的を達成するまでのシナリオに基づいて、ユーザーの心理や行動の流れを時系列に見える化し、新たな気づきを誘発します。

 時系列に並んだユーザーの心理や行動から見える大小さまざまな課題に対して、これを解決できるソリューションを抽出。一つひとつをひも付けて、実現性や収益性を評価していきます。この方法論は多様な経験価値とビジネスとの接点を見つけ出し、事業としての実現性や継続性を図りながらサービスの全体像を編成する上で大いに役立っています。

 こうしたコンサルテーション手法は、東芝グループ内ではもちろん、お客さまとの共創の場でも既に活用されています。

 静岡県浜松市の「浜松まちなかにぎわい協議会」では、地元企業の共創により市内の活性化を図る取り組みを推進されています。その一環として、同協議会が2016年6月から7月にかけて全3回で開催した「フューチャーセッション」に、東芝は、株式会社リコー様と共に協賛させていただきました。

 私たちは、当日行われたワークショップの企画とファシリテーションを担当。市内で働くさまざまな業種業態の人による多種多様なアイデアの創出を支援しました。今後はカスタマージャーニーマップなどを使ったコンサルテーション手法を駆使して、フューチャーセッションで生まれた新事業の種から価値創造の芽を見いだし、東芝とリコー様、そして地元企業の皆さまとの共創により、実現していく予定です。

 私たちはこれからもさまざまな活動を通じて、共創の現場での実績を積み重ねていきます。そして卓越した人材を育成し、事業創出のコア人材として内外で認知をいただき、お客さまや東芝グループの新規事業を切り拓いていきます。私たちの活動に、今後もどうぞご期待ください。

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