お客さまインタビュー

サプライチェーン共有基盤を構築し、次世代に調達ノウハウを蓄積
災害発生時などのリスクに備えた調達部門のBCP環境を整備

カンパニー:森永乳業株式会社 × T-SQUARE®/CT FC Edition

 牛乳や乳製品などの製造、販売を行っている森永乳業株式会社では、主原料となる生乳こそ100%日本国内の酪農家が生産した生乳を調達しているが、生乳以外の原料や包材等も多岐にわたっており、それら数多くの原材料の調達をグローバルに行っている。そんな同社の調達先となるサプライヤ情報を統合的に管理し、災害時の一次対応を迅速に行うBCP対策を実現するため、調達部門の業務基盤に採用されたのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)の戦略調達ソリューション「Meister SRM™」だ。

調達業務が担当者ごとに属人化されていたため、サプライヤ情報の一元管理を行うことが難しく、BCP対策に不可欠なサプライチェーン情報も担当者ごとに管理していた。調達部の業務負担が増えるなかで、働き方改革にもつながる、次世代に引き継げる調達環境の整備を検討していた。

戦略調達ソリューション「Meister SRM」により、サプライヤ情報およびサプライチェーン情報の一元管理を実現し、BCP対策を強化。電子見積による価格情報の蓄積及び同機能を活用して、オフィスにいなくても購入決裁が可能になるなど、調達部の働き方改革にも寄与。情報の一元管理により、次世代にノウハウを継承できる調達業務基盤も整備した。

導入の背景

安定的な商品供給に向けた調達改革を推進

 「かがやく“笑顔”のために」をコーポレートスローガンに掲げ、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品などの製造、販売を行っている森永乳業株式会社。2017年に創業100周年を迎えた老舗の乳業メーカーとして、「食のおいしさ・楽しさ」や「健康・栄養」といった同社ならではの価値を多くの顧客に届けている。2019年4月より持続的成長を実現するための成長戦略として新たな中期経営計画がスタートしている。

大室 諭氏

生産本部 調達部
乳原料調達グループ
アシスタントマネージャー

大室 諭氏

 同社において、酪農部が行う国内の生乳以外の各種原材料を調達しているのが、生産本部 調達部だ。主に原材料の選定から購買、需給調整業務などを行っている調達部では、商品のパッケージに利用される紙や容器などの包材をはじめ、添加物や卵やお茶など乳以外の食品原料、オーストラリアやニュージーランドなど酪農が盛んな国のチーズやバターなどの乳原料をグローバルに調達、その数は6000品種を超えている。「日頃の事業活動はもちろんのこと、災害時などでも事業継続ができるよう、私たち調達部としても原材料におけるBCP対応を積極的に推進してきました。特に粉ミルクや高齢者向けの流動食など、供給できなくなると社会的な影響が大きい商品も扱っていますので、安定的な商品供給に向けた調達環境の整備は、私たちの重要なミッションだと捉えています」と同部 乳原料調達グループ アシスタントマネージャー 大室 諭氏は調達部の果たす役割について力説する。

導入の経緯

属人化された業務からの脱却、リスクに強い基盤づくりを目指す

小林 裕士氏

生産本部 調達部
乳原料調達グループ リーダー

小林 裕士氏

 調達部では、「商品製造に必要な各種原材料の調達はもちろん、法令順守や持続可能な社会を目指すサステナビリティへの対応など、業務の幅が従来よりも拡大しています。そのため、新たな業務が多くなり、担当者にかかる負担が以前より増大しつつありました」と同部 乳原料調達グループ リーダー小林 裕士氏は時流の変化も指摘する。また、「これまでは紙やExcelを用いてサプライヤ情報をそれぞれの担当者が管理していたため、人事異動の際には、個別に引継ぎ資料を作成、口伝で引継がざるを得ませんでした。過去の経緯など蓄積されたノウハウを十分に生かしきれない場面も多く、効率もあまりよくなかったのです」と同部 一般原材料調達グループ アシスタントリーダー 井口 智史氏は当時を振り返る。サプライヤの基本情報も更新頻度も担当者によって異なっており、改善が必要な状況だったのである。

 そのような中、新たな調達基盤の整備を目指すプロジェクトがスタートすることになった。「事業継続を念頭にリスクに強い環境づくりはもちろん、次世代にノウハウが残せる調達基盤を作ること、出張による外出はもちろん、在宅勤務を積極推進している当部門だからこそオフィス外からでも柔軟に業務が遂行できる働き方改革に向けた環境を整備していくこと、そして中長期的な視点で戦略的な調達活動ができるような環境づくり。これらの実現を目指してプロジェクトを進めていくことになったのです」と大室氏はその意義を強調する。

導入のポイント

豊富な実績とノウハウが詰まったパッケージを高く評価

 新たな調達業務基盤を整備するなかで念頭に置いたのが、パッケージ製品を活用することだった。「以前は全て自社独自のシステムを構築していましたが、アップデートが遅くなることで時代に取り残されてしまう懸念もありました。そこで、ノウハウが詰まったパッケージを検討することになったのです」と小林氏。調達システムを調査する過程で出会ったのが、東芝が提供する戦略調達ソリューション「Meister SRM」だった。「機能面では、サプライヤ情報が管理でき、BCP対策に欠かせないサプライチェーン情報がしっかり管理できることが大きな柱でした。その目的に合致していたのがMeister SRMだったのです」と大室氏。

 Meister SRMを評価したのは、食品業界に対する適用率の高さだ。「他社製品のデモも見ましたが、BCP対策が進んでいる機械産業や自動車産業での使い方が中心でした。食品は機械産業と違い、原材料が混ざることで状態が変化します。私たちのように食品を扱う調達に適さない印象だったのです」と語るのは同部 一般原材料調達グループ アシスタントマネージャー中山 大輔氏だ。もちろんカスタマイズで作り込めば可能だが、できる限り標準機能を活用したかったという。東芝のMeister SRMであれば柔軟性があり、標準的な機能で自社の運用に近しい実装が可能だと考えたのだ。

井口 智史氏

生産本部 調達部
一般原材料調達グループ
アシスタントリーダー

井口 智史氏

 また、東芝が自社内でも運用していることや、導入実績が豊富なことも大きな安心材料の1つだった。「Meister SRMをご利用中の企業様を紹介してもらい、その調達部門のご担当者の方から直接、導入前後でどう変わったのか、使用感はどうかといった声を具体的に聴けたことが、大きく背中を押してくれました。既にご利用されている企業の方々からも高く評価されていたので、私たちが目指している目的に適した活用ができると考えたのです」と大室氏。さらに、同社に必要な機能だけを部分導入できるため、段階的に環境を整備できる点も評価ポイントの1つに挙げている。

 実際に製品を見た井口氏が魅力的だと感じたのは、BCPのマッピング機能により、可視化が容易になる点だった。「どのサプライヤがどこに事務所を持っているのかマップ上で容易に可視化できる機能に注目しました。マップ上で表現できるMeister SRMであれば、有事の際の確認作業も一目でわかります」と評価する。小林氏は「サプライヤが情報を入力する際も、Excelを用いてデータ投入できる点は便利ですし、こちらも編集がしやすい。この扱いやすさがとても良いと感じました」と語る。また、電子見積機能を活用することにより、「出張の多い調達部のメンバーがオフィス外からシステムやデータにアクセスしやすくなり、働き方改革にも大きく役立つと思いました」と井口氏。

 結果として、東芝が提供する戦略調達ソリューション「Meister SRM」が、調達部の業務基盤として採用されることになった。

導入の効果

調達業務基盤の整備により、働き方改革や調達部メンバーの意識変革を実現

 現在はクラウド上でMeister SRMが稼働しており、約400社におよぶサプライヤの情報をすべて一元的に管理できる基盤となっている。サプライヤ管理をはじめ、取引先調査/BCP管理、および電子見積という3つの機能を実装済みだ。ベンダ決定後3か月という短期間のうちに検証環境をスタートさせ、現在は50社ほどのサプライヤ情報を登録。電子見積や取引先調査などの機能も活用し始めている。「災害発生に備えてできるだけ早く稼働させたいと考えておりました。標準パッケージでほぼ適用でき、クラウド環境で利用できるMeister SRMだからこそ、短期間での導入が可能でした」と大室氏。現在は主要メンバー4名が中心となって活用しているが、今後は調達部の他のメンバーにも教育を行い、部全体で利用していく計画となっている。

中山 大輔氏

生産本部 調達部
一般原材料調達グループ
アシスタントマネージャー

中山 大輔氏

 サプライチェーンの可視化によって万一災害が発生した場合でも一次対応が迅速になり、電子見積機能の活用によってオフィス外からでも承認が実施できるようになるなど、働き方改革にも大きく貢献しているという。「災害時には半日以内に情報を報告できる初動対応を目標に設定しています。東日本大震災の時は応援メンバーも含めて20人ほどが手分けしてサプライヤに現状をメールや電話で繰り返しヒアリングし、その結果をまた手作業で一覧化していたため、上層部への状況報告に1週間近くかかっていました。Meister SRMの導入により、今後はPCのEnterキー一つで彼らに対するファーストアクションができますし、実際にサプライヤからの回答状況も簡単に一覧で表示でき、迅速な対応が可能になるので助かります」と大室氏。

 「取引先調査において、ボタン一つで全てのサプライヤに情報更新や状況報告を依頼できます。1件ずつメールを送っていた頃から比べると、劇的な業務改善につながっています」と井口氏は評価する。また新たに調達業務の基盤を整備したことで、調達部内の意識変革にもつながっているという。「これまではアナログ的な手法で調達の現場業務が何とか滞りなく進んでいましたが、基盤ができたことで、業務改善や業務の品質向上など意識の変革につながった面も、大きな効果の1つだと実感しています」と中山氏。

将来の展望

基幹システム連携と他部門への横展開に期待

 今後は、サプライヤ登録数を拡大させながら、電子見積機能も積極的に活用して行く考えだ。「電子見積機能の場合、部門長に申請を行い承認が下りた段階で処理が終わりますが、その後は社内の基幹システムに単価を入力する作業が個別に発生しています。Meister SRMと基幹システムとを連携させることで業務の効率化につながるだけでなく、人手を介さずに、システム連携を行うため、内部統制上のメリットも出てきます」と中山氏はシステム連携に期待を寄せている。また受発注の仕組みと連携させることで、さらなる自動化も図ってきたい考えだ。

 電子見積機能を使えば、過去の見積情報が蓄積され、重要なKPIとなる調達コスト適正化の基礎情報としても活用できるようになる。また、生産本部内には物流部も存在しており、「物流部は調達部と近い組織ですから、Meister SRMを横展開できれば、双方にメリットがありますし、全社でのサプライチェーンの強化が出来ると思います」と大室氏は語る。

 食品業界におけるBCP対策と次世代に引き継げる調達を目指した今回のプロジェクト。今後も安定した商品供給を継続して実施できるよう、東芝は戦略的な調達への支援を行っていく。

(左から)小林 裕士氏、井口 智史氏、大室 諭氏、中山 大輔氏

SOLTION FOCUS

戦略調達ソリューション「Meister SRM™」

サプライヤとの接点プロセス全体にわたるコミュニケーション基盤による戦略調達の実現。多くの製造業はグローバル市場で勝ち抜くために、戦略的な調達イノベーションに取り組んでいます。日々収集される部材コストや取引先などのサプライヤ情報などを一元管理して有効に活用し、調達コスト、遵法リスク、生産活動中断リスクを低減するサプライヤコミュニケーション基盤。サプライチェーンを構成する生産拠点の位置情報を得て迅速に影響を把握できます。

この記事の内容は2020年2月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、社名、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
森永乳業株式会社
設立
1949年4月13日
代表者
代表取締役社長 宮原 道夫
本社所在地
東京都港区芝五丁目33番1号
事業概要
牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売
URL
https://www.morinagamilk.co.jp/ 別ウィンドウで開きます

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