東芝デジタルソリューションズ株式会社

社員インタビュー

東芝テック(SXクラウド)クラウドサービス ショッピングセンター向けの総合情報システムを、
東芝の結集力で支える

本プロジェクトの関係者

東芝グループで、30年近くにわたりショッピングセンター向け総合情報システムを提供、高いシェアを誇る東芝テック。同社はこの総合情報システムをクラウド化した「SXクラウド」を立ち上げるべく、高いセキュリティ基準を満たす、東芝のインダストリアルICTソリューション社のクラウド基盤サービスを採用した。

「SXクラウド」は2014年6月にサービスを開始、中小規模のショッピングセンターを中心に利用されている。サービス開始からこれまで順調に稼働しており、最近では大手にも採用され、2016年にはこれを利用するショッピングセンターは50社を超える予定だ。今回、「SXクラウド」立ち上げに関わった東芝テックと東芝、そして東芝ソリューション、3社のプロジェクトメンバーに話を聞いた。

ショッピングセンター向け
総合情報システムでクラウドを採用

山口 満

東芝テック株式会社
リテール・ソリューション事業本部
商品・マーケティング統括部
決済・SCシステムソリューション商品部
SCシステムソリューション担当

部長

山口 満

 東芝テックは、1985年からショッピングセンター向け総合情報システムを提供、2014年3月末までの累計実績で全国のショッピングセンター施設数で約50%、POSターミナル台数で約66%のシェアを誇る。そして、現在提供中の総合情報システムはテナント管理、顧客管理、売上管理をはじめ決済処理・ポイント処理のリアルタイム処理などショッピングセンターの業務全体をサポートする基幹系システムである。これまではサーバー設置型販売(オンプレミス型)や、自社ASPセンター型で運用するシステムとして全国各地のショッピングセンターに導入していた。しかし、サービス利用型システムへのニーズの高まりから、東芝テックは、5年ほど前からクラウドサービスへの移行を検討開始した。

 クラウドサービスの利用は、サーバー機器やアプリケーションの初期導入費用が少なくて済み、システムの維持管理にかかわる負担も発生しない。

 「クラウド基盤サービスを利用すると、サーバーを導入する必要がないため、初期費用を抑えられ、運用も自社で行わなくて済みます。そして、ビジネスを新しく始める時には、スモールスタートで、スピーディーなチャレンジが可能となり、お客さまには大きなメリットとなるのです」と東芝テック SCシステムソリューション担当 部長 山口 満は語る。


厳しい東芝のセキュリティ基準を満たした
「クラウド基盤サービス」を選定

吉田 純

株式会社東芝
インダストリアルICTソリューション社
流通・金融ソリューション事業部
流通・運輸ソリューション営業部
流通・運輸ソリューション営業第一担当

参事

吉田 純

 東芝グループでは、グループ企業各社がインターネットに公開するサーバーを設置する際のセキュリティ基準として、東芝セキュリティガイドラインを定めている。その基準は非常に厳しく、その基準をグループ外のクラウドサービスで満たそうとすると、難しいものがある。そのため、東芝テックでは、最初から東芝セキュリティガイドラインに準拠してサービスを提供している、東芝のインダストリアルICTソリューション社(当時は東芝ソリューション)の「クラウド基盤サービス」を活用することにした。

 「東芝テックとはかねてからリテールソリューション事業において連携しており、同社がクラウドへの切り替えの検討を始めた頃から情報交換を行ってきました。その中で、東芝テックがASP型で提供していた流通業向けポータルサイト「流通ナビ」、新たにサービス提供を開始したクラウド型デジタルサイネージシステム「@Nextsign(アット・ネクスサイン)」に、私たちの『クラウド基盤サービス』を活用いただいていました。その実績を基に、ショッピングセンター総合情報システム「SXクラウド」へのクラウド基盤の採用が決まったのです」と東芝インダストリアルICTソリューション社の営業担当 参事 吉田 純は語る。

図1 システムの概要

システムの概要

サービスをメニュー化、
基盤とアプリケーションをセットで提供

 東芝グループは、社会インフラ、製造業、医療、家電、情報機器、そして東芝テックのような流通小売業と幅広い領域にわたって事業を展開している。そのため、各社の事業戦略も全く異なっており、クラウド基盤サービスに対するニーズも違う。今回の場合、東芝テックは自社のお客さまであるショッピングセンターへのクラウドサービスに東芝のクラウド基盤を採用したが、例えば他の事業部門では全く異なる業種の客先であったり、全く異なるサービスでの活用であったり、社内でこの基盤を活用したりすることも考えられる。

對馬 智一

東芝テック株式会社
リテール・ソリューション事業本部
商品・マーケティング統括部
決済・SCシステムソリューション商品部
SCシステムソリューション担当

主任

對馬 智一

 また、お客さまのネットワークを例に挙げると、製造業向けではサーバーリソースは大きく、ユーザー企業数が少なかったり、流通や小売業では大きなサーバーリソースを確保して多数の顧客向けに小さな規模のリソースが必要なモデルを作ったりする必要がある。そこで、東芝テックでは「SXクラウド」について、サーバーリソースだけでなく、アプリケーションもセットにして提供することを基本にした。そして、顧客ニーズへの対応とアプリケーション開発コストの圧縮を両立させるために、サービス提供パターンを八つほどに集約することにしたのである。

 「ネットワークは10社あれば10社それぞれ異なるものです。提供する機能や価格などの面でも最初はハードルが高かったのですが、東芝ソリューションは決して無理とはいわず、正面から受け止め、解決策を模索してくれました。「SXクラウド」を無事にスタートさせることができた時には嬉しかったですね」と東芝テック SCシステムソリューション担当 専門主幹 染谷 英則は強調する。

 「お客さまのデータ量によってディスクの容量が変わってきますし、クレジットカード取り扱いの有無によって、決済要件が変わってきます。お客さまの規模や業務内容に合わせて、パターン化してほしいと依頼しました。難しいチャレンジだったと思いますが、東芝ソリューションは私たちと一緒になって考え、工夫してくれたので壁を越えることができました。東芝グループならではの連携だったと思います」と東芝テック SCシステムソリューション担当 主任 對馬 智一は語る。


3社の協業成功のカギと、
その先にある「一つ上のステージ」

 「SXクラウド」を作り込んでいく中、東芝テックと東芝、東芝ソリューションの3社には、さまざまな事項に対する、捉え方や常識の違いがあった。

 例えば、クラウド基盤を提供する東芝ソリューションにとっては、SI事業を行うためのクラウド基盤なので、アプリケーションに合わせてクラウド基盤をカスタマイズしていくことは当たり前。

岩崎 孝夫

東芝ソリューション株式会社
プラットフォームセンター
クラウドサービス運用設計部
クラウド設計第一担当

参事

岩崎 孝夫

 「今までのクラウド基盤サービスはWindows OSをインストールした仮想サーバーのリソースを提供することが基本でしたので、お客さまにはサービス契約段階で決めた、細かな仕様に合わせてシステムを設定、利用してもらっていました。それに対して、「SXクラウド」はITに詳しい社員がいないようなショッピングセンターのことも考慮に入れて、四つほどの項目を提示、容易に利用することができるようにするという事でした。最初はこの大きな違いに驚きましたが、お互いを理解し、その違いを少しずつなくしていくことが大切だと感じました」と東芝ソリューションクラウド設計担当 参事 岩崎 孝夫が語る。

 「例えばこのネットワークが特殊と捉えた東芝ソリューションに対し、東芝テックではそれが当たり前のことと捉えていました。このようなギャップがさまざまな部分にありましたので、それを埋めていく努力を続けました。そして、技術的に困難な部分は他の方法を採用しつつリードタイムを短くしたり、運用コストの引き下げに知恵を出し合ったりして、両社で懸命に考えました。その結果、ついにショッピングセンター向けに最適化されたクラウド基盤ができあがりました。今後、このサービスの利用が拡大して大きなシェアを獲得、流通業向けの標準サービスとして存在感を発揮するようになるでしょう。お互いを理解し、一緒に何かを乗り越えたからこそ生まれる信頼と新たなステージ。一つ上のビジネスにつながるのが嬉しいですね」と東芝インダストリアルICTソリューション社クラウドソリューション商品技術部 部長 水原 徹は話す。


両社の経験を生かした
共同の取り組み

 東芝テックが、多数の顧客を八つのサービスパターンに当てはめたことで、東芝ソリューションには新たな経験と知見が蓄積されることとなった。

水原 徹

株式会社東芝
インダストリアルICTソリューション社
商品統括部
クラウドソリューション商品技術部

部長

水原 徹

 東芝ソリューションはスクラッチ開発を得意としていたので、顧客の希望に沿って開発していくというやり方で仕事を進めていたが、今回のように東芝テックがプロファイリングを行い、いくつかのパターンをテンプレート化して提供するという形で共同での取り組みができると、コストメリットがあり、非常に付加価値の高いサービスを提供できる。「スクラッチ開発だと、コストが掛かる一方で、2パターン程度のサービスメニューとなるので、お客さまにご満足いただくことがかないません。今回のように、8パターン準備すれば、今までのシステムより安く、長期間にわたって利用できますし、お客さまも納得してくださいます」と水原は語る。

 また、東芝テックが強く要望したのが、ショッピングセンターの業務に支障をきたさないようにするための可能性の高さとサービスコストとのバランスだった。東芝ソリューションのデータセンターからは、東芝テックの顧客であるショッピングセンターが見えない。しかし東芝テックの大切なお客さまを意識し、高いサービスレベルの維持に伴うコスト増を吸収する工夫を行い、東芝テックの要求に応えた。東芝ソリューションの、日ごろからの取り組みと、お客さまを見る目線が、今回の信頼関係を築くベースとなった。両社の経験を生かした、お互いの取り組みが「SXクラウド」を実現させたのである。


他の分野でも、
クラウドサービス拡大を目指す

 2014年6月にサービスを開始した「SXクラウド」に続き、同年8月には、ショッピングセンター向け顧客分析システム「Direct Promotion」もスタート。これは東芝クラウド基盤で稼働するもので、テナントの売り上げアップを強力にサポート、今後4年間で50施設への導入を見込んでいる。

染谷 英則

東芝テック株式会社
リテール・ソリューション事業本部
商品・マーケティング統括部
決済・SCシステムソリューション商品部
SCシステムソリューション担当

専門主幹

染谷 英則

 また「SXクラウド」では、クレジットカード決済も扱っており取扱量も増えている。現在ASP型で提供しているクレジット決済サービスを2016年にはクラウド基盤に移行させ、さらに活用を進めていく予定である。このような背景の中、東芝テックでは、カード会員データの保護などのために策定されたクレジットカード業界のセキュリティ基準であるPCIデータセキュリティスタンダード(PCI DSS)への準拠を計画している。

 「PCI DSSのセキュリティレベルは非常に高いものですが、「SXクラウド」も含めて、大手ショッピングセンターのクレジット決済にも対応できるようにし、お客さまの利便性、セキュリティを高めていきたいと思います」と染谷は展望を語る。

 「東芝テックのお客さまであるショッピングセンターからは品質、コストともに非常にレベルの高いご要望をいただきます。その要件をクリアし、「SXクラウド」はサービス開始からこれまで順調に稼働しています。今後も、東芝テックのアプリケーションの展開方法を見習い、開発の指標にしたいですね。そして、クラウド基盤サービスと使いやすいアプリケーションをセットにし、さまざまなお客さまをはじめ、東芝グループ内の各事業部門にも、広げていきたいと考えています」と水原は今後の抱負を語る。

 「私たちのショッピングセンター総合情報システムには、30年近い歴史があります。自社内で運用するシステムから、ASP、そしてクラウドという流れの中で、お客さまの要求レベルは年々高まっています。時流を先読みし、お客さまの要望に対応するのはシステムソリューションベンダーとして当然の責任だと考えます。今後も東芝グループの結集力で、より良いシステムを提供、社会を支えていきたいです」と山口は語った。


*本記事は弊社情報誌「T-SOUL 15号」に掲載されており、2015年6月3日に取材した内容を基に構成しています。
記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。