エンゲージメントの高め方


2020.6.12

HR-i コンサルティング
代表 シニア・コンサルタント 伊藤 晃

エンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)とは社員の会社に対する「愛着」「思い入れ」「きずな」「つながり」「かかわり」等を表す言葉です。近年エンゲージメントの向上に取り組む企業が増えています。エンゲージメントの向上は社員のやる気につながりますし、その結果、業務の生産性の向上も期待できます。また、エンゲージメントが高ければ有能な人材の流出防止にもなり、企業イメージの向上につながることで採用においてもメリットがあります。エンゲージメントは経営の重要な指標となっています。

エンゲージメントの把握

エンゲージメントの現状を把握するためにサーベイを行っている企業が少なくありません。例えば「会社への愛着、きずなは強いと思いますか」というストレートな設問のほか、「今と同じ水準の報酬や仕事があれば他社に転職したいと思いますか?」というひねった設問もあります。

あくまでも経営に寄与する目的でのサーベイですから、エンゲージメントの程度とその要因をつかみ、対策の検討に役立てることが大切です。会社への愛着やつながりがモティベーションの向上、仕事のやりがい、生産性の向上・・・そして業績向上につながっているかの分析が重要となります。

エンゲージメントを高めるコミュニケーション

エンゲージメントは上司・部下のコミュニケーションが影響します。例えば部下へのコミュニケーションプロセスにおけるポイントを以下に紹介します。

(1)魅力メッセージ
会社や職場で経験を積んでいることの価値や意味(魅力)を伝えるメッセージです。自社の魅力は意外に気づきにくいものです。魅力を発見できないと、いわゆる「隣の芝は青く見える」と思ってしまい、エンゲージメントが低下、離職の思いが高まります。管理職と部下が共有している会社の魅力を時々は確認するコミュニケーションが大事です。加えて、部下が気づいていない魅力の発見につながるメッセージを管理職が語ることも刺激として大切です。

(2)期待メッセージ
今後の成長・活躍の可能性・方向性を期待として伝えるメッセージです。人がある集団に属し続けるには、自分の先々に対して期待を感じられることが大切です。通り一片の言い方ではなく「真剣な期待」をかけることが大切です。また、誰にも同じ期待ではなく、本人の資質・強みを活かした期待、本人がメリットを感じられる期待が望ましいと言えます。ただし、過度な期待を向けられるとプレッチャーを感じる面があることには注意が必要です。

(3)支援メッセージ
本人の成長や活躍のために支援していくことをはっきり伝えることもエンゲージメントを高めます。この場合大切なことは、制限なしの支援であること=すなわち遠慮せず、いつでも相談していいよ、という絶対的安心感と管理職自らの自発的支援=気づいたことは助言もする、という放置しないという姿勢です。困ったら相談に来い、という自主性を促すことは大事ですが、主体性がある部下ほど相談せず、課題を抱えがちです。部下を良く見て必要な働きかけを行う必要があります。

エンゲージメントの向上をきっかけとした企業革新

エンゲージメントを高め、多様な価値観・能力の人材の組み合わせで創造的な発想が生まれ、成果につながる企業・職場づくりを目指しましょう。そのためにはトップ自ら熱い思いで理念・ビジョン・方針を語り、社員の声にも耳を傾けることが大切です。戦略、方針、組織、制度すべてが社員へのメッセージとなりエンゲージメントに影響します。エンゲージメントとは、個人と企業それぞれが対等な立場で、主体性を持って関わり、企業革新を実現するきっかけとして重要と言えるでしょう。

  • 記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年6月時点のものです。

伊藤 晃(いとう あきら)
HR-iコンサルティング 代表 シニア・コンサルタント。

株式会社日本能率協会コンサルティングにて、業務改革および知恵と活力を高める組織・人材革新コンサルティングを推進。支援業界は自動車、運輸、繊維、製紙、製薬、精密機械、銀行、商社、建設、不動産、生保、IT、電力、ガス、新聞、大学、流通、ホテル、テーマパーク、経済連等 多岐にわたる。
2019年9月定年退職。10月より現職。現在は、人と経営の「意」をサポートする、をモットーに人材マネジメント全般を支援している。主要テーマは、人事・人材開発制度構築、経営幹部育成・登用制度構築、全階層一貫教育の企画・推進、意のある次世代リーダー育成、人材マネジメント全般に関する相談対応および自社流の構想立案・推進支援。


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