[第32回]人材育成に携わる誇りと悩み


2020.2.20

先日、あるお客様から企業内大学について話を聞きたいとのご要望をいただき、企業内大学の創設に関わったことから小生がお会いすることになった。このようなご要望は久しぶりだったので、わくわくして臨んだ。お話を伺うと、現在、人材開発に直接従事されているわけではなく、これからの自身のキャリアを考えたときに、人材開発に取り組みたい。是非、自社内にも企業内大学を立ち上げたいとの熱き志に敬意を表し、今回の話を始めたい。

人材育成に携わる誇り

冒頭、私からの質問は「何故、東芝なのですか?」 企業内大学を探したときに、最初にヒットしたのが、東芝だったそうだ。企業内大学の事例を学ぶ、その第1号が東芝だったというわけだ。関心を持っていただいたことに感謝した。
二つめの質問は「自分が人材開発に取り組みたいと思っても、自分の思い通りの仕事に就けるのですか?」 上司に希望しています。必ず、実現します。今の時代、人材育成に力を入れなければ立ち行かない。そのためにも、企業内大学こそ必要だと考えています。と、力強く答えてくれた。
本拙稿にも書いたが、人材育成の仕事に就く条件の一つは、そのミッションに熱いことではないだろうかとお伝えした。すぐに成果が見えない仕事へ飛び込むには、目先のことに右往左往しないで、初志の種火を燃やし続けることの大切さを語りながら、心の中で“頑張れ!”とエールを贈った。小生も企業内大学創設時に、有識者にお願いしてご意見を求めたことを思い出した。

人材育成は悩みの連続

企業内大学創設後も悩みの連続であった。ここで、人材育成に関わる悩みごとをふりかえってみたい。悩みごとは、古くて新しい。最近、お客様企業の人材開発担当者から伺った悩み事を思いつくままに上げてみる。

  • 現状を回すのが精一杯で新しいことに目を向ける時間と心の余裕がない。(波風立てない風潮、仕事へのわくわく感欠如)
  • しかしながら、属人的になっている現状を踏まえて、このままで良いとは思っていない。(潜在化している意識、担当者の思いと経営層の思いの乖離)
  • 新しい仕組みを導入しても果たして今の戦力で回しきれるのだろうか? (リストラの名のもとに、人材開発部門がスリム化)
  • 何をもって人材育成を進めていくのか? 教育予算の消化率、半期の総受講時間、受講人数なのか?(指標があいまいなため、的に当たらない)
  • 必要な人に、必要な教育をとの施策は現場任せになっている。 (会社としての意思を示していない、経営戦略との連動意識の欠如)
  • eラーニングで学習効果を高めることはできるのか?(便利さ追求と学習効果)

小生がずっと持ち続けてきた悩みごともあり、お客様(人材開発担当者)の思いに大いに共感できる。お客様企業の社員が生き生きと成長し、お客様企業が発展していくために、人材開発部門の存在価値があるはず。潜在化している思いに目を向け、思いを共有することも時には必要ではないだろうか。 

eラーニングの学習効果は?

悩みの一つである、eラーニングとその学習効果について考えてみたい。読者の皆さんは「ラーニングピラミッド」をご存知だろうか? アメリカ国立訓練研究所の研究によって導き出されたもので、どんな学習方法であれば、脳に定着しやすいかをピラミッド型にして分類したものだ。

定着率の低い方から、

 ①講義を受けるは5%
 ②資料や書籍を読むことは10%
 ③視聴覚(動画を見る)が20%
 ④実演によるデモンストレーションが30%
 ⑤グループディスカッションが50%
 ⑥実践による経験・体験・練習が75%
 ⑦誰かに教える(講師役になる)ことが90%

これまで小生が、人材開発経験から実感してきたことともほぼ符合する。自ら教える側に立ってみることで、分かっていたつもりが、“つもり”だったことに気づくことがある。どうすれば、相手に通じるのかを考え始めることから学びが深まる経験は、皆さんも実感されているのではないだろうか。

eラーニングは、上記①~③が主であるが、それ以上に結びつく仕掛けがないかなと思いを巡らせてみたい。悩み事は尽きない。 

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年2月時点のものです。


関連サイト