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DiGiTAL T-SOUL
Vol.
33

ICT活用による働き方改革の社内実践 RPAの導入と展開で業務改革を推進 ICT活用による働き方改革の社内実践 RPAの導入と展開で業務改革を推進

東芝デジタルソリューションズ株式会社 業務変革・情報システム統括部 業務プロセス改革推進担当 石川 富士枝
東芝デジタルソリューションズ株式会社 業務変革・情報システム統括部 業務プロセス改革推進担当 石川 富士枝

「働き方改革でRPA*化を進めているが、何から手をつけてよいかわからない」、「RPA化を始めたが、うまく進んでいない」。働き方改革を推進する手段としてRPAの活用に期待が高まる一方で、思うように会社全体への展開が進まない、成果につながらないなどと悩む企業は少なくありません。東芝デジタルソリューションズでは、さまざまなテーマで働き方改革プロジェクトに取り組んでいます。「ICTの活用による業務効率化」をテーマに、2018年から本格的に推進している社内業務へのRPAの活用も、そのひとつです。社内の推進体制を構築し、10個の業務でRPAの運用を開始。月80%の業務時間を削減した例など、目に見える効果を確認できた業務もあります。現在は各部門でRPAを開発する体制を構築するとともに、作成した各種ロボットを会社全体で共有して活用するための仕組みづくりを進めています。ここでは、東芝デジタルソリューションズにおけるRPA活用の歩みについてご紹介します。

*RPA:
Robotic Process Automation

RPA化のパイロット業務で導入効果を確認

労働人口が減少していく日本において、いまや働き方改革は必須の経営課題です。東芝デジタルソリューションズでは全社レベルで働き方改革プロジェクトを推進しています。その中の「ICTの活用による業務効率化」というテーマでは、2018年4月に「RPA推進ワーキンググループ」を立ち上げ、社内のさまざまな業務でRPAの活用に取り組んでいます。このワーキンググループの核を担っているのが、私たち業務変革・情報システム統括部です。

一般的に、RPAを活用する目的は大きく2つあるといわれています。ひとつは、煩雑な業務をRPA化して生産性を高め、人の作業時間(工数)や時間外労働を短縮すること。もうひとつは、入力ミスや認識・管理ミスなどのヒューマンエラーをなくすことです。

さらにRPAは、夜間や休日でも処理ができるため、時間の縛りがなく、作業頻度を高めることもできます。またRPA化を行うためには業務の手順の洗い出しが必要なため、業務の整理と標準化につながります。そのほか、決まった時間に行う定型業務などをRPA化することで、担当者を時間的拘束や作業ストレスから解放するという効果も期待できます。

RPA化に適した業務には、次のような特徴があります。

  • 一定のルールに従い、繰り返し行う業務
  • 構造化されたデータを扱う業務
  • 基幹系システムや情報系システム、クラウドサービスなど、複数のアプリケーションにまたがる業務
  • 業務プロセスが整理され、標準化できている業務
  • ヒューマンエラーが起こりやすい業務

RPAを会社全体に推進していくためには、導入することで本当に効果が得られるのか、導入にあたりどのような課題があるのかを把握することが大切です。そこでフェーズ0において、基幹系のシステムと単体のアプリケーションを使って作業する3つの業務を、パイロット版としてRPA化しました。

その中の売り上げ処理業務のRPA化では、ひと月あたり平均70~80%の工数が削減でき、入力ミスも回避できました。この結果を受けて、私たちはRPAの活用によって高い効果が得られることを確信しました。

推進体制を構築、効果が期待できる業務を選定

2018年の後半から始めたフェーズ1では、まず社内におけるRPAの推進体制の構築を行いました。現在、RPA推進ワーキンググループは、予算の管理や方針の策定、報告などの業務を行う「マネージメントチーム」、会社全体から届くRPAに関連した問い合わせやトラブルへの対応を行う「サポートチーム」、RPAの運用基盤の維持・管理と、開発スキルの教育を行う「運用チーム」、そして各部門から依頼を受けたロボットの開発やそのための部門ヒアリングや要件定義などを行う「開発チーム」という4つのチームで構成。各部門から選出した推進委員は部門ニーズの吸い上げやとりまとめを担当し、ロボットの運用や開発はパートナーとも連携して、効率的にRPAを推進できる体制にしました。もちろん、RPAは、基幹系システムや情報系システムといったほかの社内システムとも連携して処理を行うことから、情報システム部門との連携も欠かせません。

このような推進体制の構築と並行し、各部門にRPA化を希望する業務を募集したところ、200件を超える業務が集まりました。そこで、まずはそれらがRPA化にふさわしい業務なのかどうかをマネージメントチームが中心となって検討。部門にヒアリングを行い、独自の判定フローを用いることで、RPA化の有効性と現在かかっている工数を基に、RPA化する優先度が高い業務からS、A、B、Cの4段階にランク分けを行いました(図1)。

図1 RPA化希望業務のランク分け

応募された200件のうち、ランクSに振り分けられた業務は13%、その下のランクAが15%で、ランクBは9%、そして約半数の46%がランクCでした。残りの17%は、RPA化以外の対応方法なども含めて再検討するなど、その時点ではRPA化対象外の業務と判断しました。

この結果からも分かるように、RPAは「ロボット=魔法の杖」ではなく、有効性をきちんと検証して上手に活用することが重要です。

また、2019年4月からは、まずランクSと判定した中から10個の業務のRPA化に着手。そのうちのひとつが、「見積り回答自動入力RPA」です。所定のフォルダに格納されたPDF形式のファイルをOCR*で読み取ってテキスト化し、指定のファイル形式で保存する作業と、保存したファイルの情報を調達システムの見積り回答欄に入力する作業をRPA化しました。

*OCR:
Optical Character Recognition

これは毎月400件近く発生していた頻度の高い作業で、この作業のRPA化によって、ひと月あたり約80%の工数を削減できました(図2)。

図2 見積り回答自動入力RPAの活用事例

この見積り回答自動入力RPAをはじめとする10個の業務は、すでに運用段階に入っており、各業務の担当者にとって、今やなくてはならないツールになっています。

フェーズ2は部門主導、フェーズ3は部門横断のRPAを展開

フェーズ1で取り組んだランクSやランクAのように、ひと月に発生する工数が10時間を超える大きな業務は、私たちRPA推進ワーキンググループがRPA化を進めますが、ランクBに振り分けた、工数が小さな業務のRPA化は、各部門で行います。つまり部門主導でRPAを開発し、展開する。これがRPA推進のフェーズ2における取り組みです。

そこでまず、社員の「ロボット=魔法の杖」というイメージを払拭するため、私たちはRPAに関連する情報を共有する社内向けのポータルサイトを整備しました。フェーズ2以降では各部門でRPAを開発できるように教育も充実させ、サンプルロボットの提供もしています。

また、ランクSのためのRPAを開発するツールにはサーバー内でロボットが動作するサーバー型を使用していますが、各部門での開発に使用するツールは、個々のパソコン内でロボットが動作するクライアント型です。各部門は、RPAツールを導入した専用のパソコンにタイムシェアリングでリモートログインして、RPAの開発を進めます。

部門ごとにツールの導入が不要となったことや、自分たちで優先順位をつけてRPA化できることなどから、特に人数が少ない支社店を中心に、RPAの導入が進んでいます。

さらに、2020年4月からは、複数の人が同時にログインして利用できるコンカレントライセンスのツールを導入。各部門が快適にRPAの開発を行えるように、環境の整備にも力を入れています。

そして現在、2020年度から開始したフェーズ3では、これまでに各部門が作成したロボットを、部門横断で活用する仕組みづくりに取り組んでいます。立ち上げたのは、ロボットコレクションサイト。このサイトに各部門が作成したロボットの情報を登録し、会社全体で活用。 RPA推進ワーキンググループで開発した既存のロボットの共有化も検討しています。今後も共通で利用できる業務ロボットの開発や、会社全体でロボットを利用することへの呼びかけをしていきます。

また、RPA化する対象となる業務のすくい上げを柔軟に行うため、業務登録サイトを立ち上げて、各業務の担当者が自らRPA化を希望する業務を登録できる仕組みづくりも行っています。各部門の推進委員が取りまとめる部門全体としてのニーズとともに、業務に精通したそれぞれの業務の担当者による登録で、対象業務のきめ細かい情報収集とRPA化を進めていくための仕組みです。

RPAは業務担当者が自らプロセスを変える行動を起こせるツール

ここまでの取り組みを振り返ってみたところ、いくつかの学びがありました。

第一に、RPA化は業務の棚卸しと効率化の第一歩となること。実際に、これまで慣例的に行ってきた業務の中から、目的が不明確な業務を洗い出すことができました。

第二に、RPAツールの利用方法や利用手続き、ロボットの共有化などに関するFAQ*を整備することの重要性。各部門でRPAを開発して展開するため、RPA推進ワーキンググループには数多くの問い合わせが届きます。その対応を省力化するために、またRPAの開発を促進するため、RPAに関する知見を整理するためにも、FAQは不可欠です。

*FAQ:
Frequently Asked Questions

そして第三は、たとえ工数が少なくてもRPA化が有効な場合があることです。支社店などでは少ない人数で定型業務を回しています。個々の作業時間は短くても、それらをRPA化することで、作業全体の効率化に大きく貢献していました。

私たちの今後の課題は、部門を横断したRPAの活用に加え、さらなる業務の効率化を目指してAIとの組み合わせも検討していくことです。そのとき重要なことは、どこまでロボットに任せればよいのかなど、運用ルールを決めること。これから運用を重ね、知見を蓄積していく中で、見極めていきます。

RPA化は、業務を効率化するためのひとつの手段ですが、これまでの業務効率化との違いは、業務の担当者が自らプロセスを変える行動を起こせることです。当社が働き方改革で目指す、社員一人ひとりが自主性と自律性を持って働ける環境づくりにも貢献できると考えています。

とはいえ、当社のRPAの本格的な導入と活用は、これからです。現在は、RPAを活用したいというムーブメントを社内全体に起こした、いわばマーケティングフェーズが完了した段階です。

今後、RPAツール自体の機能も発展していきます。それを活用して、一層の業務効率・業務品質向上という結果に結びつけ、当社の働き方改革を進めます。

さらに、その成果を当社のソリューション・サービスとしてお客さまに提供します。ぜひ、ご期待ください。

この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年5月現在の情報です。

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