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Vol.32 「TOSHIBA SPINEX」による変革と価値創造 インダストリアルIoTサービスの展開を加速

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#04 TOSHIBA SPINEX for Manufacturing ものづくりのDXを目指すIoTサービス「Meister Cloud シリーズ」 東芝デジタルソリューションズ株式会社 大石 佳之

第4次産業革命の時代に入り、IoTやAIといったデジタル技術を用いてイノベーションを進める動きがさまざまな産業分野で広がっています。中でも日本のお家芸である製造業における動きは速く、すでにIoTを活用した製造プロセスの可視化や予防保全への取り組みが始まっています。しかし、これらの多くは大量に製品をつくって販売するという既存のビジネスの延長線上であり、部分的な最適化に止まっています。工程や拠点、さらには企業を越えたデータ連携や、ものづくりのバリューチェーンにおけるトレーサビリティーには対応しきれていません。このような現状を打開して、バリューチェーンの全体最適化を図るため、東芝デジタルソリューションズは2019年12月に「TOSHIBA SPINEX for Manufacturing」として、製造業向けIoTサービス「Meister Cloud シリーズ」をリリース。東芝のものづくりの知恵と最新の技術を体系化し、導入しやすいクラウドサービスで提供することで、ものづくりのデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を支援します。ここでは、Meister Cloud シリーズのポイントを、導入事例とともにご紹介します。

実績豊富な「ものづくりIoTソリューション」が、クラウドサービスに

東芝デジタルソリューションズでは、サイバーフィジカルシステム(CPS)を基盤とした「ものづくりのデジタルトランスフォーメーション(DX)」を提唱。ものづくり(製造する局面)からO&M*(使用する局面)までをスルーし、製品の一貫したライフサイクル管理のもと、「つながる工場」や「止まらない工場」などの実現によるものづくりのバリューチェーン全体を最適化するソリューションを提供してきました。

*O&M:Operation & Maintenance

その中核となるのが、ものづくりIoTソリューション「Meister Factory シリーズ」です。製品の設計・開発から製造、物流、さらには販売・サービスにまでわたるさまざまなプロセスを相互に連携させ、それを製造する現場と使用する現場から集めたあらゆるデータを活用。これまで以上に高い生産性や品質を実現するとともに、使用価値を高めた新たな製品やサービスの創出を支援します。Meister Factory シリーズは、提供開始以来、既に多くの企業で活用されています。

このMeister Factory シリーズをクラウドサービス化したのが、今回ご紹介する製造業向けIoTサービス「Meister Cloud シリーズ」です。工場やプラントを支援する、ものづくりIoTクラウドサービス「Meister ManufactX」と、設備メーカーを支援する、設備メーカー向けアセットIoTクラウドサービス「Meister RemoteX」を用意し、ものづくりのDXを「ものづくり」と「O&M」の両面からサポート。デジタル化における導入コストを抑え、素早い利用開始が可能なクラウドサービスにより、CPSによる次世代ものづくりの基盤整備を実現します(図1)。

工場やプラントには生産性の向上を、設備メーカーには収益の安定化をもたらし、ものづくりのバリューチェーンを担うお客さまそれぞれが互いに利益を創出できることを目指しています。

図1 Meister Cloudシリーズの概念図

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東芝の統合データモデルで、ものづくり/O&Mをサポート

Meister Cloudシリーズは、東芝のIoTサービスの迅速な開発・運用をサポートする共通フレームワーク「東芝IoTリファレンスアーキテクチャー(Toshiba IoT Reference Architecture)(TIRA)」に準拠させ、開発しています。TIRAは、「Edge」「Platform」「Enterprise Service」という3つの層に、東芝がものづくり企業として長年にわたり蓄積してきたさまざまなノウハウや生産技術、さらには東芝デジタルソリューションズが培ってきたIoTやAIに関する高度な知見と各種コンポーネント技術を実装。リファレンスアーキテクチャーの世界標準に準拠した高度な信頼性と、データを容易に取り出せるオープンAPI*により、さまざまなプレイヤーが保有するアプリケーションやEnterprise Serviceの層に位置づけられているさまざまな業務システムと、オープンかつセキュアに連携できる利点を備えています。

*API:Application Programming Interface
※TIRAについては、#01,#02で詳しくご紹介しています。

大石 佳之

TIRAに準拠したIoTサービスは、東芝が信頼性・拡張性と品質を保証する「TOSHIBA SPINEX」のラインアップとして、すでに提供が始まっています。その中で、Meister Cloudシリーズは「TOSHIBA SPINEX for Manufacturing」として製造の分野でサービスを展開します。

Meister Cloudシリーズの最大の特長は、統合データモデルによるデジタルツインの提供です。製品を製造する現場や使用する現場といったフィジカル空間(実世界)で起きていることを、サイバー空間(仮想空間)上に再現するデジタルツインは、ものづくりのバリューチェーンの至るところで日々生成されるデータを存分に活用することで、その価値が発揮されます。

自ら工場を持ち、機器を供給し、設備の安定稼働を見守り続けてきた東芝のノウハウと豊富な運用管理の経験を生かした統合データモデルには、ものづくりとO&Mに関するさまざまな情報を関連付けて、時系列にデータを蓄積できます。そして、設備の稼働状況や環境条件といったIoTデータと、原材料や作業者、調達計画、顧客情報、保守履歴といった業務データを組み合わせて、さまざまな事象の分析や再現・予測といったデジタルツインによるシミュレーションを行うことが可能です。

さらに、バリューチェーンを横断するトレーサビリティーや、工場と設備メーカーとの間におけるシームレスなデータ共有も可能となり、お客さまはデータの関連付けや加工に膨大な工数をかけずに、製品のライフサイクル全体の見える化や、精度の高い分析とシミュレーションを行うことができます。タイムリーなデータ活用による製造現場の持続的な改善を通じて、ものづくりのバリューチェーン全体の最適化につなげます。

次に、Meister CloudシリーズのMeister ManufactXとMeister RemoteXのそれぞれの特長を、導入事例を交えてご紹介します。

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ものづくりのデジタル化を加速する「Meister ManufactX」

ものづくりIoTクラウドサービス「Meister ManufactX」は、設備の故障や品質の問題に関する突発的な対応や、工場内にあるさまざまな製品の監視や管理を行う人材の確保といった課題の解決を支援する、工場やプラントのオーナー様に向けたサービスです。

製品に関わる多種多様なデータを5W1Hの概念で自動的に結び付けて管理し、効果的なデータの活用につなげます。お客さまの目的に応じてさまざまなアプリケーションや分析ツールを組み合わせて活用することができます。

大きなメリットは、製造工程をスルーした製品のトレーサビリティーを低コストかつスピーディーに行うことができる点です。市場で不具合が発生した場合には、製造番号やロット番号をキーとして、その製品がいつどこでどのように作られたのかを確認。同様の現象が発生する製品など、影響する範囲を素早く特定することで、早期に対応することができます。また品質管理の基本である5M1E(人:Man・方法:Method・測定:Measurement・材料:Material・機械:Machine・環境:Environment)を軸にして、製造現場における状況の変化点を見える化。設備の停止や、製品の不良などが発生した際に、問題を解決する糸口を素早く見つけ出し、迅速な改善につなげます。

Meister ManufactXの導入にあたっては、スモールスタートに最適な「トライアルエディション」、単一の工程やラインを通した改善を支援する「スタンダードエディション」、そして工場全体の最適化まで対応する「アドバンスドエディション」という3つのサービスをご用意。お客さまの事業規模や状況に合わせて適用範囲を柔軟に拡張していくなど、DXを無理なく進展させていくことができます。

ここで、導入事例をご紹介します。

まず、サイロ化された製造システムが原因で、クレームを受けた際の原因究明に膨大な時間をかけられていた電子部品メーカーA社様は、Meister ManufactXを活用して統合データ基盤を構築されました。その結果、クレームに関わりのあるデータを短時間に一括して抽出することができ、また分析ツールとの連携により、原因の特定とその対策を素早く行えるようになりました(図2)。

図2 Meister ManufactXの活用事例

また、システムごとにデータ管理を行われていた電子部品メーカーB社様では、Meister ManufactXを活用して各種製造関連データの一元管理を実現。製造ラインのボトルネックとなっている工程を特定することが容易になり、以前から力を入れられていた改善活動を一層推進できるようになられたそうです。

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O&Mのデジタル化で価値創出を目指す「Meister RemoteX」

設備メーカー向けアセットIoTクラウドサービス「Meister RemoteX」は、保守コストの増加や、保守スタッフの高齢化と人材不足、不安定な受注量などに悩む、設備メーカーに提供するサービスです。

産業機器や社会インフラの遠隔監視や保守を長年行っている東芝グループが培ってきた知見をもとに、世界各地に点在する設備の稼働データを収集・蓄積。標準装備のダッシュボードにより、各種センサーや、設備、プロセスなどの視点でデータの見える化をするとともに、お客さまにとって使い慣れた分析ツールや目的に最適なBI*ツールと連携させることで、データ活用の可能性を広げます。

*BI:Business Intelligence

これにより、お客さまは保守員の最適な配置や、在庫の適正化が図れ、アフターサポート業務の効率を格段に上げることができます。部品や消耗品の交換やメンテナンスを、適切なタイミングで顧客(設備の利用者)へ提供するコンディションベースのO&Mサービス、故障予兆サービスを提供するなど、データの価値を最大限に生かした新しいビジネスの創出にもつながります。

産業用水処理に関する装置・薬品事業を手がけられている水処理機器メーカーC社様は、Meister RemoteXを活用してグローバルな遠隔監視基盤を構築。世界29カ国のどこからでも水質のトレンドや、水処理の状況を把握することができるようになり、最適なタイミングと量で薬品を注入するという、高品質なメンテナンスサービスを実現されました。またポータルサイトを介することで、顧客(施設管理者)に対して総合的な水質レポートを日報や月報で提供。データ共有による水処理の高品質化を、さまざまな側面からサポートされています(図3)。

図3 Meister RemoteXの活用事例

ものづくりのデジタルトランスフォーメーションを目指す「TOSHIBA SPINEX for Manufacturing」。今後も、さまざまな見える化のテンプレートや、分析エンジンなどの追加サービスを順次ラインアップしていきます。

工場やプラントのオーナー様、そして設備メーカーそれぞれに使いやすい形で提供していくことで、グローバルな規模で次世代のものづくり基盤を広げていきます。

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年2月現在のものです。

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