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Vol.28 情報資産の価値を高める デジタル変革を支えるソフトウェア生産技術

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#04 開発標準を策定し、技術者育成と現場実践を徹底 共創で価値の最大化を目指す、アジャイル開発プロセス 東芝デジタルソリューションズ株式会社 大森 麻理

システム開発の目標や要件、実装方法などを上流で十分に検討しても、システムの完成を迎えるころには要件自体が変わってしまっている。それほどの猛烈なスピードで時代が変化していく中、欲しいものを最初に明確にし、仕様に沿って段階的に構築を進めていく従来型のシステム開発では難しい案件が増えてきました。顧客ニーズやビジネス環境の移り変わりが激しい中、注目が高まっているのが「アジャイル開発」という開発手法です。優先順位が高い機能の開発から始め、改善と軌道修正を繰り返しながらシステムの完成度を高めていくこの開発プロセスは変化への即応性と機動性に優れ、段階的なITモダナイゼーションとの親和性も比較的高いという特長があります。ここでは、東芝デジタルソリューションズがこれまでに培ってきた経験とノウハウを体系化した開発標準「AgileDS」など、アジャイル開発を推進する各種取り組みについて、現場での実践事例を交えてご紹介します。

ウォーターフォール型開発の限界

企画→要件定義→設計→実装→テストといった工程を経て完成品を納品するウォーターフォール型の開発では、開発前に確定した仕様に基づき、計画的に開発を行います。大規模で高い品質が求められ、社会的な責任の大きい社会インフラなどのシステムにおいては、最適な開発手法です。

しかし、激しく変化するビジネスの環境や先進のデジタル技術に迅速に対応することが求められるシステムにおいては、開発中に完成品への要求や最適な技術が変化することも想定されます。また既存のシステムにおいても、このような環境や技術の変化に柔軟に適応させながらITモダナイゼーションを行い、デジタルトランスフォーメーションの実現を目指していくことが求められ始めています。「何がしたいのか」「何が欲しいのか」が開発中に変化し、それに追随して「どのように実現するのか」もカタチを変えていく。計画的に段階を踏んで進めることで完成度を高めるウォーターフォール型の開発では、こうした変化に即応することは難しくなります。

これに対し、変化に柔軟かつ迅速に対応するのが「アジャイル開発」です。要件が変化しうるという前提のもと、優先順位の高い機能から順に、2週間程度という短い期間で開発。小さく始めてスピーディーに部分的なシステムをつくり、そのシステムを動かすことで得られる気づきを反映しながら完成度を高めていきます。お客さまの「欲しいもの」や技術的な「実現方法」の変化に迅速に対応しながら、提供する価値の最大化を目指していきます。段階的なITモダナイゼーション*やマイクロサービスアーキテクチャー*との親和性も比較的高い開発手法です。

*段階的なITモダナイゼーションについては、#02で詳しくご紹介しています。
*マイクロサービスアーキテクチャーについては、#03で詳しくご紹介しています。

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アジャイル開発の経験を体系化

このアジャイル開発はシステムの開発手法として広く普及し、特にインターネットビジネスの領域では積極的に取り入れられています。一方で、基幹システムの領域においては、部分的な導入にとどまっています。大規模なシステムや重要な責務を担うシステムの開発は、開発前にしっかりした計画を立案してその計画を確実に実行していくウォーターフォール型の開発と相性がよいこと。また開発を受託する側においては、長年続いたウォーターフォール型の開発を前提とした分業体制と厳格な品質管理体制が確立されていることなどが、その理由として考えられます。

東芝デジタルソリューションズでは、デジタルトランスフォーメーションの時代を見据え、早くからアジャイル開発を現実的な選択肢として捉えてきました。社内システムの開発をはじめ、数多くの現場で積極的に実践を積み重ね、さまざまな領域のシステム開発に幅広く対応する豊富なノウハウを蓄積。同時に実践を通してアジャイル開発を行う技術者の育成にも力を入れています。こうして得た知識と経験を体系化したのが、アジャイル開発標準「AgileDS」です。

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アジャイル開発標準「AgileDS」の特長

AgileDSは、ウォーターフォール型の開発とアジャイル型の開発のメリットを融合させた、ハイブリッドな当社のアジャイル開発プロセスです。最大の特長は、工程の節目ごとのデザインレビューによる厳格な品質管理を盛り込んだ点です(図1)。

図1 アジャイル開発標準AgileDS

アジャイル開発では、開発期間を「スプリント」と呼ばれる短い期間に分けて段階的に開発を行います。AgileDSでは、スプリントでの開発が完了した後にシステムテストおよび導入テストを経て、システム全体としての品質を確保した上で実際にリリースに至ります。各工程でデザインレビューを徹底し、また各スプリントにおいてもテストを行うことで、品質を確保。臨機応変に改善や軌道修正を行いながら価値を最大化させるアジャイル開発の利点を存分に生かしながら、高い品質を意識しています。

AgileDSのもうひとつの特長は、「ソリューション創出型」と「要件定義型」という2つのプロセスを整備したことです。ソリューション創出型は、サービスや製品の企画・立案が終了し、要件を具体化するところからアジャイル開発を適用する、サービスの早期立ち上げや新たな製品の創出に適した開発プロセスです。一方、要件定義型は、ウォーターフォール型の開発と同じく要件定義までを行い、その後のものづくりからアジャイル開発を適用する、要件は明確だが優先順位や適用する技術に変更が予想される場合に適した開発プロセスです。

技術者は、案件に適した開発プロセスを適用し、要件の追加や変更に対応しながらプロジェクトを進め、品質を担保しつつスプリントを順次繰り返していきます。

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知識と経験を生かし、技術者育成と現場実践に注力

東芝デジタルソリューションズ株式会社 大森 麻理

当社のアジャイル開発による案件では、プロジェクトが立ち上がると1チーム当たり最大8名程度のメンバーでチームを編成し、全員が設計からプログラミング、テストまでを受け持ち、動く現物で確認しながら開発を進めていきます。メンバーに求められるのは、技術的なスキル以上に、アジャイル開発の性質を理解し、これを実践するという姿勢です。

ウォーターフォール型の開発では計画的かつ効率的な開発を重視するため、仕様を厳密に確定し、仕様変更をできるだけ最小限に抑えることが重要です。一方、アジャイル開発においては、より価値の高い成果物を生み出すために、お客さまの要求の変更に臨機応変に対応し、迅速かつ繰り返し開発しながら共に成果物を創り上げていく姿勢が重要になります。そのためには、お客さまとの連携を密にしてお互いの認識を合わせることや、着手時に想定した開発内容が変わりうることを前提とした契約で成果物への責任やリスクを共有することなども欠かせません。

当社では、案件の特性によりアジャイル開発の適性を見分けるガイドラインを整備しました。さらに、アジャイル開発の勘所を整理し、それらに対する十分な理解を促すための教育や実践的な指導を積極的に推進しています。

こうした普及・展開活動の一方で、アジャイル開発で実際にどのような効果が得られたのかについて、検証を重ねています。そのひとつとして、定量的なデータを活用した質の高い経営の実現に向けて、アジャイル開発により当社の社内システムを進化させた実践事例をご紹介します(図2)。

図2 既存の業務システムへのアジャイル開発適用事例

当社では社内の複数の開発支援システムに分散していた生産性や品質、コストに関する各種データを、ダッシュボードにて可視化し、分析を可能にすることを目指しました。しかし、どのような情報が質の高い経営につながるのか、そのためにはどのようにデータを分析するのかについて具体的には見いだせておらず、さらに新しく導入するツールが多いため技術面のリスクが大きいという懸念も抱えていました。そこで要件の変動や技術的な課題に柔軟に対応できるアジャイル開発を採用して新たな可視化システムを構築するプロジェクトをスタートさせました。

実際に動くモノができると、それが一部分であったとしてもプロダクトオーナー(利用者側)の新たな気づきにつながり、要件が徐々に明らかになっていきました。このようにプロダクトオーナーが積極的に現物を確認していくことで、プロダクトオーナーと開発チームの双方に安心感が生まれ、分析方法をはじめとするデータの効果的な活用方法が着想から具体化かつ洗練され、ツールの制約を加味した仕様変更を行いながらBI*ツールやETL*ツールを順次導入することにつながりました。その結果、プロダクトオーナーにとって満足度の高いシステムが実現。なお、実際に使い始めたことにより新たな要求が発生するため、投資コストのバランスを見極めながら最終的なゴールをどこに設定するのかが今後の課題になると考えています。

*BI:Business Intelligence,ETL:Extract/Transform/Load

やりたいこともやるべきことも変わりうることを前提とし、変化に即応しながら着実に成果を出す。これはウォーターフォール型の開発ではなかなか難しいことです。机上で全容を明らかにしても、完成するころには要件や最適な技術が変わってしまっていることがあるほど変化の激しい時代。東芝デジタルソリューションズは、現場で積み重ねた経験を力に、品質を重視したアジャイル開発のノウハウとこれを実践する組織と人材に一層の磨きをかけて、お客さまと共により効果的で最適な価値の創出を目指していきます。

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2019年2月現在のものです。

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