エネルギー分野におけるデジタルトランスフォーメーション最新事例|東芝デジタルソリューションズ
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Vol.26 お客さまと共に新たな事業創造を支える デジタル化の先に向けた共創とサービス化

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#04 再生可能エネルギーの拡大と電力安定化の両立を支える エネルギー分野におけるデジタルトランスフォーメーション最新事例 東芝デジタル&コンサルティング株式会社 エネルギーデジタルトランスフォーメーション推進部 部長 新貝 英己

東芝がグループ一丸となって展開しているデジタルトランスフォーメーション。その先駆けともいえるのが、エネルギー分野における取り組みです。低炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの利用拡大が求められている一方、気象により発電量が変動してしまい系統が不安定になることが世界的に危惧されています。そこで東芝エネルギーシステムズでは、電力システムや太陽光発電におけるノウハウ、各地の工場で多種多様なものづくりを行ってきた需要家としての知見、さらには先進のIoT*技術を結集し、2018年1月にエネルギーアグリゲーション統括部を新設。東芝デジタル&コンサルティングと共に、電力の不確実性を吸収する「調整力」を提供するサービスを開発しました。エネルギー事業者や需要家と共創し、電力の持続的な安定供給をコミュニティー全体に広げていく、エネルギー分野におけるデジタルトランスフォーメーションの実現を目指しています。

*IoT:internet of things(モノのインターネット)

世界的に必要性が高まっている電力の「調整力」

現在、電力市場では2つの変化が起きています。1つ目は発電側の変化です。世界的な気候変動の原因とされている地球温暖化の進行を食い止めるため、従来の火力発電から、CO2を排出しない再生可能エネルギーへのシフトが拡大しています。しかし、その代表ともいえる太陽光発電や風力発電は、晴天や雨天など気象条件により発電量が大きく変動します。これら再生可能エネルギーはクリーンではあるものの、電源としては非常に不安定であり、暮らしと社会を十分に支えきれるエネルギーとしては大きな課題があります。

2つ目は需要側の変化です。テクノロジーの発展や少子高齢化を背景とした人手不足などの影響により、あらゆる産業で自動化が進んでいます。また環境への配慮から電気自動車の普及が進むなど、需要家による電気の使い方が大きく変わろうとしています。

不安定な再生可能エネルギー、そして電力需要の変化への対応。この2つの課題は、電力市場において不確実性が高まることを意味しています。需要と供給にズレが生じてしまうと、最悪の場合、停電が発生する事態もあり得ます。

そこで必要となるのが、需給バランスの調整や周波数の制御により電力の不確実性を吸収する力です。電力の世界では「調整力」と呼ばれており、現在この調整力の必要性が、世界的に高まっています。

これに対して東芝は、調整力の創出を目的に、バーチャルパワープラント(VPP:仮想発電所)を構築する取り組みを早くから進めてきました(図1)。

図1 バーチャルパワープラント

VPPとは、電力を消費する地域の近くに分散して配置された太陽光発電や蓄電池といったさまざまな電力源をIoTで束ねて制御し、あたかも1つの発電所のように機能させるものです。VPPの構築には電力系統の制御技術が必要です。東芝は、需給制御技術を強みとしているほか、変動抑制技術や電力需要予測技術*により、多種多様な電力施設や需要家設備に対して効果的な制御や運用を行えるVPPの構築を目指しています。

*東京電力ホールディングス株式会社主催の「第1回電力需要予測コンテスト」 別ウィンドウで開きます において、応募された約100団体の中で、東芝は最高の予測精度を達成し、最優秀賞を受賞しました。

変化する電力市場の要請に応え、低炭素社会の実現と電力の安定した供給を両立するために、東芝がこのVPP技術を基盤に、エネルギー事業者との共創により2017年から展開しているのが、ネガワットアグリゲーター事業です。

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エネルギー分野にデジタルトランスフォーメーションを

新貝 英己

ネガワットとは、工場やプラント、ビル、家庭などにおいて需要家が本来消費するであろう電力量のうち、節電によって抑制された電力量のことで、これを発電したことと同等の価値があるとみなす考え方です。電力の小売全面自由化を経て、2017年よりこのネガワットを売買する「ネガワット取引」がスタート。ネガワットアグリゲーターは、電力需給の安定を保つために複数の需要家に対して節電の要請(デマンドレスポンス)をし、節電された総量で需給のバランスを図ります。要請に応えて節電してくれた需要家には、料金の割引など報酬を提供します。電力市場に必要十分な調整力を提供し、生活や企業活動の安心を支える画期的なサービスとして普及が期待されています。

事実、首都圏では2018年1月から2月にかけて、寒波襲来により電力需給が逼迫(ひっぱく)したため、東芝は契約を結んでいる複数の需要家に対してデマンドレスポンスを11回、そのうち5日間は連日で実施。電力需給の安定を図らなければならない事態は既に発生しています。

このネガワットアグリゲーター事業を展開するためには、その日の需要予測や各需要家が節電できる余力などに基づいて、どの需要家に、どのタイミングで、どのくらいの節電を要請すればよいのかを正確に割り出すことが重要です。東芝では、専用のオペレーションセンターを自社内に設立し、IoT基盤により、各需要家に設置した機器から1分単位で電力の利用状況を収集。電力の使用量や節電に関する多種多様な情報の管理、節電要請の配分計算およびその要請などを一元的に行うことで、精度の高いネガワットアグリゲーションの実現に取り組んでいます。

ポイントは必要な節電量に対して、多すぎたり少なすぎたりすることのない正確な節電量を達成する技術です。節電する方法やその量は、各需要家の業種や業態、制御するもの、設備などで異なり、曜日や時間帯、気象条件などによっても変化します。また、契約している節電量に達しない需要家がいる一方で、契約量以上に節電することが多い需要家がいるなど、その傾向はさまざまです。さらには節電を要請してから実際に節電されるまでの時間(即応性)、節電をどのくらいの時間継続できるのかも異なります。東芝ではオペレーションセンターに集まってくる情報を統計的に処理し、こうした需要家ごとの特性を詳細に管理。必要な節電量に合わせ、曜日や時間帯といったあらゆる状況に応じて最適な節電配分を算出するアルゴリズムを確立し、その精度を日々の運用を通じて継続的に高めています。需給のバランスをリアルタイムに把握しながら複数の需要家の節電量を最適に組み合わせるこのポートフォリオ管理技術を使い、必要な節電量を正確に達成する技術を常に高めています。

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電力市場の変化に柔軟に対応

さらに東芝では、より即応性の高い需給調整を目指し、蓄電池を活用した実証にも取り組んでいます。

節電を需要家に要請した場合、実際に節電が行われるまでにはある程度の時間を要しますが、蓄電池を活用すれば短時間で対応することが可能です。さらに蓄電池は、再生可能エネルギーで発電した電力の余剰分を効率的に吸収して発電量を平準化し、需給が逼迫したときの電力源になるなど、その用途はさまざまです。東芝はここでもIoTによるデータ収集と解析技術を活用し、複数の目的に対して効率的に充放電を行う蓄電池制御技術を開発。今後増加が見込まれる太陽光発電システムを設置した需要家に、電力の使用量と発電量を加味した蓄電池の最適な運転計画を立案し、補正運転を行うことで、蓄電池の最適な活用と精度の高い調整力の実現を目指しています(図2)。

図2 蓄電池の最適な活用と調整力の創出

しかし、調整力をサービス事業として展開するには大きな課題があります。電力市場では2021年以降の需給調整市場の創設や、発電と送配電を行う事業者を分ける発送電分離といった電力システム改革が進められています。この改革に伴い流動的となっている電力市場の制度設計に、いかに柔軟に対応していくかという点です。

絶対に止まることが許されないエネルギーの世界では、これまで、しっかりと要件定義をし、長い期間をかけて徹底してシステムやサービスを作りこんできました。しかしこれでは、市場の変化に追随できず、作りあげた時点あるいは直後から変更を加えなくてはならないという恐れが生じます。そこで東芝では、変化に柔軟に対応するため、システムやサービスをアジャイルに開発。オペレーションセンターに日々集まってくる生のデータを分析しながら改善活動を続け、その時々で最適なサービスを提供していく考えです。そして将来的にはAI*などを活用した自動化や自律化により、電力を供給する側と全ての需要家が安心して暮らし、ビジネスに注力できる、コミュニティー全体を包括したエネルギーサービスの提供を目指しています。

再生可能エネルギーの利用拡大と電力の安定供給の両立へ。エネルギー分野におけるデジタルトランスフォーメーションの実現に向けた挑戦はさらに加速していきます。

*AI:Artificial Intelligence(人工知能)

※この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2018年8月現在のものです。

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